騎士団の訓練
次の日、私達は騎士団の訓練場に来ておりました。
団となっていますが騎士の数はそんなに多くはありません。
基本的に騎士は貴族の跡取りでない者が多いからです。
我がクロード家はお爺様に憧れてこちらに来たけれども、訓練の厳しさに心折れて去っていく者が多いので出入りも激しいです。
逆に言うと残ったものは精強揃いとも言えるのですが。
有事の際には彼らが民から徴兵して軍を設立して備えるという事になっているのですが、お爺様の世代からは平和なものですね。
かつて侵略してきた隣国のラズアーレ帝国とは同盟が締結されているので、これが破られない限りは平和なのでしょう。
出来ることならずっと平和であってほしいものです。
訓練場ではお爺様の怒声が飛ぶ中、皆が体力を作るトレーニングから始めます。
そして、そこで身体を疲れさせて万全でない状態にしてから模擬戦を行います。
これはお爺様の中に戦場で万全の状態で戦えることは皆無という考えからきております。
進軍や防衛、戦闘の長期化などを考えるとこれは事実なのでしょう。
また万全の者同士ならば、より腕の良い達人の方が勝ちます。
しかし、疲労困憊の状態で戦うと判断ミスや頭と身体がついてこないこと。
更には疲労から思わぬ予想外の一撃が繰り出されることもあり勝負が全く見えません。
強いて言うのであればより泥臭い方が勝利をもぎ取っている気がします。
このように限界まで追い込むトレーニングを施していたのですが、ある時からお爺様はモニカの夜会の教えも取り入れるようになりました。
その結果、効率的なトレーニングによりどんどんと肉体が大きくなっていった結果、現在の騎士団は巨漢だらけです。
私達は遠くからそれを見ているのですが
「何というか絵面が暑苦しいですわね」
「それを言っては可哀想ですが同意致しますわ。
ほら、お姉様。こういう時はパメラを見て癒されましょう」
「たしかにあの子だけ小さくて可愛らしいですから一種の清涼剤に見えますが・・・何故あの子はお爺様の隣で檄を飛ばしているのでしょう?」
「あの集団の中に入るとパメラは見えなくなりますし踏み潰されないか心配ですから全く疑問に思わない事にしましたわ」
現在、騎士団ではランニングを行なっています。
それも鎧を着込んだ上に砂の入った袋を担いでです。
これは有事の際に常に鎧を着込んでいることと、逃げ遅れた民を見つけて救助するときにも鎧は着たままだろうというお爺様の考えからです。
ビリーとパメラは最初は砂袋だけでの参加という話になっていたのですが、やるからには本格的にやりたいと同じように鎧を着込みました。
更にお爺様と団長、副団長は砂袋を両肩に抱えているのですが、パメラは自分もやりたいと言い出しました。
騎士たちは少女にしか見えないパメラに無理だと止めましたがお爺様が許可を出したので渋々認めておりました。
あの結果に不満を言わなかったのは団長と副団長くらいでしたね。
申し遅れていましたが騎士団に団長と副団長がいます。
お爺様は顧問という形で在籍しておりますね。
話が逸れましたが現在どのような形かというと、先頭をお爺様とパメラが並んで走っております。
しかも、後続に対して檄を飛ばしながらです。
その後ろを団長、副団長が走っております。
更に団員が続き、ビリーが何とか引き離されないように喰らいついているという状況です。
その状態でひたすら走らせてから模擬戦が始まります。
団員は全員が肩で息をし、ビリーに至っては訓練用の木剣を杖代わりにしなければ立てないほどです。
それでも気力で構えるのですがその状態で動くわけではなく、ボコボコに打ちつけられていますね。
パメラの方はと視線を向けると副団長と試合をしておりました。
互いに互角の打ち合いをしておりましたが体力の限界がきた副団長のミスを逃さずに一撃入れてしまいました。
「く、参った。降参だ!」
「わーい、じゃあ次は団長さん戦おう」
パメラは次は団長を指名しております。
今まで複数の騎士を同時に相手にしていた団長はその言葉を聞いて周りの騎士たちを一気に叩き伏せました。
「わかった、次は私が戦おう。
但し、君の本来の武器を使ってもらおうかな?」
団長の言葉にパメラはお爺様の方を見て首を傾げます。
「お爺ちゃん先生。あれ使ってもいい?」
「うむ、団長相手なら構わんじゃろう。
ちょっと待ってろ」
と言ってお爺様は私たちの更に後ろにある倉庫からパメラの身長よりも長い木剣を取り出しました。
「ほれ、これを使え」
「おお、ありがとう〜」
お爺様はそれをパメラに投げつけましたが易々とキャッチして振ります。
その様は先程まで使っていたショートソードと呼ばれる長さの木剣よりもサマになっている気がします。
お爺様はそのまま私たちの横に腰掛けると
「今から面白いものが見れるぞ」
と笑いました。




