小さな岬 3
カンカンカンと音はしないものの、何かをバリアが弾いているのにビックリして振り向くと、矢が飛んできたかと思った。
海の中に入るわけだから、矢が飛んでくるはずもなく、先の尖った魚であった。
駄津である。
数匹が見えない壁に阻まれグルグルしているところを捕まえた。
「なにその魚」リンのバリアにも、刺さるかのごとく勢いでぶつかってきているのに、のほほんと聞いてくる。
聞くよりもスキル使えばと思うのだが、「駄津だよ」「ダーツ」「ほしい、ってダーツって何か知ってるの?」「この魚でしょ」「いっいやいい。ダーツではなく駄津ね」「ダツ」「そーそー」
変なとこで伸ばすから、ダーツしたくなっちゃったじゃないか。
やったことないし、ルールも知らないけど。
「ちょっとだけ深く潜ってみない?」「いーよー」太陽の光が全く通らない暗いとこは嫌だけど、ある程度のとこまで潜りたくなったので、少しずつ階段を降りるような感覚で潜っていった。
海底の近くに、大きな赤い魚を見つけた。
その魚は、いわゆる魚の格好をしている魚だ。
「タイだね」「そうだね、真鯛だね。黒鯛よりデカイか」「大きいね」「距離あるけど捕まえられるか?」「いけるいける」と言い、大きすぎるくらいのバリアを張ると、真鯛の大きさに合わせバリアを小さくし、収納した。
これ以上潜ると暗くなりすぎるので、浮上することにする。
浮上と言っても、泡のように上がれるはずもなく、バリアを階段にして登る。
だいぶ明るくなった頃、目の前をでっかい鯵が通りすぎた。
「でっかいアジだね」と言いながら捕まえてるリンにもう驚かない。
鯵は鯵でも、このデカイ70センチメートル位か、縞鯵である。
「シマアジ」「そう、鯵と同じで頭から尻尾まで一本の鱗の線があるが、大きさが全然違うよね」「そうだね」
暫くすると、魚ではないものが泳いでいた。しかも群れで。
大きなヒレをしていて、足を伸ばして泳いでいる。
足とヒレの間に大きな目があり、こちらを睨んでいるように見えた。
障泥烏賊である。
「アオリイカ。変な名前」変と言われると確かに気になる。
そもそもアオイってナンジャラホイって感じだ。
こんな時は、エンちゃんに聞いてみるのも1つの手だ。
海の中でも投影は可能だった。
「そんなこと聞きたいの?」と言われてしまったが、気になったものは仕方がないのだ。
「障泥とは、馬に着ける馬具の1つで、馬のお腹に巻く泥除けだよ」という。
ちょっと待ってほしい。
ではなにか、馬に乗るようになって、鞍が改良されていくなかで、泥除けが作られ、その泥除けが烏賊の形に似ていたのか、烏賊がこの形に似ていたから、障泥烏賊と名付けたということか。
つけた人、凄いな。ちょっと誉めてない。
そう言えば、烏賊は剣先とか槍とか袖とつけられてる烏賊もいるっけね。ンー
何はともあれ烏賊ゲット。
そう言えばこの烏賊どこかに向かっていたような。
群が移動している後方の方をゲットしたから、先端の方はどこに向かっているのか着いていった。
「あっあれエビかな」「蝦だね」「何か色が優しい」「優しい?んーピンクより薄い感じか」「ピンク?」「あっいや桜色かな」「桜?あーあの屋敷の外に咲いてる花だっけ」「そうだよ」「で、あのエビは何て名前なの」「たぶん桜蝦だね」「サクラエビかー」
桜蝦は、夜のうちに海面近くに上がってきて、また深く潜ってしまうと聞いてたけど、一部が残っていたのかな。
蝦は、魚や烏賊などには好物だからね。
ほら、下からなにか来たよ。細長い魚が上がってきたよ。
「太刀魚だね」「タチウオかーわからないけど美味しいの」「白身で美味しいよ」「凄い口してるね」「牙多いね」
刀を研ぎ澄ましたような色をして、形もにているところから、太刀を名前に授かった魚だ。斬れないけどね。
太刀魚を捕まえたが、残りが海に潜っていくので、ついつい後を着けてしまったが、暗くなって見逃してしまった。
暗いとはいえ、うっすらと見える状態のなか、なにかが蠢いているので、近づいて見ると、蟹がいた。脚の長い。
リンが、ツンツンしているものだから、蟹も負けじとハサミで反撃を試みるも、バリアに弾かれていた。
その内に、リンが飽きたのか捕まえて持ってきた。
「はい」と言って渡される。
「高脚蟹だね」
「タカアシガニ、美味しいの?」「美味しいよ。食べ応えもあるしね」「楽しみ」「そうだね。そろそろ進路を変えようか」「いいよ」
ということで、進路を元の位置に戻るように変えた。
当初、内海と外海の口の真ん中から戻る予定だったが、行きすぎたのか磯に来てしまった。
岩がごつごつとしている所に、色々な生物がいる。
まず目についたのが貝である。
くるくると巻いた貝殻が特徴の栄螺と、そのそばに岩に引っ付いてる鮑だ。
栄螺も鮑も岩に同化していて最初はわからなかったが、近くによったときに栄螺は直ぐにわかった。
「こんなの食べれるの?」「あれ?貝は食ったことない?」「無いよ。ってかこんな固いの食べれるの?」「ん。殻をとって中身を食べるんだよ」
と言い、殻を壊そうと岩肌にのってる手のひらサイズの石を取ろうとした。
しかし、これがなかなか取れない。
よく見ると貝殻であった。
貝殻をさらに見てみたら鮑だとわかったので力ずくで剥ぎ取ってみた。
「こっちの尖ってるのがサザエで、こっちの平べったいのがアワビだね」
栄螺は食べたことあるけど、鮑はないから、それに高級食材と聞いているから楽しみだと思いながら収納する。
上を見ると、縞のある魚が泳いでいるので捕まえてみた。
「石鯛だね」「イシダイ」「うん。これも大きいね」
捕まえたのは70センチくらいのだ。
「こっちに戻るよ」と言って、磯とは逆の方向を指す。
暫く砂地を歩いていると、尾ひれの丸い白っぽい魚が現れた。
「これは?」捕まえて見せてくる。
「これは、白久智だね。石持とも言われてる魚だ」
「シログチんっとイシモチどっち?」「両方だよ」「2つも名前あるんだね。お前凄い」
地域により違う名前で呼ばれるものは多数あるが、伏せておこう。
単純にめんどくさくなると思ったからなのだが。
石持を捕まえたあと、海面の方に上がってきた。
もう少しで海面というときに、魚の群れが突っ込んできた。
「何かたくさん来たね、今度は横に縞だあるよ。ちょっと薄いけど」
「そうだね、鰹だね」「カツオ」「そうだよ」
鮪以上に喜んだよ。
鮪も鰹も、赤身の刺身の代表みたいに言われているが、癖のない鮪の方が人気がある。
しかし、僕はこの癖のある鰹の方が好きだ。
鰹を上手くいったら、鰹節に出来るかもとも思うとウズウズしてしまう。
楽しみが増えたと、心の中で思っていたのだが、顔に滲み出てたようで、リンが心配そうな顔で覗いてきた。
リンの顔をみて、恥ずかしくなり海底に潜っていった。
「待ってよー」と後ろで言ってたような気もするが。
海底につくとすぐに魚の群れが現れた。
灰色、いや灰褐色という感じか、目が大きい魚だ。
「これは?」後ろの方にいたと思っていたリンが、魚を捕まえて僕の隣にいた。
「目張だね」「メバル美味しそうだね」
確かに、魚らしい形した魚って美味しそうに見えるよね。
目張を捕まえて、そのまま海底を進んでいく。
「あ、変なイカがいる」とリンが言うのでみてみるとそこには烏賊ではないものがいた。
蛸である。
「タコーってあれ食べるの?食べれるの?」「食べれるよ。これはこれで美味しいんだって」と言っても見た目で拒否られるのもわかる気がする。
そう言えば、烏賊はそれほど嫌ってる様子はなかったのに、タコがダメな理由は?僕にはわかりそうになかったので、保留という形をとり収納した。
少し前に進むと、リンが「ウナギがいた」という。
確かに海の中に鰻がいてもおかしくはないのだが、この鰻、黄色っぽいいや茶色だな。
「これは鰻じゃなくて穴子だ」「アナゴ」「そう、美味しいよ」「美味しいんだ」
内海の真ん中くらいまで来たと思う。
海底を進んでいくなかで、下り坂だったのだが、ここから平坦な場所に出た。
そしてわずかに上り坂に差し掛かった時に目の前に出てきたのが若布である。
「何か草が生え始めた」「海で育つ草を海藻って言うんだよ。そしてこれは若布だ」「ワカメ」「食べれるよ」「じゃ回収する」
基本動かない若布は、そのままバリアを張らずに回収できる。
数本の若布が消え、そこに隠れてた海老が姿を表した。
大きな蝦は伊勢海老、そして若布の根っこ付近で寝ていたと思われる車海老だ。
「イセエビとクルマエビだね」「そう。どっちも海老を代表する美味しい海老だよ」「ふーんねー」「ん?」「このエビはイセエビといいクルマエビなの?サクラエビは桜という花の色なんでしょ。だったらイセってなにクルマってなに?」という質問だ。
こういう質問って答えづらいよね。
リンは桜という木があり、桜の花びらが散る様を見ているから、桜蝦は簡単に説明がついた。
しかし、伊勢という地名を知らず、車何て想像もつかないものをどう説明しろと言うのだ。
まして、僕はこの海老達の名前の由来は知らない。
障泥烏賊のような感じだったらよけいだ。何て思ってたら・・・。
「わかったー」と言う声が。スキルを使ったようだ。
スキル万能過ぎる。
「僕もよく名前の由来は知らないんだよね。よかったら教えてくれる?」
「由来ってあーウンウンいいよー」
そういって教えてくれた。リンによると、このようになる。
伊勢海老は、関西の街では伊勢方面から送られてくる海老だから伊勢海老、関東の街では、鎌倉地方から送られてくる海老だから鎌倉海老と呼ばれていたそうだ。伊勢地方にある志摩と言う地名の所でよく採れるのか、地元では志摩海老と呼んでるそうだ。
また、威勢のいい海老ということや、高級の海老で祝いの席に多く出てくることから、メデタイ事を重ねて伊勢神宮から拝借して、伊勢海老と名付けたなど言われているが、よくわからんと言う結末だった。
一方車海老はというと車海老の黒い縞模様があり車海老を丸めると、車のタイヤの模様と一致するらしく、車海老と名付けられたとか。
これはあれだね。いっぽ間違えば車輪海老と名付けられてたかも。ちょっと思った。
若布を掻き分け進んでいくと、赤い海藻が生えていたので、回収する。
赤い草は天草で、心太などの材料だ。
その天草のそばで見つけたのが雲丹だ。
夢中で探し採っているとリンが近付いてきて、「なに採ってるの」と聞くので、「雲丹だよ」と勢いよくリンの前に差し出した。
トゲトゲのそれを見たリンは首をかしげながら美味しいのかと聞いてくる。
「美味しい、いや、美味だ」うん。言い換えた。
僕は小学生の頃を思い出していた。
10歳の頃だったと思う。とある海岸沿いをお父さんの運転する車で移動していたとき、ポツリと一軒の寿司屋があった。
お昼時であり、田舎だったと思う。周りに食堂などなくそこのお寿司屋に入った。
一通り食べたあと、「雲丹を食べたい」とねだった。
当時、ゲームの話だが、お寿司が出てくるゲームがあったのだが、雲丹が一番ポイントが高かった記憶がある。
鮪の大トロの上をいくポイントだ。さぞ美味しいだろうと思っていた。
ただ、お父さんの顔は一瞬にして嫌そうな顔をした。
味の問題か、値段の問題か、他に何かあるのか今となってはわからないが。
「一個だけだぞ」と言われたので注文した。
出てきたのは、パリッとした海苔に囲まれた軍艦雲丹だ。ツヤっとした雲丹が輝いてるようだった。
ジッっと眺めてから、一気に口に放り込んだ。
パリッと海苔が弾け続けて雲丹が潰れ始める。
次の瞬間雲丹の濃厚な旨味と、わずかな甘味が口一杯に広がった。
この世の贅沢という名の幸せを、寿司一貫に満足させられた瞬間だった。
数年後、グルグルしている食べ物屋で、シワシワ海苔に巻かれたグチャっとした雲丹が乗っかってる物を頬張り、吐き出しそうになるのを抑え、噛まずに飲み込んだのは、嫌な記録だ。
雲丹の近くに螺と言う貝もいた。
「バイっていうの」「そうだよ」
螺貝を採っていると、急に辺りが暗くなり始めた。
夕暮れ時だ。
水面い上がると、細い小さい魚が群れをなして移動してきた。
「細い魚がいるね。ダーツかな」「駄津じゃないよ細魚だよ」「サヨリ
」「そーこれもとっとこう」
海面に顔を出し、ダンジョンの位置を確認し近くまでよると、夜になるまでそこで待機した。
雲丹の下りは実話です。
昭和の終わりから平成の始めごろの話です。
ゲームは、敵を雪玉にして蹴飛ばすというものです。
記憶違いがあるかもしれませんが。




