(六)田舎であれなら
◆ 田舎であれなら
戦いの後、ライゼンはガルドに歩み寄った。
鎧には泥がつき、息はまだ少し荒い。
それでも背筋はまっすぐだった。
「名は」
ガルドは剣を下ろす。
「ガルド」
「どこの流派だ」
ガルドは道場の名を言った。
ライゼンは少し眉を上げる。
「聞いたことがない」
ガルドはうなずく。
「田舎なので」
ライゼンは短く笑った。
「田舎であれなら、王都は困るな」
ガルドは首をかしげる。
「困る?」
「君のような剣士を知らずにいる」
ガルドは黙った。
ロアンは、その横で黙って聞いていた。
ライゼンは続ける。
「私は軍の剣士だ。兵を守る剣を使う。君の剣は違う。単独で間合いを壊せる」
ガルドは言う。
「でも、あなたの方が兵を戻していました」
ライゼンはうなずいた。
「役割が違う。だが、あの大型を斬ったのは君だ」
ガルドは、初めて少し困ったような顔をした。
褒められている。
しかも、兵士たちから信頼されている剣士に。
それがどういうことなのか、すぐには飲み込めないようだった。
「隙があったので」
ライゼンは笑った。
「見えても入れない隙は多い」
「そうなんですか」
「そうだ」
ガルドは自分の手を見る。
まるで、その手が急に知らないものになったように。
ロアンは小さく言った。
「ガルドさん」
「何だ」
「たぶん、それ普通じゃないです」
ミルカがすぐに訂正する。
「たぶんじゃない。普通じゃない」
エナも少し考えて言った。
「普通は、見えても体が動かないと思います」
ガルドは三人を見る。
「そんなにか」
ロアンは頷く。
「だいぶ」
ミルカが言う。
「だいぶ、では足りない」
「かなり?」
「かなり」
エナは柔らかく言った。
「でも、悪いことではないと思います」
ガルドは少しだけ笑った。
「それはよかった」
ライゼンはガルドの肩を軽く叩いた。
「外を見た方がいい」
ガルドは顔を上げる。
「外」
「君の剣は、村の中だけでは測れない」
その言葉は、ガルドの中に深く残った。
※第24話「自分の腕を試したい」は全七回です。
続きます。
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