お店を開く準備7 鷹仁
僕の目の前にいるのはクワガタだ。
クワが平たいヒラタクワガタと言うやつだ。
ヒラタクワガタのクワの中は、ギザギザになっていて、ご丁寧に研ぎ澄まされたのごとき鋭利な刺である。
そんなヒラタクワガタの1メートル級の魔物がのそのそと近寄ってきたら、命の危機だろう。
挟まれてみるのも一興なんて思うはずもなく、手裏剣で一掃する。
最近は戦闘シーンが一方的なような・・・。気にしない。
でも、RPG なんかで最終ボスを最弱武器で倒すみたいな感覚ってあるよね。
そんな感じで戦ったら、結構な死闘が繰り広げられるかなと思う。うん、もっと暇なときにやろう。
しかし、クワガタのクワって外側を研ぎ澄ましたら、面白そうな武器になりそうだよね。
ダンジョンは切り落とした部位はチリとなり消えていくから使えないけど、どこぞありそうなゲームの武器だよね。
でもこれ、平たいからそう思うけど、ミヤマクワガタとかいう湾曲したクワだと、なんか扱いづらそうだ。
ん?何でこんな発想が出てくるのだろうかと、疑問に思う。
僕も龍一みたいに剣とかで戦ってみたいのかな?いいかも。
剣だけじゃなく色々な武器を使ってみたくなった。
試しに木刀を出した。
この木刀はアイテム的に (武器) 木刀 (下下) だ。
剣の振り方とか知らないから取り合えず思いっきり振ったけど。
目の前にいるクワガタに当たらなかったんだ。
間合いが悪いとかじゃなく、確実に当たる位置で振ったから。
クワガタの鍬との距離感があり狂ったのではと思うかもしれないがそうでもない。
だって今クワガタに挟まれてる最中なんだもん。
刺が地味に、いや、かなり痛く体に食い込んでる。
それなのに木刀が当たらなかったのだ。
手が滑って木刀を飛ばしてしまったと考えるかもしれないが、そうではない。だって手に木刀持ってるからね。柄の部分だけだけど。
そう、思いっきり振ったと時、木刀の根元から折れてしまったのだ。
柔らかいものを持ち運ぶとき、手の中のものを残し折れてしまう。そんな感じの事が起こった。
折れた木刀はどこに飛んでいったかというと、僕の真上の天井だ。
天井に当たった木刀は、原形を留めることもなく粉々になっていた。
お陰で、今の僕は木の粉を被っている。
「こりゃあれだ。違う武器で戦うのは保留だな」そう呟くと直ぐに部屋のヒラタクワガタを一掃した。
1つ上の階に移動する。
しばらく進むと、そこにいたのは相変わらず1メートル級の虫だ。
だが、その虫は物凄く・・・「綺麗だ」と呟くほどだった。
緑色、青色、赤色と光沢をもつ鎧をつけている。
所々、白色の模様があるその虫を僕は図鑑でしか見たことない虫だ。
確か「ハンミョウ」だよな。
道しるべと言う名前もあったかな。確か、近付くと逃げるのだが、逃げる距離が遠くまでランダムに方向を変えるのでなく、一方に一定の距離で逃げる上、時々後ろを振り向くような仕草をするのでその名が着いたらしい。
そんなハンミョウだが、ここからだと後ろ姿しか見えない。
そう思っていると1匹のハンミョウが首を動かし後ろを向いた。
後ろにいた僕の存在に気付いたようだ。
正面を向くそのハンミョウは、かなり鋭そうな牙をこちらに向けてくる。
細長い脚で体を浮かせているので、より牙が明確に見える。
近付いてくるハンミョウに、僕が攻撃を仕掛けようとしたその時、僕の後ろから弓矢が飛んできて、ハンミョウを駆逐した。
ハンミョウが落とした銅鉱石は、当然のように彩琥に吸収される。
「綺麗な虫だったね」「見たことないななんて虫だろう?」龍一もいるようだ。
「ハンミョウって言うんだ」「あーあの漬け物に漬けるときに使うやつ」「ん?ミョウバンか?ってか漬け物に入れたいかあの虫を」「いっ嫌だ」
お約束が失敗に終わった。
話が終わるとまた別々に行動する。
改めてハンミョウを見ると、すごい牙を持っている。
昔と言っても小学校の頃か、カミキリムシを捕まえて、本当に紙が切れるか試したことがあるが、目の前のこいつは人間の腕はおろか、鉄の棒でも噛みきるのではないかと思ってしまうほどだ。
もっとも、Gランクではそこまでの物はいないだろうが、やってみたい。
僕の腕では、これといって検証が難しいので、木刀を差し出す。
一噛み、二噛み、三噛みで木刀は噛みきられた。
噛みきられた木刀の断面はグチャグチャではあるが、普通の人では対処できないんだろうな。
検証はこのくらいで良いか。
僕は、一掃すると次の階へと進む。
「何?あの虫?蟻ではないよね。ハサミ虫みたいに長いけど違うような」「黒と赤のツートンだね」「赤というよりオレンジ寄りだね」なんて、先についていた兄妹が話している。
「んー実物見たことないけど、羽隠しと言われるやつだよ」「ハネカクシ」「鷹にぃスゴーイよく知ってるね」
生物の先生が授業中に身近な毒虫として、見せてくれたにだが2色の色違いのこの虫のことは覚えていた。
正式名称はわからないが、長かった記憶がある。
名前はともかくとして、目の前の虫じゃなくて、魔物が毒を持ってるかは心配だ。
そう思って言おうとしたのだが、もうすでに攻撃の後だった。
結果として、毒は無かった。
しかし、こんなどこにでもいながら、ほとんどの人が見たことないような虫を最初の方に持ってくるとは、ダンジョンも侮れないものだと思う。
次の階へとどんどん上がる。と言ってもここが1階であるからここの階を攻略すればあとは繰り返しである。
目の前にいるのは、相変わらずデカイ虫だ。
緑色の光沢を放つ丸っこい虫。
家の電気に引き寄せられ、網戸に何度もぶつかってくるその虫はカナブンだ。1メートルだけどね。
もう深く考えない。どんどんと攻略を進めていき、2度目のボス戦を挑むことになった。
早速ボス部屋に入る!「あれっ?」違和感を覚えた。
ただ、違和感が何なのか僕には解らず、龍一も何らかの違和感に木刀を構える姿に力が入る。
彩琥もよく分からない違和感に、弓を構えている。
僕も、手裏剣を構えたとき違和感の正体に気付いた。
「「部屋がさっきよりも広い」」彩琥も気付いたようだ。
その瞬間、オゾマシイ程のゴキブリが姿を表した。
ゴキブリの壁、いや巨大な固まりと言うべきか。
実はこれ、ゴキブリの方も動けないのだが。一番したの方なんて潰れてるんじゃないか?
嫌だななんて思ってたら動けなくなった。
その圧に押しきれなくなり最初に動いたのは龍一だ。
龍一が、一振り二振り三振りと木刀を振ると、そこだけポッカリと穴が開いた。
ゴキブリの保たれていたバランスが一気に崩れ、雪崩れ込んでくる。
オゾマシイことこの上ない。
龍一は、自分がゴキブリに埋もれないように必死で木刀を降っているが、崩れたゴキブリは僕達にも襲ってくる。
こうなっては文句を言えることもなくめっちゃ必死に退治した。
足元にゴロゴロと金鉱石が転がってくる。
その数は足元を埋める程転がってくるので、段々足場が悪くなってきた。
足を踏み変え踏み変え倒していくこと、体感時間で10分くらいか、気付けばゴキブリは居なくなり、金鉱石で埋め尽くされていた。
肩で息をする2人を横で見ながら、一気に金鉱石を上へと上げる。
金鉱石が一気に8分の1の量になる。
足場が急に低くなったため、3人とも中に浮いてしまった。
しまった。と思ったときにはすでに重力のもと落ちていく。
肩で息をしていた時に急に落ちることになった2人だが、そこは高レベルなのだろう、足場の悪い金鉱石の上に上手く着ししている。
「やるならやるって言ってくださいよー」と龍一、彩琥も激しく同意中。
僕は、素直に謝り、同意を得て、金、銀、銅に分け、3等分しさらに10キログラムのインゴットにする。
かなりの数のインゴットに目眩を起こしそうだ。
1人当たりのインゴットの数は、金が412500個、銀が337500個、銅が37500個である。
依頼分は十分に整った。よね。
依頼が1人10トンだから、10キログラムのインゴットが1000個だ。
依頼分にお釣りが返ってくる計算であったが、まさか依頼分が端金程度になってしまうとは、恐ろしきダンジョン効果である。




