農場作業してます
目が覚めた。布団で寝ることになれてた僕が、板の上に直接寝るのは、起きたとき体が痛くなりそうだが、今の僕には無効のようだ。
ライトアップされてる楓は、時折葉っぱを落としている。
どのくらい寝たのか、空は真っ黒で、夜か夜中か、あるいは夜明け前かわからない。
食べ終わった後の、お鍋などを回収して、調理場に移動する。
僕は、キョロキョロと回りを見る。
どこで洗おうかと迷ったからだ。
解体場か調理場かあるいはと思いながら見ていると変なボックスがあった。
さっきまでなかった気がする。気付いていなかったのかわからない。
ボックスをよく見ると、回収ボックスと明記され、簡易説明が書かれていた。
内容は、汚した食器や調理器具類、調理した後のごみや解体後のごみなど一括して入れられるもので、食器類は元の場所に綺麗に戻り、他は分別して飼料や肥料等になるとの事だ。便利すぎるが頼っちゃうことにした。
食べ終わった食器類を回収ボックスに入れると、綺麗になって元の場所に戻る。
汚れや食べ残しは、肥料や飼料に自動変換しているのを確認した。
そしてリンが、錬金術を駆使しながら、調理していたところがすごいことになっていた。
まず最初に目についたのが、瓜坊の頭。
嬉しくは無いだろうが、悲しそうにこちらを見ているのは気のせいだろうか。
すいた骨のついた肉や内臓、野菜のくずなんかを回収ボックスにぶちこんだ。
糠床と味噌は、別にとっておく。
もう他に無いかと見渡すと、白い塊があった。
塊が、と言っても指でほぐれるにだけれど。見覚えはあるが思い出せない。
じっと見ていると、匂いが漂ってきた。お酒、日本酒の匂いに思い出した。
これは、酒粕というものだ。
リンは錬金術で日本酒を作っていたのは知ってるが、その副産物の酒粕が出てくるとは思わなかった。
あまり深く考えても、仕方ない。
酒粕を見ていたら、思い出した。
よく、寒い時気になるとお父さんが決まって甘酒を作っていた事をだ。
そして、こんなことを言っていたことも思い出した。
「甘酒には、大きくわけて2種類ある。米麹と酒粕だ。お父さんは断然酒粕派だ」
と言っているのを思い出す。
作り方はいたってシンプルだ。
酒粕を水又はお湯で溶かし、好みの味に砂糖や塩で整える。
砂糖を使うと甘ったるいと言って、お父さんはハチミツを入れていたと思ったのだけれど。
冬は温かい甘酒を、夏は冷たい甘酒と市販されていたような記憶もある。
買ったことがないので、なんとも言えないが。
僕は、米麹の甘酒を知らない事になる。
と言うわけで、甘酒を作ることにした。
鍋に水を入れ、酒粕を入れる。後は弱火をかけながら、ひたすら木ベラで少しずつ酒粕を溶いていく。
網でコスという方法もあるが、ひたすら溶いていく方がいいと言う謎理論が存在するようだ。
そんなこんなで、塊を見つけては、木ベラで潰すように溶き続けた。
「おはよう」リンが起きてきた。「寒くて起きちゃった。何作ってるの?」「ちょっとね思いつき。ところでリン。麦芽糖って作れる?」「バクガトウ?」「そう、それ」「って何?」「麦芽糖はね、大麦で作るんだよ、甘いんだよ」「へーちょっと見てみる。あーあるね麦芽糖、えーとブドウ糖って言うのもあるけど」「ブドウ糖か。その手もあったっけね」
そう、砂糖の代わりを探していた。
ハチミツを使うとしても、ハチミツはなく砂糖もない。
変わるものを探していたが、ブドウ糖は気がつかなかった。
代わりに麦芽糖を思い付いたのだが、麦芽糖は麦が発芽したときの状態で糖を集めるというもの。
加工スキルを駆使しても、流石にそこまでできないが、ブドウ糖なら出来たかなと今思った。
「はい、麦芽糖」と渡された麦芽糖を鍋に入れ、満遍なく掻き回すと、塩で整える。
味見をしてみると、仄かに甘い酒粕の甘酒の完成だ。
湯呑みに移し、「熱いから気を付けてね」と言い渡す。
両手で受け取り、湯飲みの中を覗きこむリン。そのうち湯呑みが熱くなってきたのか、台に置きフーフーと冷ましていた。
僕は、湯呑みをさらに二つ用意して、甘酒を注ぎ入れ、氷を持ってきて湯呑みを冷やす。
氷はみるみる溶けていくので、順次取り替えながら冷やしていく。
「甘い、美味しいよー」と、リンが感激しながら一生懸命冷ましながら飲んでいる。気に入ったようで何よりだ。
「こっちも飲んでみる?こっちは冷たく冷やしたのだよ」
「冷たい?冷やす?うっうん。飲んでみる。ゴクッゴク飲みやすくて美味しいよー」こっちも気に入ってくれたようだ。
僕も、冷たい甘酒に喉を潤わせていた。
「これどうしよう」リンがそう言って出してきたのが、植物の破片だ。
「何処から出てきたの?」「えっと収納」「じゃなくてそれは何かな?」「えっとね、麦芽糖を作ったときに同時に出てきた」
酒粕と同じ原理だと思う。
麦芽糖を作ったときの残りカス、ごみと言ってもいいのかな。
回収ボックスに入れれば良いと言っといた。
リンもこんなのあったかと思っているのか、首をかしげながら放り込んでいた。
片付けも終わり飲み物も用意できた。
「リン、もう少し寝てる?寝るならお風呂に入って布団で・・・」「いい、今から何かやるの?」
「うん。牧場の画面チェックしとこうと思って」「画面・・・ちぇーく」「うーんちぇーくじゃなくてチェックね」「チャック私もする」「チェック」「そーチェック」おー言えたようになった。
僕はお酒を、もとい甘酒を手に画面に向かい座り込む。
リンも隣に座り込んだ。
画面をチェックすると全ての物が採取可能だった。
一番遅く回収可能となるであろう柿も回収できるようだ。
桃栗3年柿8年って言うぐらいだからね。
あれ?ここの農場、8年はたったってことになる?のかな。うん。深く考えない。
先ずは、植物系を採取する。
続けて採取できるものは、その場に残るが、残らないものもある。
果物等は木が残り、また時間がたてば実が付くが、草系は、残るものもあるけど、基本的に全部抜いてしまうので、残らないと言うものだ。
なので、種にして植え替えた。
植え替えると、そこに各時間が表示されている。
時間が来ればまた収穫できるというものだ。
ただちょっと、枝豆が欲しかったが、今回は全部大豆だったり、筍のまま回収可能だったりとばらつきがある。
欲しい時期に回収できるのか、今後ゆっくり見ていこうと思う。
取り合えず今は、収穫できることが重要なのだ。
収穫できたものを手にしながら、確認し収納していった。
さて、次は動物系だ。
こちらは、雄雌を選び交尾させなければならない。
猪は雄雌1頭ずついるので、選択の余地はない。
ウサギも同様だ。
雄のいるところをタッチすると画面が拡大されたので、さらに雄をタッチすると光だし、雌も光だした。
雌をタッチすると、お互いが近づいてきて合体した。
しばらくすると、お互いが離れて雌にタイムが設置された。
鹿は、雄1頭に対し雌が2頭だ。
雄をタッチすると、光だし雌2頭も光だすが、雌2頭の光の強さが違う。
一見すると光の強いものを選ぶといいのだろうが、もしかしたら弱い光の方を選んだ方がよかったりするのか、疑問である。
無難だと思うので、光の強い方を撰んでおいた。
光の弱い方は、後日ゆっくりと調べてみよう。
改良やその他の事は後日ゆっくりやろうと思う。
水性生物の方も一通り光の強い順に選んでいった。
最後に鰻のカップルを選ぶ。
取り合えず今日はここまでかな。そう思って残っている甘酒を飲みながら椅子にもたれた。
ここ数日テレビ画面を見ていない僕にとって、このゲームのような画面はちょっと疲労を覚える感覚があった。
「あっ」今まで黙っていたリンが声をあげる。
見ると、画面に光った点が移動しているものだった。
川を下っている点があるのだ。
正体は鰻である。
鰻は確かに川を下り、海に出て産卵する生き物である。
選ばれた後、川を下るのは良いのだが、2つの点があまりにも近いというか、一緒に移動しているように見える。
普通はありえない。
別々に移動していくものだと思うが、あまり興味もなかったので、スルーすることにした。
画面からちょっと離れると、リンがすかさず入り込んできて、画面をタッチする。
好きにやらせとけばいいかなと思いつつ、画面を見ている。
全体図から、今鰻が移動している中流の区域に拡大された。
さらにリンが画面をタッチすると、地図が拡大される。
鰻はどんどん移動するので、画面から抜けてしまわないように何回か画面タッチしていた。
すると、最大限まで地図が拡大されたらしくそれ以上拡大されなくなった。
次のタッチの時に、画面に変化が起きた。
映像が地図からリアルに変わったのだ。
衛生写真の地図のようになったのだ。
しかし、衛生写真のように動かない物ではなく、リアル映像を動いている鰻と流れている川の映像が写り出されている。
ただ、範囲が狭いので、すぐに鰻が移動してしまう。
すかさずリンが画面タッチすると、今度は鰻を真っ正面から写し出す映像になった。
これには僕も釘付けになった。
時折、鰻の側を魚影がはしる。
色合いから鮎であろう。
しばらく見ていると、回りの水の動きが遅くなってきた。
中流から下流に移動したと思われる。
さらに海に出てしばらく移動し、産卵が始まった。
甘酒は、米麹ですか?酒粕ですか?
私は、両方飲みますが、酒粕の方が好みです。




