初川体験
起きた。
周りを見渡すと、明るい日差しが差し込んできた。
イグサの匂いが静かに漂っていた。
隣にいるリンは、まだ夢の中のようだ。
時々、見せる笑顔からいい夢を見ていると思うと、起こすのは忍びない。
僕はソッと起き上がると静かに部屋を出た。
厨房でお茶を入れ、おにぎり弁当で朝食をとろうとしていたら、リンが入ってきた。
「おはよう」「おはよう」
リンにも、同じ物を用意して朝食となった。
朝食をとったあと、一風呂あびる。
お湯が変わって、単純泉だった。
「今日は次のダンジョンを攻略したいけどいいかな」
「いいよ、次はどんな敵が出てきて、何がとれるかな?」
そうだなと思う、そろそろエンちゃんの存在を教えてもいいのかなと思う。
どうせなら、投影機見たいにできたら面白そうと思いながら壁に向けて映像を映してみた。
出来た。
驚いてるリンをよそに、聞いてみた。
「この辺にダンジョンある?」
『ないよ、だいぶ離れているよ』
そうなのかと思う。
離れていると言ってもどのくらいかわからない。
そうだと思い、ダメ元で聞いてみた。
「地図に出せる?」
『いいよ』そういって出してきたのが、日本地図。
そこに、あちこちに点在するGのついた箇所があった。
そう言えば、全体で見るのがはじめてだ。
なぜか、当時日本ではない北海道や沖縄まで日本扱いにされている。
そこはまだいい。
問題は、Gランクの場所が密着しているところと、バラけている所があるのだ。
全体像も大事だが、今攻略中のダンジョンは、バラけているタイプのようだ。
半島をぐるりと囲うようにだ。
『どのダンジョンが、何出すか教えてもらえたりする?』
『駄目』駄目でした。
「リン、どっちから回ろうか」
「・・・」
「リン?」
「・・・」
「おーいリン?」顔の前で手をヒラヒラ振ってみる。
ハッと顔をあげて、エンちゃんの方を指差して、「あれは何?誰?」と聞いてきた。
「あれは、投影機の映像、彼女はエンちゃん」
『はじめまして、私はエンよ』
「は、はじめまして。私はリンです。そ、それ何ですか?」
『それって?・・・これかな』そう言って着物の裾を伸ばし指を指す。
激しく首を縦に降る。
『えっと、着たいのかな?』
「ぜひ」
着物、この時代では少し早く、かといって、僕が育った時代では馴染みの薄くなった服である。
良いのかなと思っていたら、女の子二人盛り上がっていた。
足袋がどうこう、肌着がウンチャラ、襦袢 (着物の下着)がウンタラ、着物はこうで、帯がどうとか、紐がこんな感じと。
柄がこんな感じで、色は着色料が、素材は、布と絹で、・・・大変そうだなと思ってたら、リンがキラキラした目で見てきた。
おねだりをしてくる目だ。
狙いはわかっている、布と絹だろって、絹無いけど作るの?。
「作るのだったら、僕に厚綿足袋作って」そう言って多目に木綿布と麻布を渡した。
「じゃ私、出るね」そう言うと風呂から出て、何かを取り出した。
Mpを回復するMポーションといわれるやつだ。
肩幅に足を開き、腰に手をあて、飲み干す姿は、まさに銭湯上がりの親父そのものだった。
聞こうと思っていた質問そっちのけで、どっか行ってしまったリン。
どっちでもよかったので、まーいいかと思う。
僕も長湯をしたのでそろそろ出ようと思ったその時『まさか、出るの?』と言われた。
あわてて風呂に入り直す。
『いいけどね。フッ』そして、画面から消えていった。
画面を消し、一息入れて、風呂から上がる。
体を拭きながら、脱衣所の隅に置いてある冷蔵庫を見ながら、牛乳欲しいかも、と思った。
藺草の間に行くと、リンは居なかった。
部屋を順番に見ていくと、檜の間にリンが居た。
「ここに居たんだ。どう出来た?」
「うん。はい足袋」
錬金術恐るべし。
この短時間に全て作り終えて着付けまで終わっていた。
「どう、可愛い」
「おー似合ってる。可愛いね」
顔を真っ赤にして、照れ臭そうにしていた。
しかも、弱冠地味に赤っぽいものや黄色いぽい感じだが染色もできている。
染色はどうしたのかと聞いたら、セージやカモミール、お茶や紅茶などを使ったとの事だった。
器用すぎる、いやわかっていたが、錬金術便利すぎだ。
「そろそろ出掛けるよ。次のダンジョンにいこう」
「うん。いいよ」
外に出る出入り口を繋げるとそのまま外に出た。
といっても、そこはダンジョン内であるので、そこからダンジョンを通りすぎ外に出た。
辰の刻あたりだろうか、雲が厚くて今一わからない。
ステータス画面から、ダンジョンの位置を把握する。
真っ直ぐ山の方に向けて行くと、ダンジョンにたどり着く。
半島の付け根の真ん中辺りにそのダンジョンは存在する。
ちょっとした峠越だ。
いや、日本地図で見るからチョッとしたなんて言ってるけど、実際は結構な道だろう。
と言うか、道を選ぶなら一度集落に出て行かなければならないが、今のリンと僕なら道がなくても平気だ。
足袋もあるし。
足袋が度々出てくるが、足袋って何だと聞かれそうなので答えておこう。
簡単に言うと、靴下の頑丈バージョンだ。親指だけ他の指と離れて作られてるのだ。靴と靴下の合の子みたいなイメージを持っているかもしれない。
因にだけど、足袋は本来かかとの上辺りを金具でとめるのだが、金具が手に入らなかったので紐で対応しているが、僕が紐なら小さい帯び風でとめようと提案した。
帯び風にすれば、コルシェットのように、足首を固定し保護することも出来る。
そんなものだから、安心して山に入っていける。
ちょっと進めば、大きな岩に阻まれたり、木の根っこに足をとられたりする。
そんな障害物などものともせず、進んでいった。
時期は夏の終わりから秋にかけての時期なので、まだまだ蒸し暑い。
草たちは、成長仕切っているので、背が高く進む先が見通せないが、構わず進んでいくと、川があった。
川といっても、なんの整備もされてない、ごつごつした岩の間を縫うように水が流れている川だ。
川は、深くなくほとんど浅瀬であるが、岩の下は水で削られた所があり、それなりに深い。
魚も多くいる。
「ここはなんで水が流れているの」
「川だからかな」
「か・・・わ、川、川なんだこれがねー」
どうやらリンにとって初体験の川であった。
「遊んできていい?」
「いいよー。でも、その格好で?」
「えっそうだなー動きやすそうなやつの方がいいかも」
そう言いながら、既にTシャツと短パンに着替え終わっていた。
服装は、絹と木綿で出来るものなら、なんでもありだなと思う。
川で遊ぶリンを横目に僕はゆっくりと腰を下ろして、川の流れを見ていた。
少し茶色気味の魚が群れをなして泳いでいる。
ハヤというやつだろうか、釣りはしたことないし、魚など、図鑑くらいかちょっとテレビで見たことあるくらいである。
そんなことを思っていると、リンが向こうから手になにかもってやって来た。
手には、エビがいた。
エビは、爪いや手というか腕が長かった。
「腕長エビ?」
「手長エビ、焼くと美味しいらしい」
僕は思う、手長エビ。聞いたことくらいはある名前だが、見るのははじめてであった。
焼くといっても、ここではどうしようもないので、いったん家に戻るかと聞いたら、ここでいいという。
どうするのかと思ったら、少し大きめの石を皿状に蓋付で加工し始めた。
それを安定するところに置くと、魔法の炎で熱し始める。
火の加減をしながら、熱した石皿にここの川に居たであろう、手長エビ、沢蟹、アブラハヤを錬金術で切り身にして投入すると蓋をして蒸し焼きにした。
見事蒸し上がったので、軽く塩を降る。
いざ実食。
アブラハヤという魚は、10cmほどで少し苦味という癖があるが、白身で美味しかった。
沢蟹も、殻ごと食べれた。
何となくだが、この2つは、唐揚げで食べるとより美味しくなりそうだと思う。
そして、手長エビだ。
丁寧に皮を剥き、塩を付けて一口でいく。
エビ特有のプリっとした食感と旨味が口に広がる。
今日一番の収穫かもしれない、まだ昼だけど。
手長エビを堪能した僕達は、次のダンジョンに向けて、出発するのであった。
リンに布を渡すところですが、絹が出てきていないことに気付き、少し変えました。
訂正とお詫びします。




