マークとカチュアの未来予想
牢屋に入れられた僕の前に現れたのはモニカさんだった。
「マークさん、ご加減はいかがでしょうか?」
モニカさんがそう声をかけてくるが全く意味が分からない。
最後に記憶しているのはビリーと飲んでいた事なので、ビリーがここに来るか、エリカ様とモニカさんの2人でここに来るのなら分かる。
また、事情の説明に侍女が来ても納得しただろう。
しかし、モニカさん単体で牢屋に閉じ込められた僕を訪ねて来るなんて意味が分からない。
ひょっとして酔って記憶のない所で彼女に何かしてしまったのだろうか?
混乱している僕を見て察したのか、モニカさんはため息をついてパメラの方に話しかけた。
「パメラさん、ちゃんと事情は話したのですか?」
「うん、ちゃんとしけーいって伝えたよ」
「はぁ、そんな所だとは思いましたよ。
貴女の場合は分かっててやってる所が悪質だと思いますよ」
「そんなに褒めるなよ、照れるじゃねぇか」
「・・・まぁ、貴女はそのままでいいと思いますよ。
マークさん、貴方に事情を伝えて協力を取り付けるように言われてここに来ました。
恐らく何も分かっていないと思いますので事情を説明させてください」
モニカさんの言葉に僕は安堵する。
やはり僕がここにいるのは何かの事情がある話だし、モニカさんに何かしたわけでも無さそうだと分かったからだ。
そして、彼女がここに来て事情を説明するという事は裏で動いているのはエリカ様なのだろう。
僕はモニカさんの問いかけに頷いて答えた。
「まず、察しておられると思いますが今回の図面を描いたのはお嬢様です」
「ええ、それは分かりますよ」
「お嬢様は貴方達の事情を知りカチュアさんを呼び戻そうと考えられましたが、彼女は普通に呼び戻しても効果が無いと思われたようです。
そこでマークさんが不敬を働き処刑されるという話を伝える事で自主的に帰還させるように仕組まれました」
「なるほど、それなら帰って・・・来るのかなぁ?」
ここまで連絡も何もないのに僕の処刑ぐらいで帰ってくるのだろうか?
そんな僕の様子にモニカさんはハッキリ分かるくらいに大きなため息を吐いた。
「貴方のその自信の無さと待ちの姿勢も今回の話の原因なんですよ。
今回、私がここまで来たのも貴方に一つ私の話をする為に来たのです。
「モニカさんの話ですか?」
「ええ、私もお嬢様がまだ幼い頃に婚約者がいた事がありました。
王都に行くお嬢様に着いていきましたが、彼は帰ってきたら結婚しようと言ってくれた人でしたよ」
何という事だろうか・・・プロポーズの立場は逆だがまるで今の僕たちみたいじゃないか。
「ですが、私は王都で自分を鍛える技術に魅了されてそのままお嬢様の元で3年間も王都で過ごしてしまいました。
結果は言わなくてもお分かりでしょう?」
「ええ、分かります・・・が、その方は信じて待てなかったのですか?」
「人間というものは何もない状態で信じて待つ事が出来るほど強くできていません。
毎日少しずつ身体の中に心を侵す毒が溜まっていくのです。
マークさん、貴方にも確実に毒は溜まっていたはずですよ。
そうでなければ昨日、記憶をなくす程深酒しないでしょう」
「う・・・否定出来ませんね」
「私は彼を失っても周りにお嬢様方がおり、マリアという親友がいた為に大丈夫でした。
しかし、カチュアさんは違います。
あの方は貴方を失ったら表面上は取り繕いながら仕事に打ち込み続けるでしょう。
そして、休みも殆ど取らない中で肉体と心は疲弊し周りに強くあたり結果的に仕事が上手くいかずに王国に帰還し落ちぶれていく・・・これはお嬢様の予想ですが私も概ね同意見です」
「カチュアはそこまで僕を必要としてくれているのでしょうか?」
「それは今から帰ってくるであろう本人に聞いてください。
自分たちの気持ちを確認して言葉に出さないといつまで経っても疑問は解けませんよ。
納得出来たなら先ずはここから出ましょうか。
パメラさん、鍵を開けてください」
「がってんしょうち!」
モニカの指示でパメラはポケットから鍵を取り出し、扉の鍵穴に刺してカチャカチャ回し始めた。
こうして牢屋から出された僕はカチュアの真意を知る為に彼女を待つことにしたのだった。




