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勇者の条件  作者: KEI
第22話 疲れ切った二人から受け取った剣

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(四)守ること

◆ 守ること


その夜、エナは神殿の小部屋で眠っていた。


眠っているというより、力尽きていた。


父は、娘の寝顔を見ていた。


ロアンとミルカは、少し離れた場所にいた。


ミルカは記録帳を閉じる。


「熱は、もう大丈夫だと思います」


父はうなずいた。


「助かった」


その声には、安堵だけではないものが混ざっていた。


誇らしさ。


恐れ。


迷い。


ロアンにも、それは少し分かった。


父は静かに言った。


「私は、この子を守っているつもりだった」


ロアンは黙って聞いた。


「中央に知られれば、呼ばれるかもしれない。力を求められるかもしれない。ここにいれば、私の目が届く。村の者たちも、この子を知っている」


ミルカが言った。


「外に出れば危険です」


父はうなずく。


「分かっている」


「癒やしの力を頼られることも増えると思います。使いすぎれば、エナが倒れます」


「分かっている」


父は眠るエナを見る。


「だが、守ることと、閉じ込めることは違うのかもしれない」


ロアンは、少しだけ考えた。


神殿の外。


街道。


洞窟。


村と村。


戻る場所。


「戻ってきてもいいと思います。いつでも」


父がロアンを見る。


ロアンは続けた。


「進むなら、戻る理由も持っていた方がいいって教わりました。エナさんも、戻ってきていい場所がある方がいいと思います」


父は少しだけ表情を緩めた。


「君は、妙なところで神官のようなことを言う」


ロアンは困った。


「そうですか?」


ミルカが言った。


「たまにです」


「たまに」


ロアンは少し肩を落とした。


父は笑った。


小さく、けれど本当に笑った。


「たまにで十分だ」


ミルカは眠っているエナを見る。


「でも、今すぐ旅に出る話ではないと思います」


父はうなずく。


「分かっている。今は休ませる」


「それがいいです」


ロアンも頷いた。


「俺たちも、まだそんなに頼れる旅人じゃないですし」


ミルカが見る。


「自覚は大事」


「そこは褒めて」


「少し」


父は、二人を見ていた。


若い。


危うい。


けれど、足りないことを足りないと言える。


戻ることを失敗だと思わない。


それは、エナに必要なものかもしれなかった。


まだ結論ではない。


だが、父の中で、何かが大きく傾いていた。



※第22話「疲れ切った二人から受け取った剣」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/yuusha-no-jouken-top/

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