(五)拠点を潰す
◆ 拠点を潰す
岩腕が倒れたことで、魔物側の統制は崩れた。
小鬼たちが逃げようとする。
国の兵士が押し込む。
盾兵が前へ出る。
槍兵が柵を崩す。
弓兵が逃げ道を押さえる。
村の自警団が林道側を塞ぐ。
ミルカが杖を低く構えた。
大きな魔法ではない。
湿った土の一部を跳ね上げ、逃げようとした小鬼の足を取る。
小鬼が転ぶ。
そこへ兵士の槍が入る。
ロアンは横から回り込もうとした低級魔獣を見つけた。
「こっち!」
彼は剣を抜く。
まだガルドのようには動けない。
だが、剣に振られる感じは少し減っていた。
斬る。
戻す。
もう一度、構える。
そこへガルドが隙間を埋めるように入る。
「今の戻りはよかった」
ロアンは息を切らしながら言う。
「褒めるの、今ですか」
「今のうちの方が覚える」
「やっぱり厳しい」
エナは後方で負傷者を診ていた。
一人は腕の切り傷。
一人は足首をひねっている。
もう一人は、盾ごと弾かれて肩を打っていた。
エナは手をかざしかけて、止める。
ミルカの声が飛ぶ。
「エナ」
「分かっています。まず普通の手当て」
彼女は包帯を巻き、水で傷を洗い、薬を塗った。
痛みが強い者にだけ、ほんの少し癒やしを流す。
本当に少しだけ。
それでも兵士は息を吐いた。
「楽になった」
エナは安心しかける。
しかし、すぐに自分の手を見る。
まだ大丈夫。
倒れない。
続けられる。
ロアンは、兵士、自警団、ガルド、ミルカ、エナの位置を見た。
全員が、別のことをしている。
盾を並べる者。
槍を進める者。
煙を逃がす者。
傷を見る者。
隙間を斬る者。
退路を見る者。
誰か一人の戦いではない。
拠点は、そうして少しずつ潰されていった。
最後の小鬼が逃げようとしたところを、自警団が取り押さえる。
低級魔獣は倒され、スライムは湿地へ追い払われた。
粗末な見張り台は崩される。
柵は解体される。
林道は、取り戻された。
討伐隊長が声を上げた。
「制圧!」
兵士たちが息を吐く。
誰かが座り込む。
誰かが笑う。
誰かが負傷者を運ぶ。
勝ったのだ。
ただし、簡単ではなかった。
ロアンはそう思った。
国の兵士は強かった。
ライゼンも強かった。
それでも危ない場面はあった。
だからこそ、ガルドの一撃が異様だった。
強い者たちの中でなお、彼の剣だけが、違う理屈で動いていた。
※第24話「自分の腕を試したい」は全七回です。
続きます。
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