メリル・ブラウン 2
名前がメリルではなくモニカになっていたので修正しました。
私の名前はメリル・ブラウン。
故あってエリカお嬢様に拾われ、母さんと一緒にクロード家にお仕えすることになりました。
本日はエリカお嬢様の10歳の誕生日パーティーです。
私は記念すべきこの日を最高の1日にするぞ!
と意気込んでおりました。
しかし、現在私は貴族様の着る綺麗なドレスや装飾品を身に纏いお嬢様の隣に座っております。
名目上はクロード家の遠縁という話になっているそうですが、私のような平民では粗相をしてクロード家の名に傷をつけてしまわないか不安で仕方ありません。
お嬢様のことも今日1日はお姉様と呼ぶように言い含められております。
エリカお嬢様が私のお姉様だなんて恐れ多い・・・まあ、そんなことを想像しなかったかというと嘘になりますが。
いつも優しく私を見守ってくださるお嬢様の事を無礼な話ではありますが姉がいたらこんな感じなのかと思ってしまったことは多々あります。
今も緊張する私の手をテーブルの下で握って
「不安に思うかもしれませんが貴女は自分が思っているよりも素晴らしい淑女としての働きをしておりますよ。
クラリス先生と私が教えたことを忘れなければ大丈夫です」
と励ましてくれます。
たしかに敬愛するお姉様の教えなのですからそれを守れば平気ですわね。
そう考え直した矢先に持ち直した私の心を砕くような出来事が起こります。
なんと我が王国の第1王子が祝いを述べにやってこられたのです。
確かにお姉様は公爵家の一人娘。
王子が祝いにやってきても何もおかしなことは無いのですが・・・それにしてもあんまりです。
ただの平民が王子に御目通りするなど大それた事という話どころではありません。
王子は真っ直ぐにこちらのテーブルにやってきますが直視など出来ません。
私は俯いてテーブルをじっと見つめます。
・・・もちろん無駄な抵抗ですね。
お姉様に祝いの言葉を述べにやってきた王子に目線を合わせないわけにはいきません。
私は覚悟を決めて顔をあげます。
・・・・・・・・・・・・・・・・はっ!?
私は王子の顔を見て固まってしまいました。
夜の闇のように黒い髪。
整った端正な顔立ち。
しかし、王子という立場に縛られていないような野性味の溢れるお姿。
そこには私にとって完璧な理想の王子様がおられました。
そのことに気がついた私の顔は一気に真っ赤になります。
気のせいか王子も同じような反応をしているような・・・まさか、気のせいですよね。
お姉様に促されて私は王子に挨拶をします。
授業で聞いてはおりましたが王子はシグルド・エリディスと名乗られました。
・・・本当にこの国の王子様ですのね。
私は高鳴る心と共に絶対に望みがないだろうことに落胆します。
初めてお会いし一目見ただけなのになんと失礼な事を考えているのでしょう。
しかし、目の前にいらっしゃるシグルド様に私は目を離せません。
シグルド様も旦那様とお話ししながらもこちらを見ているのは気のせいでしょうか?
そうして暫く時間が過ぎると、何とお姉様は各テーブルに挨拶に行くと仰ります。
しかもシグルド様の相手は私に任せると仰るのです!
何故か旦那様や奥様、シグルド様までその案に賛成されます。
無理です・・・そんなの無理ですわ!?
私はあまりの心細さにお姉様の袖を掴んでしまいます。
そんな様子を見たお姉様は私を控え室に連れ出しました。
今日はお姉様と呼ぶ約束でしたがそんな余裕は今の私にはありません。
ついお嬢様と呼ぶと窘められてしまいました。
そんな私に対してお姉様は私の心の内を当ててしまわれます。
うう・・・そんなに分かりやすく態度に出ていたのでしょうか?
その時、自己嫌悪に陥りそうになった私は近づいてきたお姉様に抱きしめられます。
驚き戸惑う私の事を優しく抱きしめながらお姉様は私の想いを無駄にしない。
自分を信じてほしいと訴えます。
・・・私はお姉様に拾われたあの日に何があってもこの方に尽くそう。
この方の100%の信頼を捧げましょうと誓いました。
そのお方が私のために自分を信じてほしいと仰ってくれてるのです。
私はその言葉を信じることに致しました。
お姉様がそう仰られるなら私はこの想いを胸にシグルド様のお相手を務めるのみです!
私はお姉様の想いに感動しつい背中に手を回してギュッと力を入れてしまいました。
しかし、お姉様も嫌がることなく抱きしめた私の身体に力を込めてくれます。
そうして私の事を本当の妹のようだと言ってくださるお姉様。
私もエリカお嬢様の事を本当の姉のようにお慕いしております。
私たちはお互いに笑いあった後に手を繋いでシグルド王子の元に戻ったのでした。
久しぶりのメリル視点です。
この後いくつか別視点を書いたら本編は次のシリーズへと場面を変える予定です。




