エリカ様の悩みと凄腕美容師
久しぶりにエリカ様視点です。
王国滅亡の未来を変えたのみならずビリーとの婚約も認められて順風満帆なじんせいではあるのだが私には1つの悩みがありました。
それは私の髪の先の部分。
縦ロールになっていた所がゴッソリと無くなってしまった事です。
今の私の髪型はかなりバランスが悪く端的に言えば変なのです。
「モニカ、やはりやるしかありませんわ」
「ですがお嬢様・・・伸びるまでカツラを用意するという手もございますので何卒お考えなおしては」
そういうモニカに向き合い真っ直ぐに瞳を見て言います。
「いいですか、モニカ。
私は今回の件で多数の人に助けられました。
そんな人達に偽った私の姿を見せたくは無いのです。
もちろん、その中には貴女も入っているのですよ」
「勿体ないお言葉にございます!
分かりました、このモニカ。
夜会のツテを辿って必ずや一流の美容師を探してまいりましょう!」
こうしてモニカがツテを辿って探し当ててきたのが目の前にいる男でした。
「あ・・・あの、今日はよ、よ、よ、よろしくお願いします」
とても緊張しているのかオドオドしていて震えており、この震えでハサミを握るのかと思うと不安になってしまいます。
「モニカ・・・貴女のことは全幅の信頼を寄せています。
寄せている上で聞いて欲しいのですが・・・大丈夫なのですか?」
「私も最初はそう思いましたが彼がカットするところをハッキリ見ておりますので問題はありません」
モニカがそう言うのでしたら間違い無いのでしょう。
「今日はよろしくお願いしますわね」
と私が笑顔で微笑むと彼は顔を真っ赤にして俯いてしまったので益々不安になってしまいました。
しかし、
「オーケー!今日はどんな風にして欲しいんだい?」
ハサミを持った瞬間に彼の様子が変わりました。
目つきは鋭くなり、私の髪に集中しています。
「正直、このバランスの悪さをどうなおしたらいいのか分からないので貴方にお任せしますわ」
「公爵令嬢様からフリーでの依頼とは腕がなるねぇ!
任せな、俺が今までに出会ったことのない自分に出会わせてやるぜ」
そして彼は両手にハサミを持つと目にも留まらぬ速さで髪を切り刻んでいきます。
一見すると無造作にハサミを動かしているように見えますが、彼にはその先が見えているかのような動きでした。
「よし、こんなところだな?
さぁ、新しい自分に挨拶しな!」
彼に終了を告げられた私は鏡の前に立ちます。
「まぁ、これは素敵ね!」
前髪は眉毛を隠す程度。
左右から後ろまで長さが揃えられた髪は頰の半ば辺りまで短くなっていた。
しかし、全体的なバランスとフワッとした見た目は女性らしさを損なわず、上品さを醸し出していた。
「俺としても上手く出来たと思うぜ。
それに毎回同じような髪型の注文ばかりだから今回の仕事は楽しかったぜ。
やっと考えていた髪型の1つが試せたって感じだな」
「まぁ!他にも革新的な髪型があるの?
良ければ聞かせて欲しいわ。
そうね・・・画家も用意しましょう。
言葉だけでなく視覚的に見えたほうがいいでしょうから」
「あんた、なんか悪いこと考えてるだろう?
髪型と言い普通の貴族と違ってぶっ飛んでて面白いな。
いいぜ、何をやるか聞かせてくれて面白かったら乗っかってやる」
「それではこちらの準備が整ったらまた連絡しますのでその時はよろしくお願いしますね」
こうして私は凄腕の美容師ジュリアンと握手を交わしたのだった。
彼は後にこう言われることになる。
「全ての女性に美を与えた男」と。




