モニカ 愛の筋肉祭 4
駆けつけた騎士団も含めて騒ぎを鎮圧していけば流石にすぐに終わりました。
騒ぎが完全に収まったことでお嬢様もお屋敷から会場に戻られております。
「貴方はマルス・ハイド様ですね。
私の名前はエリカ・クロード、お初にお目にかかります」
昔と変わらず優雅に完璧にお嬢様は挨拶をされます。
「これは挨拶が遅れてこちらこそ申し訳ない。
マルス公爵家の三男、マルス・ハイドと申します。
エリカ様にはモニカ様を派遣して私の命を救ってくれたことを感謝したいと常々考えておりました。
しかし、この場では相応しくないので改めてそのお礼を述べる時間を取らせて頂くことを許していただけますか?」
「いえ、それはモニカがやったことですから彼女にお願いします。
それよりもこのような騒動に巻き込んでしまい申し訳ありません。
せっかくのタキシードもそのように破れてしまって・・・すぐに換えの衣装を用意させましょう」
「ありがとうございます。
それでは換えの衣装が届く前に・・・」
と、マルス様が仰り身体中に力を込めると右腕以外の部分の服も全て弾け飛んでいきます。
そして中からは完璧なバランスで鍛えられた筋肉が顔を出しました。
「モニカさん。
僕は貴方に相応しい男になるために身体を鍛え上げました。
その中で身体を動かす楽しさも学べました。
貴方と出会わなければ今の僕は無かったでしょう。
僕は貴方ともっと一緒にいて高みを目指したい。
トレーニングの先にあるものを一緒に目指しませんか?」
私はその言葉を聞き、服を脱いでお嬢様の護衛に来ていたパメラさんに持っていただくように頼みました。
彼女は快諾してくれたので服を預けます。
今の私はトレーニングで使っている肌着のみです。
チラリとお嬢様の方を見ると全く訳が分からないような顔をしていらっしゃいます。
「マルス様の気持ちはよく分かりました。
しかし、貴方が本当にその先を見るのに相応しい相手かどうか?
その筋肉は見せかけでないか確かめる必要があります。
さぁ、来なさい!!」
私は両手を顔の位置まで上げて大きく手のひらを開いて向けます。
この意味を理解したマルス様も同じように手を開き私とがっぷりと組合います。
『はあああああああ!!』
お互いに全力を出しているのが分かりますがピクリとも動きません。
やがてその腕力を支える足元の地面の方が耐えられなくなり、私達の身体は段々と下に沈んでいきます。
私はマルス様に分かるように少しずつ力を抜いていくと、彼もそれに合わせるように少しずつ力を抜いていきました。
「分かりました。
マルス様ほど私と歩むに相応しい人物はいないことでしょう。
しかし、私はお嬢様の元を離れる気はありません。
貴方はその辺りをどうするつもりですか?」
私はパメラさんから服を受け取り着替えながらたずねます。
マルス様も同じタイミングで服が届いたので着替えられました。
服を脱ぐ前より明らかに小さくなっていますが、身体の中に圧縮したのでしょう。
「そのことなんですが、エリカ様。
お聞きしてよろしいでしょうか?」
「え・・・ああ、はい。
なんでしょうか?」
お嬢様にしては珍しく取り乱しながら答えます。
「クロード家では夜会の男性指導員を探しているとか。
その役柄、僕に頂けないでしょうか?」
「それは構いませんが・・・ハイド家の方は問題ないのですか?」
「ご存知の通り僕は少し前まで病弱でいつ死ぬか分からない命でした。
それが助かっただけで父は満足らしく好きにしていいというお言葉を頂きました。
更に恩人であるクロード家とモニカ嬢の役に立つことであるならば尚更反対する理由はないとも」
「分かりました。
これより、マルス・ハイドを我が家の特別顧問として迎え入れます。
ただ、モニカと同じように夜会だけでなく昼間は色々とお仕事してもらいますが大丈夫ですね?」
「もちろんです!
必ずお役に立てることを誓います」
こうしてあっという間にマルス様はクロード家の特別顧問という立場を得てしまいました。
「これで問題はなくなったはずですが、先ほどの返事はオーケーということでよろしいでしょうか?」
「ええ、もろちん。
こちらこそよろしくお願いしますわ」
こうしてハイド公爵の手紙から始まった一連の騒動は終わりました。
私はこの騒動で公私ともに理解のあるパートナーを得ることになりました。
今までの生活に何かが不足していたとは思いません。
しかし、マルスという最良のパートナーを得た私の人生は以前と比べ物にならない程に輝いております。
マリアの言うようにもっともっと幸せというものは求めてよいのかもしれません。
人生の幸せも、肉体の美しさもまだまだ求めていきましょう・・・愛する彼と共に。
この後、エリディス王国には肥満の人間は殆どおらず、皆が健康的で美しい肉体を維持していたと言う。
その最大の功績社として後の世まで伝わるトレーニング理論を築いたとしてマルスとモニカの夫婦の話は後世まで語り継がれるのであった。




