シャルロット・カミール 4
「ネリィ、どうしたの?」
私は蹲るネリィに声をかけます。
「いえ、問題はありません。
昨日激しいトレーニングをしてしまったせいかもしれませんね。
それよりもシャルロット様、本題の方を」
「え・・・ああ、そうでした。
エリカ様、メリル様。
この度は私の不用意な発言で不快にさせてしまったことを謝罪させてください」
私はそう言って頭を下げます。
「あら、私達は気にしてなかったから謝罪の必要もなかったんですけど。
でも、せっかくだから受け取っておきますわね」
「私も気にしてませんから!」
お二人の優しい許しに涙が出そうになります。
私は顔をあげて
「謝罪を受け入れて頂きありがとうございます」
とお礼を言いました。
「シャルロット様は部屋に戻られてから自分の間違いに気付かれたのです。
この制服もその考えからなのですよ」
更にネリィが素晴らしいアシストをしてくれました。
「ええ、私はお二人の学生は平等であると言う精神に非常に感銘を受けましたの。
そこで先ずは心構えから正そうと皆で制服を着ることに決めましたの」
私がそう答えると2人は嬉しそうに微笑まれました。
「私達の考えを理解してもらえて嬉しいわ。
中々理解してもらえないと思っていたから、こんなに早く賛同してもらえるなんて本当に良かったわ」
「そうだ!良ければシャルロットさんも明日の入学式は私達と一緒に行きませんか?
今日会った4人とも約束しているんですけど、そこにシャルロットさん達も是非!」
「は、はい。是非お願いします!」
メリル様の提案に思わず頭を下げてしまいました。
しかし、メリル様は私の手を両の手でギュッと握られます。
思わず顔を上げると優しく微笑まれたメリル様から
「約束ですよ」
と言われてました。
この時点で私の呼吸はかなりまずい事になっていました。
動機が激しく息が足りない・・・その様な感じです。
しかし、本当のピンチはこの後に待っていたのです。
「それにしてもシャルロット様の制服も素敵ですわ。
よくお似合いで。ねぇ。お姉様」
「本当ね。でも、制服を着て一番可愛いのはメリルよ」
エリカ様の言葉にメリル様の顔が真っ赤に染まります。
「か、からかわないでください。
私もよりもお姉様の方が似合っていてお綺麗ですわ」
「ふふ、ありがとう」
エリカ様がそう言ってメリル様の頭を撫でると先程よりも更にお顔が朱に染まります。
しかし、嫌がるそぶりは見せずにその手を受け入れてらっしゃいます。
「ふぐぅ!?」
私はその光景を見て動悸と息切れが激しくなり、思わず叫びそうになった口を手で抑えます。
後ろを見るとベッドに座った4人も同じ様な姿になっておりました。
そして・・・
隣の席を見るとネリィが椅子から転げ落ちておりました。
「だ、大丈夫ですの?」
私は慌ててネリィに駆け寄ります。
「だ、大丈夫です。それよりもシャルロット様。
これ以上はご迷惑になりますので、もうそろそろお暇しましょう」
「そ、そうね。
エリカ様、メリル様。
長居して申し訳ありません。
私達はそろそろお暇させていただきます」
私の言葉に頭を撫でるのをやめたエリカ様がこちらを見ます。
「遠慮しなくても良いのですが。
まぁ、明日からも会えますからね。
お部屋までお気をつけて」
「シャルロット様達も明日はよろしくお願いしますね」
「はい。明日も会えるのを楽しみにしていますわ*
私達はそれぞれに別れの言葉を掛け合い部屋を後にしました。
部屋に戻ってからは全員が虚ろな目で先ほどの光景を思い出します。
目の前で2人の仲睦まじい姿を見る度に胸が締め付けられ、動機が激しくなり呼吸すら困難になってくる。
苦しいはずなのにあの2人をもっと見守りたい。
そしてこの場所に何かを建てたい。
この気持ちは一体なんなのでしょうか?
「ふふふ、どうやら皆様もこちらの世界が分かる方のようで私は安堵しましたよ」
唐突にネリィが笑い出します。
「こちらの世界?
貴女は何を仰ってるの?
ひょっとして、私達のこの感情が何か分かるの?」
「ええ、分かりますとも。
皆様は資格を得たのです!
私達、白百合の会に入る資格を!!」
ネリィはそう言ってテーブルに紙を置きます。
私達がその紙を覗き込み目にした瞬間に衝撃を受けました。
紙には絵が描かれていたのですが、その絵というのが今よりも幼いエリカ様とメリル様が涙しながら抱き合っている絵でした。
また、私達全員にあの感覚が蘇ってきて全員が胸を押さえます。
「こ・・・これは一体?」
「お二人が幼少の折、姉妹の誓いを立てた日の状況を絵にしたと言われております。
我ら白百合の会はこの絵を懐に忍ばせお二人が絆を確かめ合うのを陰日向に見守る・・・そのような活動をしております」
「そ・・・そのような事をして一体何が目的ですの?」
私がそうたずねるとネリィは更に紙を一枚取り出した。
「こちらは先月の会報です。
どうぞ、ご覧ください」
そこにはお二人が制服を着て見せ合っている姿の絵が大きく描かれ、下にはその時の会話の内容が書いてあった。
それは絵と合わせてみればお二人の掛け合いが簡単に想像できるほどに素晴らしい出来でした。
「ぐはっ!?」
そして、また想像して私達はダメージを受けます。
最早、心身ともにボロボロです。
しかし、見ていたい。
周りのお付きの令嬢達も同じような表情をしています。
その時、私達はこの感情を共有する深い絆で結ばれている。
そんな気持ちになりました。
「その表情・・・どうやら納得頂けたようですね。
我々は同じ感情を共有する仲間!
さぁ、皆さま白百合の会へ是非ご参加下さい!」
ネリィはそう言って私達の前に手を差し出します。
私達はお互いに顔を見合わせて頷きます。
そこに迷いは一切ありません。
私はネリィの手をとり強く握り返しました。
他の4人も同様です。
「これでシャルロットさま達も我らの同志です。
メンバーはまた後日紹介し、その時に証である絵を差し上げられるように手配しましょう」
「ありがとう、ネリィ。
会に入る事を決めた上で一つ聞きたいことがあるのだけどいいかしら?」
「なんでしょう、シャルロット様」
「私達のこの感情!
これは一体なんなのですか?
名前はないのですか?」
私がたずねるとネリィは微笑みながら
「その感情を我々は尊いと名付けました。
お二人の仲睦まじい姿を見て心の中で呟くのです。
尊い・・・と」
と答えました。
この世界の第2勢力が誕生していました。
メンバー第1勢力と割とカブっています。




