お店を開く準備3 鷹仁
早朝、目が覚めた僕は、散歩していた。
早朝といっても、太陽はとっくに顔を出していて、空が青く雲が少ない。
今日も暑くなるであろう、気持ちいい朝であった。
何時ものように、神社にお参りに行き、狐うどんをお供えし、ダンジョンを一週すると、畑に水を撒き、商店街を通りしばらく歩いていた。
不動産屋のビルがあるそばに差し掛かった時のことだ。
「「てめぇふざけるな」」という大きな声に続き、ガシャーンとガラスが割れるような大きな音がした。
咄嗟に物陰に隠れた僕は、ゆっくりと音の方に近付き確認する。
状況は酷く、ビルの前の窓ガラスは大きく割れ、そこに男女合わせて8人いた。
8人といっても、どうも4人パーティーが、2パーティーいるようだった。
そして、各パーティーのリーダー的男が怒鳴ってるのだが、内容が同じなのだろう、怒号が重なっていた。
ビルの窓ガラスは大きく割れ、ガラスの破片を被った男の人が1人と、女の人が1人。
どちらも20を越えたくらいに見えた。
リーダー的男が立ちはだかってる姿から見て、突き飛ばしたのではと思う。
その後ろで、吹き飛ばされた人のところに駆け寄ろうとする女の人と、それを不適な笑みで阻止する男の人がいる。
正直嫌な場面だ。
「「ヒーラーの癖に、ポーション無いから回復できない。金出せだ。ふざけるなよ、俺らは命がけで攻撃してるんだよ。それをサポートできねえだと。ふざけるな」」
「「しかし」」
「「しかしも何もねーよ、オメーの金の使い方が悪りーのだろ。それとも何か、俺の戦い方が悪いとでも?あーもうすぐ赤なんだよ。それまでの辛抱なんだよ。わかるだろ」」
確かに、黒いカードから白いカードに、そして赤になっていく仕組みだったはず。
ということは、今僕の前にいるグループ達は、白いカードでGとFのダンジョンを5つずつ攻略したことになる。
Eランクのダンジョンを1つでも攻略すればすでに赤のはずだ。
「「あっ」」男の阻止を振り切り、吹き飛ばされた人の元に駆け寄る女の人。
リーダー各の男は、構わないといった態度で尚も言葉を続けていた。
「「しかし金か、まー俺も金ねーと困るし、そうだこの近くに金儲けの出来るダンジョンがあるじゃないか。あそこいこう」」
「「しかし、あそこは」」リーダー各の男の隣にいた男が声をあげる。
「「あっ知ってるよ。素人潰しのダンジョンと言われてるんだろ。そんなの俺らには通用せんよ。立派なヒーラーがついてるもんな。なっ。だからお前ら、あそこで限度額一杯金借りてこい」」と、後ろを向き指差す。
「あっ」「あっ」ここで、2グループのリーダー各の男同士が顔を見合わせる。
「おい、お前、良いこと言うじゃないか」「お前もな」
「使えねぇ部下のために金儲けしようなんて、普通言えねいぞ」「そうだよな」
「そうだよ」「おい、今度の報酬は、俺らで3割りずつ、こいつとそいつで1割りずつ、そこにいる2人で1割りずつでどうだ」
「どうだって、もしかして一緒に金儲けじゃなかった、攻略してくれるのか」「当たり前だろ仲間だろうが」
「使えねぇ部下のお陰で、素晴らしい仲間を得た」「あー俺らがいれば、怖いものなしよ」
2人は、意気投合したようで、腕を組座り込んでるやつに指をたて、「「じゃー、そういうことで、金借りてこい。なに、直ぐ返済できるだけ稼げるから安心せいってーっチッ」」遠くからパトカーのサイレンが聞こえ近づいてくる。
僕は通報してないから、近所の誰かがしたのだろう。
そのグループは、座り込んでたのを引きずるようにして、早朝の街に消えてしまった。
僕は、ゆっくりと割れた窓に近づくと、加工スキルを使ってみた。
割れたガラスが、次々と集まってきて、逆再生のように直っていく。
向かって右側を直し、左側を直そうと移動した。
ちょうどその頃、緊急走行してきたパトカーが到着。
早朝の助けもあってか、パトカーの着くのが早すぎる。
良いことなんだけどね、割れたガラスの前にいる僕にとって、不都合この上ないタイミングだ。
誰がどう見ても、僕が割ったとしか思えない状況である。
到着したパトカーから、数人の警察官が降りてくると、すぐに囲まれてしまった。
「君、ここで何をしてるんだい?」口調こそ穏やかだが、牽制をしてくる。
僕には、効果はないが普通の高校生なら口パクものだろう。
どうしようか悩んでいると、1人の初老に近い警察官がパトカーから降りてきた。
「待ちなさい。皆車に戻りなさい」「「「「えっしかし」」」」「だったら、そこでおとなしく見ていなさい。私が行こう」そう言って近づいてくると「この前はありがとう」と言って頭を下げてきた。
そう、この警察官は、以前僕がポーションをあげたお巡りさんだ。
だが、そんなことを知らない他の警察官に動揺がはしる。
そんなことはお構いなしと話を続けるのである。
「この前の薬使ちゃってね。お陰で仲間が殉職しないですんだ。犯人の罪を証明しにくくなってしまったが、殉職されるよりはるかにいい。そこで、この前の薬無いだろうか?」
「有ることはあります (腐るほど) 有りますが、このまま渡しても消えてしまいますよ。入れ物がないと・・・」
「そ、そうか。確かに使いきったとき消えてなくなっていったし、使ってないものもいつの間にか無くなっていたから、落としたのかと思っていたのだが、消えてたのか」
「えー普通に持ってると、ちょっと。この前みたいに紙袋とか入れ物があればいいのですが」
「えーと、持ってたりは?」
「残念ながら持ってないですね。あれ、売られてはいますがそこそこいい値段しますし」
「そうか、ちなみにいくらかわかる?」
「1枚一万円だったと記憶してます」
「いっちまんか。妥当か?」
「妥当かと、条件付きではあるが、必要とされているものを入れられ、時間計か向こうですからね。ただ、紙だけあってちょっと保存が厳しいときもありますけどね」
「そうだな、なんとか欲しいのだが、常備品として署に置いといてくれればいいのに」
それは難しいのでは、いや無理かもと思っていると「何の話をしているのでしょう?殉職とか薬・・・まさか」
「多分そのマサカだよ。命拾いしたのはこの子のお陰だ。お礼しときなさい」
すると、後ろにいた警官たちが一斉に敬礼する。「お陰で命拾いしました。ありがとうございます」
僕としては、大量に敵を倒して、その副産物をこそっと分けたにすぎない。そう、お礼を言われるようなことは、してないと思っているので恥ずかしかった。
私は、ここの署に勤めている一警官である。
警察学校を卒業して、配属され早1年半、巡査こと新米警官だ。
今日も制服に着替える。拳銃も所持する事になるが、未だに馴れない。
慣れてはいけないものと、私は思っている。
最近の事だが、変な通報があった。
刃物を振り回しているという通報だ。
指定場所に一番近くを警戒巡回していた私のパトカーに緊急がはしった。
現場に緊急走行するも、そこはいつもと変わらない日常の風景だった。
特に不審なものは見当たらない。
パトカーから降りてなお警戒する。
刃物を振り回している騒ぎは何処にもない。
悪戯なのではと本部に通報を入れようと踵を反す。
その時、私の死角から痛みが走った。
振り向くと中年のおじさんが、私に刃物を突き立ててる。
痛みに耐える私を押し倒し、手を伸ばしてきた。狙うは拳銃のようだ。
私は、犯人から必死に拳銃を守った。
必死に拳銃を取ろうとする犯人と、近づいてくるパトカーの音を聴きながら堪えていると、相方が近づいてきて警棒で犯人を殴打した。
打ち所が悪かったのか良かったのか、1発でKOとなった犯人。
寄り重なる犯人の重さと、腰付近に刺さった刃物の痛さでもがいていると、相方が犯人を私からずらしてくれた。
もう一台のパトカーが到着して、降りてきた人が何かを取り出した。
そして、私は仰向けからうつ伏せにさせられた。
何かを話しているようだが、そんなことはどうでもいいくらい、痛みに耐えていると、突如更なる痛みが走る。刃物を抜かれたのだと瞬時にわかった。
「ばか・・・な」刺さった刃物は皮肉にも止血の役割をしてくれる。
それを抜いたら、血が多く出てしまう。
ありえないと思ったが、その時の痛みで私は、意識を離してしまった。
私が次に目覚めたとき、どこにいたと思う。
病院ではないよ。何処かの野原でもない。
パトカーの中だった。しかも後部座席に寝かされていた。
完全にパニックになった。
腰に刺された傷は、無い。しかし、刺された跡の服と血はそのまんまだ。
そして、パトカーの置かれてる場所は、署の駐車場の指定されてるいつもの場所。
パトカーの窓は、申し訳ない程度に開いているが、扉は開かない。
内側からは開かない構造になっているからだ。
窓を割って出ようか、イヤイヤ絶対始末書もんだろ。
どうしろというのだと思っていると、パトカーの近くを女性警官が通りすぎ、私に気づくと駆け足で署に戻ってしまった。
数分後、勢いよく数人の男性警官がパトカーに向かって走ってくる。
顔は知っているが、全て先輩警官だ。
パトカーを囲むように配置すると一人の警官が勢いよく扉を開けた。
「出ろ」さっきまでパトカーから出たかったのに、今は全く出たくないと心底思ったが、素直に出た。
「署長がお怒りだ。直ぐに署長の所に行くように」もう完全に思考回路が無くなっている。
「何がお怒りだだ。安心しろ。ただ呼び出されてるだけだ」全く安心できない。お怒りじゃないにしても、絶対ヤバイっしょ。
署長室の前につきノックをする。「・・・です。入ります」「やっと来たか、入れ」と言われて扉を開く。
一礼して部屋に入ると、署長1人がいるだけだった。数人はいるかと思ったが。
「今日の事は不問にする。質問は許さん、だが、血の付いたものは此方で処分する。新しい制服と下着類だ。下着はワシのポケットマネーだから遠慮するな。わかったら今日はもう帰っていいから着替えてこい。帰る前に一度ここに寄り血の付いたものは全て置いていくように。いいな」
少なくとも、私の意見は通らないようだ。
更衣室に行き、着替える。
本当に傷がない。刺されたりしてる痕はあるのに傷がない。
私は、血の付いてるものを選別し、私服に着替えた。
署長室に行き、血の付いたものを渡す。
「他に何かあるかね」「あのー1ついいでしょうか。質問ではないのですが」「な、なんだ」「私は前とじボクサーパンツ派なのですが」
この後、怒号がとんできた。
次の日、署の人達に何が起きたか聞いて回ったが、明らかに知ってる顔して「知らぬ、存ぜぬ、分からぬ」と言う。
噂である薬を使ったというのだけわかったが・・・目の前の少年がもたらしたものだと思った、それ以外無いとわかった。
敬礼しながら固まった。だって、理解できないことの方が多かったから。
後日、署長のパンツが前とじボクサーパンツになったのは、誰も知らない事実である。




