ハーブまみれ 鷹仁
広場の見える位置で止まり、確認するかのように覗く。
そこには、黒白の大きな兎がいた。
今度は兎だなと思っていると、彩琥が一歩前に出て「私からいきます」と言い弓を構える。
僕は彩琥の後ろに立ち、何となく見ていた。
紗綾さんが彩琥の左にいて、龍一は右側にいる。
彩琥の放つ弓矢は、真っ直ぐに兎の方に飛んでいき、3匹同時に貫いた。
直ぐ様、次の弓を解き放つ弓矢の先で1つの陰が天井に向けて跳んだ。
のんびりと事を構えていた僕は、一歩対応が遅れてしまうが、上にジャンプしただけの兎に警戒すらしていなかった。
彩琥は、攻撃を外したのではなく避けられたことに動揺し、一歩下がる。
すかさず、十手を構える紗綾さんと、柄に手を置く龍一。
天井まで跳んだ兎は、急に向きを変えてこちらに、つまり彩琥に向けて攻撃をしてきた。
しかも2匹同時にだ。
「あれ?2匹?1匹では?」
そんなのんびりした僕の疑問など、どうでもいいとばかりに声を上げる。
「私は前、龍一は後ろ」
紗綾さんは、右上から叩き込む。
龍一は、左下から斬り上げる。
地面に当たりチリになる兎と、ホームラン状態でチリになる兎がいた。
僕が見た1つの陰が天井に上がったように見えたのは、2匹同時に上がったため1匹に見えたのであった。
もっとも、2匹だろうが、1匹だろうが彩琥に敵の攻撃が当たる前にワンパンで沈める位はできたのだが・・・。
今は、僕は正座して紗綾さんからの話を聞いている。
いや、話ではない。一方的な説教だ。
何故、一方的な説教かというと、大体内容はこんな感じだ。
1.龍一や彩琥を危険な目に遭わすな。
嫌々嫌、ゆとりですか?ゆとりですよね。ダンジョンなんて危険以外の何者でもない。
あっでも、相手は小学生だったと、反省。と言っても僕は高校生なのだが。
2.傷や怪我をさせないように。
させるなと言われてもしちゃう時はするよね。
回復薬もあるしいいんじゃねい。えっダメ?厳しいですデス。
3.ダンジョン攻略もっと楽にならないか。
いや、だからこうして攻略中ですよ。
レベルが上がれば、攻略楽でしょ。
えっ、ダンジョンランクが上がると進めなくなり困る。
その話されても、困る。説教の途中なの。スミマセン。
4.最近、買いたいもの多くて、お金なくて。
うんうん。少しわかる気がする。お金は使い始めると止まらないよね。
僕も、お金が手にはいるようになったらお店とか欲しいなんて思ってるし、まーごくごく普通の高校生男子だし、まだまだ物欲にはほど遠いような。
なに、物欲は正義。何の話?
5.上司のオナラが臭い。
何と、贅沢病の副産物ですか。色々な要素が含まれているのなら、えっ偏食だって。草食んな訳あるかい。肉食だよ。臭いが単調でウワーみたいな感じだ。
わからない。じゃ今度嗅がせてってどうやって?
デモデモ、薄めれば或いは香水のようにいい匂いになる様な気がする感じに思える感覚がある覚えがするのだがどうだろうだって?
曖昧な言葉を並べても無理だから。
と言うかこれ、関係ないよね。僕にも龍一にも彩琥にも。
最初はウンウンと頷いていた龍一と彩琥だが、途中から飽きたのか2人でおしゃべりしてるし、説教の内容が愚痴になってるしで、結局紗綾さん自信の評価を自分で下げるのであった。
グダグダ説教を終わりにしてもらって、ダンジョン再開だ。
と言ってもこの兎、Gクラスの魔物にしてはちょっと強い。
僕が知る限りでは、と言っても日は浅いのだがGクラスではトップクラスなのだ。
なので最初は皆でと思ったのだが、紗綾さんが1人でいいと言うので、僕と龍一と彩琥の3人で攻略を始めた。
僕は後ろで、龍一と彩琥の動きを見ていたのだが、この2人やはり兄弟なのだ。
戦いという、非日常の出来事に不馴れさは見受けられるものの、お互いの動きや考え方がわかるのか、何か上手い連携がとれている。
一人っ子の僕には、理解しづらい一面ではあるがこの2人なら問題なく兎を倒せるだろうと思い声をかける。
「2人で何とかなるみたいだから、僕は別行動するよ。袋の中身が一杯になったら来てね」
「「はーい」」
手裏剣を手の内に収めながら広場に出ると、すかさず兎を攻撃をしてアイテムを得る。
持ち物を確認すると、カモミールとセージと出た。
日本人ならあまり目に入らないハーブの一種である。
部屋に入り一暴れしていると、紗綾さんと彩琥がきた。
袋一杯のハーブを収納して加工して分配する。
「龍一は?」
「おっ、兄ちゃんは1人でやってくるって」
「そうか、彩琥も1人で出来そうか?」
「う、うん。出来るよ」
「このチート能力があれば出来るよね。ホント便利」
「確かに、しかもここは少ない敵の広場か多い敵の部屋の二通りしかないから、部屋を1人で攻略できるのは美味しい」
「とは言え、このハーブは使い道があるかな?」
「まーあるーかな」
「もっと集める?」
「そこまでじゃないよ」
「じゃ龍一を待って次行く?」
「いくら疲れないからといって、休憩無いのも厳しい。龍一がきたら安全地帯で休憩しよう」
「あーいいですね。先行っててください。龍一をつれて僕も行きますから」
僕は龍一の所に行く。
「どう?調子は?」
「良いですね。あっあの」
「ん?」
「父さんと母さんを助けてくれて、本当にありがとうございます」
「きっ気にするな。僕もこんなことになるとは思ってもみなかったし」
「しかも、こんなところがあるなんて知りませんでした」
「僕だって知らなかったよ。知ったのは最近なんだけどね」
「えっだってすごい強いし」
「まーあれだ。死・・・んーチートみたいな・・・んー」
「あっあの。これ」
ハーブの詰まった袋を差し出された。
言葉の詰まった僕に気を使ってくれた様だ。
「取り合えず、休憩しよう。どうも、この能力使うと疲れ知らずで動けちゃうからな」
「はい、確かにすごいです」
「こっちだ、安全地帯に行こう」
「そういうものまで存在するんですね」
「あー」
安全地帯に行くと、2人とものんびりしゃがんでいたので僕たちもしゃがんだ。
蕎麦とうどんを聞いたところ、龍一と彩琥は蕎麦が欲しいそうで、僕と紗綾さんはうどんを食べることにした。
安定した美味しい味を出しているが、固まっている人もいる。
「どうした?食べないのか?」
「こ、これ何ですか?」
「蕎麦、たぬきそば」
「それは、見ればわかります。じゃなくてどうして」
「どうしてって、蕎麦がいいって言ったじゃん」
「言いましたけど・・・食べてもいいの?」
「良いよ」
「て言うか、食べれます?」
「あー」
「って、これ何ですか?」
「だから、蕎麦。た・ぬ・き・そ・ば」
彩琥と紗綾さんの押し問答が面白いかどうかはおいといて、続いていた。
龍一も、食べたくてウズウズしながら固まっている。
まー無理もないと思う。
仮に、この器が大根で出来ていたとしても、不信感抜群であろう。
「紗綾さん、取り合えず落ち着いて3回深呼吸してください。彩琥も」
何故、3回かと言うと、人間6秒経つと落ち着きを取り戻せるらしい。
「それは、アイテムだ。別のダンジョンの最終ボスが落としたアイテムで、味付けも関東風になってるから美味しいぞ。しかも、品質も特上にしてあるからな、なおさらだ」
龍一が一口含むと、声が漏れる。
「上手い」
彩琥も恐る恐る一口含むと、同時に箸が止まらなくなったようだ。
それをみて、僕たちも笑顔になった。
「それを食べ終わったら次の階へ行くよ」
「「うん」」
蕎麦の手繰る音が静かに響いていた。
兎を匹と羽で表す方法がありますが、ここでは匹を使っています。
蕎麦の食べ方の表現として、手繰るを使用しています。すするでも良いんですけどね。ナントナク。
ここで、要らない屁理屈豆知識
スパゲティーを食べるとき、すすりたい人がいます。
正直者恥ずかしいです。
そこで、箸を店員に頼んでみてください。
割り箸位なら用意してくれると思います。
箸で麺を食べるなら、すすれます。
ただ、周りの目線や音の問題、飛び散るソースの行方など、自己責任でお願いします。




