(一)四人になった旅
◆ 四人になった旅
四人で歩く街道は、二人で歩いていた頃とは少し違った。
まず、足音が増えた。
それから、荷物の場所が変わった。
ロアンとミルカだけの時は、荷をどう分けても大きな違いはなかった。
ロアンが重いものを持ちすぎて、ミルカに止められる。
ミルカが薬や地図や細かい道具を管理する。
だいたいそれで済んでいた。
だが、今は違う。
エナがいる。
ガルドがいる。
エナは薬箱と薬草を持っている。
ガルドは剣と、少しの荷と、なぜか薬草を持っている。
ロアンはその荷を見て、首をかしげた。
「ガルドさん、荷物少ないですね」
ガルドは自分の背負い袋を見た。
「そうか?」
「旅に出るって言ってたから、もっと持つのかと」
「剣と外套と替えの服があれば、だいたい何とかなる」
ミルカが即座に言う。
「なりません」
ガルドは少し驚いた。
「そうなのか」
「なりません。食料、水袋、火口、針と糸、布、薬、予備の紐。あと雨具」
「外套がある」
「外套は万能ではありません」
ロアンは少し懐かしい気持ちになった。
「それ、俺も言われた」
ミルカが見る。
「今も言う」
「まだ?」
「まだ」
エナがガルドの荷を見て言った。
「でも、薬草は増えていますね」
ガルドは頷く。
「あると便利だからな」
ミルカは額に手を当てた。
「便利なものを全部持つと、荷物になるんです」
ロアンが笑う。
「それ、俺も言われた」
「ロアンは二回目」
「はい」
エナは少し楽しそうに、四人の荷を見比べていた。
神殿を出たばかりの頃は、足取りにも表情にも緊張があった。
道の先を見て、空を見て、後ろを振り返っていた。
けれど、今は少し落ち着いている。
戻る場所がある。
父のいる神殿がある。
だから外へ進める。
そう思えるようになっていた。
ロアンは歩きながら言う。
「四人になると、荷物の分け方が変わるな」
ミルカが答える。
「食料の減り方も変わる」
ガルドが言う。
「俺はそんなに食わないぞ」
ミルカはガルドを見る。
「昨日、宿で麦粥を三杯食べてました」
「三杯は普通だろ」
ロアンが言う。
「俺も普通だと思います」
ミルカはロアンを見る。
「比較対象が増えて悪化した」
エナが小さく手を上げる。
「私は二杯でした」
「エナは昨日、癒やしを使っていないのに二杯」
「歩くとお腹が空くので」
「分かる」
ロアンが頷く。
ミルカは深く息を吐いた。
「食料の減り方が変わる、という話です」
ガルドは真面目に言った。
「多めに買えばいい」
「銅貨が減ります」
「なら稼げばいい」
ミルカは少しだけ目を細める。
「その話は、近いうちにちゃんとします」
ロアンはその声の硬さに気づいた。
けれど、その時はまだ深く考えなかった。
四人で歩くことに、まだ慣れていなかったからだ。
ロアンは全体を見る。
ミルカは地図と空と荷を見る。
エナは道の不安な場所をなんとなく避ける。
ガルドは足場の悪い道を、まるで平地のように歩く。
まだ一団と呼べるほど、形が決まっているわけではない。
けれど、四人の役割は、すでに少しずつでき始めていた。
※第24話「自分の腕を試したい」は全七回です。
続きます。
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