そうだ、領地に帰ろう
王立学校は特待生もいますが主に貴族が通い、教師も殆どが貴族です。
そのため領地に戻る期間として定期的に長い休みがあります。
特に私達はお爺様がこちらに教師として来られているので1人残るお母様が心配でした。
そういう理由もあり一時領地に帰ることにしたわけですが、ここで問題になったのが特待生達です。
この間学校はほぼ人がいなくなる為、寮も閉鎖されます。
帰るにも旅費がかかる為、基本的に王都で日銭を稼いで宿を借りるという予定になっていたそうです。
学費が免除されるとはいえ、この扱いはどうだろうかと思いましたので改善するよう要求する予定ではありましたが、今回は間に合いません。
そこで特待生達も馬車で領地に送ることにしました。
「ねぇ、エリカっち。
本当に一緒に乗って良かったの?」
「ええ、もちろん構いません。
こちらは女性陣しかいませんし、おしゃべりしながら楽しみましょう」
クロード家の家紋が付きの馬車のせいで緊張した様子のカチュアさんが話しかけてきますが気にしてはいけません。
むしろお爺様と乗ると色々と暑苦しいので男と女で馬車を分けれたのは僥倖でしょう。
「それにパメラをご覧なさい。
あれこそ自然体ではないですか」
私は扇子を反対側の座席を指します。
そこにはメリルの膝で気持ちよさそうに眠るパメラがおりました。
メリルはそんなパメラの頭を撫でて微笑んでいます。
「いや、あれこそ無礼だと思うんだけどね。
メリルっちは問題ないの?」
「全く問題ありませんわ!
私、優しいお姉様を見ていて常々姉というものに憧れていましたの。
これが妹に膝枕する姉の気分ですのね。
はぁ〜パメラは本当に可愛いですわね」
「妹っていうか同い歳なんだけどね。
エリカっちがそれ言うなら分かるけど」
「私はいつも心は皆さんと同じ歳のつもりですわよ」
私は扇子を開き、口元を隠しながらそう言いました。
「うげ・・・ガチに怖いやつじゃん。
もう歳の事は言わないって」
「ふふふ、冗談ですわ。
それよりも緊張は解けたんじゃない?」
「あ、そういえば。
結局いつもと同じ空間だね」
「そう言う事ですわ」
数日後、私達は無事にクロード公爵領に戻ってまいりました。
先ずは皆さんを修道院で降ろしましよう。
クロード家の馬車が近づき止まったことに修道院の関係者は驚いております。
修道院の中からは神父様が飛び出してきましたね。
先ずは私から馬車を降りて挨拶をします。
そして次にメリルが・・・手を握ったパメラも一緒ですわね。
最後にカチュアが降りてきます。
また、もう一台の馬車からはビリーとマークが降りてきました。
「これはエリカ様、お越し頂きありがとうございます。
マーク、これはどう言うことだ!」
神父様は私に挨拶されてからマークに詰め寄りまふ。
マークは胸を掴まれてグラグラ揺らされているので上手く喋れないようですが。
ビリーがその手を止めて代わりに話し始めます。
「マークは悪くないから勘弁してやってくれよ。
エリカが俺たちを送って行ってくれるって言うから仕方なくな。
最初は俺たちも断ったんだぜ!」
「当たり前だ、バカモン!
それにエリカ様を呼び捨てにするとは何事だ。
いつも言っているだろう。
お前達が特待生になれたのもクロード家の援助があっての事だぞ!」
神父様の血管が今にも千切れそうなほどに怒っていますね。
助け舟を出した方がいいでしょう。
「そこまでにしてあげてください、神父様。
ビリーの言う通り私が無理やりに馬車に乗せたのです。
それに呼び捨ての件も私が許可を出しておりますの。
私達は今は平民や貴族ではなく共に同じ学校で過ごす学友なのですから」
私がそう言うと神父様は突然膝をついて胸の前で手を組み始めました。
それは祈りの姿勢ですわよね?
なぜ、こちらに向けているのでしょうか?
「おお・・・おお・・・さすがエリカ様は慈悲深い。
是非私の感謝の祈りをお受け取りください」
神父様がそう言うと周りにいた修道院の関係者も全員が同じように膝を地面について祈り始めました。
「あ、あの、皆さんどうか落ち着いてください。
お気持ちは大変嬉しいですが、その祈りは神様とアイン様に預けてください」




