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最初は夢の話です。
私はまた夢を見ていた。
あれは、いつのことだっただろうか。
夏の日差しが照り付ける教室の中で私はただ一人何となく座っていた時、中庭の木の下にあるベンチに座る子を見たことがあった。
その子はいつも下を向いて何かを怖がるように、いつも人目を気にしているように、そして一人でノートに向かって真剣に何かを書いていた。
外は夏だから熱いだろうに気にせず彼女はペンをはしらせて何かを書いている。
前髪を伸ばしていつも顔を隠しているが私は彼女が美人ということを知っている。
ある日の体育の授業で、私は必ず見学をしなければいけなかったのでいつもどおり木陰で一人座っているとその子も見学するということで先生が私の横に彼女を連れてきた。
私は彼女に話しかけてみることにした。
「こんにちは、えっと確か隣のクラスの子だよね?」
彼女はびくりと肩を揺らした後にこちらを初めて見て答える。
「え、えっと。あの。その、そう、です。」
私は彼女に笑顔を向けた。
「私、島野。よろしくね。」
「あ、あ、あの。私は朝日、です。よ、よろしく。」
とすこしぎこちない動作で笑っていた、その時にちらりと見えた顔は一言で言って綺麗だった。
黒よりもすこし薄い黒の色をした瞳に端正に整った鼻筋、唇は薄いピンク色で頬もすこし色付いている。
その一瞬だけ見えた顔になぜか見覚えがある気がする。
どこで見たのだろうか?
ああ、思い出した。
あれは定期検診を受けるために病院に行った時のこと。
私はその時たしか私は中学二年生であまり病状が良くなかったため検診を一か月に一回は絶対に受けていた。
その日はわりと病状が悪くなかったので一人で検診に出かけたのだ。
いつも通りに鴻巣総合病院に向かう、その途中で反対車線の方の歩道に彼女がいた。
高校の体育の見学で見た時と同じように彼女は整った顔をしていた。
しかし、その時の彼女は何かを頭からかぶったようにびっしょりと濡れていて震えながらどこかに向かっていた。
私は心配になり声をかけようとした、その時彼女に声をかけた人がいた。
遠めから見てわかるのは綺麗な黒髪に黒目で、私と同い年かそれより年上かといった感じの年齢に見える少女は震える彼女に声をかけていた。
ここからはさすがに話している声は聞こえなかったがとりあえず大丈夫そうだ。
彼女は少女の手を取ってどこかに連れていくようだ。
きっと彼女の家まで付き添ったのだろう。
今の私には彼女がそのあとどうなったかは分からないけれどきっと少女がいるから大丈夫だとなぜか安心したのだ。
そのまま病院に向かった私には彼女の健康が損なわれていないか、ただそれだけが心配だった。
あんなにびっしょりと頭から何かの、きっと水をかぶったのだろう。
私が一番最初に疑問に思ったのはなぜ水をかぶったのか。
そしてそれはだれかの意図的なものなのか、それともただの不注意だったのか。
彼女に聞かない限りその真相は明らかにならないだろう。
そんなこともあって私は時々彼女の行動をこっそり見るようになった。
彼女がもうあんな風に傷つかないように、私のこの温情は彼女にとっていらないかもしれない。
けれど私は彼女にこれ以上悲しい思いはしてほしくない。
そんな私の思いだけで彼女に迷惑をかけるのはいけないと思ったのでこっそりと観察して彼女がまた水をかぶることのないように見張った。
そして卒業式の時に私はネモフィラの花をこっそりと誰にも気づかれないように彼女の机に置いたのを今でも覚えている。
ネモフィラの花言葉は「どこでも成功、可憐、あなたを許す」で私はこれから彼女が成功することを密かに祈ったのだ。
だんだんと夢から覚める感覚を感じた私は薄っすらと目を開けた。
起きるにはまだ早い時間だったようで私はスマホで時間を確認する。
まだ朝の4時だった。
私はベッドから起き上がって机の上に置いてあったメッセージカードを手に取る。
そこにはこう書かれてあった。
ーーーーーーー咲へ。
元気になるまで寝てること、いい?ちゃんと寝るんだよ?
咲、無理はしないでくれ。私は明日も咲の家に行くからな。
翔馬・聖麗
「ふふっ、二人ったら、これ絶対どっちが先に書くか争ったでしょ。...ふっ」
そこには二人の争ったような走り書きがあった。
二人共どちらが先に書くかを争ったようでどちらとも文字が斜めっている。
私はメッセージカードを机の上に置きなおしてベランダに出た。
まだ少し寒いが今の季節は春なので少しだけ温かい気がする。
私はまだ日の上らない空を見上げながら美人の彼女の幸せを願った。
ー彼女が幸せを掴めますように。できたらまた会う機会ができますように。
次回の投稿は明日の20時です。明日は『Restart sideストーリー』も20時に投稿予定です。ぜひそちらの方もよろしくお願いします。




