エリカの成長
騎士団の訓練はその後も続いています。
以前の私は殆どの時間を王都で過ごし派手で煌びやかな世界を生きていました。
その為にこのように騎士団が訓練している姿を見たことは無かったのですが、あの生活がこのような方々の努力によって成り立っているということを知れただけでも戻ってきて良かったと思います。
「モニカ、彼らが訓練を終えた時に汗を拭うタオルを用意したいと思いますの。
手伝ってくれるかしら?」
「お嬢様がそのようなことをされる必要はありませんよ。
我々侍女たちにお任せください」
モニカの解答に私は首を振ります。
「いいえ、これは私がしたいのです。
私は彼らがこんなに過酷な訓練をしていると知りませんでした。
その訓練の理由が私たちの領地を守ることにも関わらずです。
だから、これは私がしてあげたいのです」
「お姉様・・・その気持ち分かりますわ。
私にもお手伝いさせてください」
「お嬢様方・・・分かりました。
それではこちらへ」
私達の気持ちを理解してくれたのか、白いタオルが大量に保管された倉庫に案内してくれました。
私達はまず、そのタオルを井戸の近くまで運び込みます。
モニカが井戸から引っ張ってくれた水にタオルを浸けていき濡らしていきます。
こうして大量の濡れタオルを用意した私達は訓練場に戻っていきました。
ちょうどその頃にタイミングよく今日の訓練が終わった所でした。
「皆様、ご苦労様です。
これは水で濡らしたタオルです。
良ければお使いください」
「はい、どうぞ!」
私達は騎士団の一人一人にタオルを渡していきます。
彼らは最初は直に受け取るのは恐れ多いと拒否していましたが、お爺様が
「孫の好意は素直に受け取らんか」
と仰ってくれて皆様受け取ってくれました。
最後に私はビリー、メリルはパメラにタオルを持っていきます。
「おつかれさま。
はい、これタオル」
「ああ、助かるよ・・・やっぱ騎士団の本格的な訓練ってのは違うな」
ビリーは私から受け取ったタオルでゴシゴシ顔を拭いていく。
真っ黒になっていくタオルは訓練の過酷さを物語っているかのようでした。
「珍しく弱音?」
「いいや、違うさ。
師匠の訓練を学校で受けてたから何とか最後までついていけたしな。
学校に入る前の俺じゃ絶対に途中でへたばってただろうよ。
俺は自分の成長が実感できて嬉しいし、目標してた場所が本当に高い所にあってくれたのが嬉しいのさ」
「ふふ、ビリーにしては大人な意見だね」
私が悪戯っぽく笑うとビリーは顔をしかめながら
「俺がそんな風に考えちゃ悪いかよ」
と言いました。
そんなビリーに
「ビリーのそういう真っ直ぐな所素敵よ。
はい、ご褒美にタオルもう一枚あげる」
と言ってもう一枚白いタオルを渡しました。
ちなみにそんな私達のやりとりは
「お姉様の空間から甘酸っぱい感じがしますわ」
「ひめねえさま、かわいい」
とメリルとパメラはコソコソと話しながら観察しており、騎士団の方でも
「いや〜若いというのは良いですな!」
「全く全く。我らにあんな青春は無かったですな!」
と、団長と副団長が笑いあいながら見られておりました。
更に
「小僧め、ワシの孫とイチャイチャと・・・明日はもっと絞ってくれるわ」
「ドグネス様、協力いたしますぞ!
模擬戦では我々も力をたっぷり発揮させて頂きましょう!」
とお爺様と若い騎士たちがヒートアップして明日以降のビリーの訓練が更に追加されたことをこの時の私達はまだ知ることはなかったのでした。
ちなみにモニカの手伝うなら最後までよろしくお願いしますね。
という言葉と共に私とメリルは黒くなったタオルを洗濯するところまで行ったのでした。




