頭の上がらないマーク
特待生の目立たない組であるマークとカチュアの話です。
僕の名前はマーク・オーエンス。
平民でありながらも特待生になることができ、そのお陰で今はクロード家の文官を勤めさせてもらっている。
僕には幼馴染が1人いる・・・実際には3人いるのだが、物心ついた時からいるのは1人。
それは同じ特待生だったカチュアだ。
僕の人生は彼女と共にあり、常に彼女に決められてきた。
元々、修道院で勉強しようと言い出したのが彼女だった。
僕は漠然と家の手伝いをしてこのまま真っ直ぐに見えている道を進んでいくのだろうと思っていた。
しかし、彼女は修道院が広く子供達の面倒を見て教育の機会を与えるという話に飛びついた。
その時には修道院で学んで貴族学校に通い将来の選択肢を増やすことを考えていたらしい。
彼女は誰彼構わず平等に接していたためにとても人気があった。
また身体を動かすことも得意だったので誰もが明るく優しく、頭よりも先に身体が動くような女の子だと思っていた。
でも、本当は違う。
彼女が誰彼構わず優しいのは彼らにそれほどの興味を持っていないからだ。
そして、彼女は何か行動を起こす時には必ずその結果について考え終えている。
恐ろしいほどに冷淡で計算高いのがカチュアという少女の本質だ。
そんな少女から一緒に修道院で勉強しようと言われたのは意外だった。
だって、誰にも興味を持っていなかった彼女が僕のことは見てくれていたということが分かったからだ。
僕は半ば無理矢理カチュアに連れ回されている風を装いながらも内心では喜んでいた。
そして、修道院の中では新たな出会いもあった。
それがビリーとパメラであった。
もしも、これがビリーだけだったなら僕は嫉妬していたかもしれない。
しかし、ビリーとパメラというコンビは既にとても仲が良くお似合いに見えていた。
だからこそ僕は彼らとも仲良くなることが出来たと思っているし、現在もその友情が続いていることに感謝している・・・恋愛面に関しては予想もしていなかった事になってしまったが。
そんなカチュアは明日外交官として帝国の視察に向かう。
僕は文官としての仕事を放り出すわけにも行かずクロード家の領地に留まることになっている。
人生で初めてカチュアと離れるというのは不安であり心細いことでもあった。
しかし、それ以上に再会した時に彼女がビックリするほどに成長した姿を見せてやろうと思う気持ちもあった。
そして、そんな姿を見せられたなら心に秘めていた言葉を伝えようと思っていた。
見送りの当日・・・周りの人たちが気を遣ってくれたのか2人だけの時間が取れた。
暫く会えないことを寂しく思いながらも二人の時間を喜んでいた彼女が唐突にこう言った。
「それじゃ、私は暫く向こうで頑張ってくるけどマークもしっかりやるんだよ。
私が帰ってきたら結婚式挙げようね!」
そう言って彼女は僕に口づけをし馬車に乗って去っていった。
「は?結婚?キス????」
僕はまだ感触の残っている唇を押さえながらその場で固まることしか出来なかった。
なんでも勝手に決めてしまうカチュアさんにマーク君は振り回されっぱなしです。




