リンと薬ダンジョン3階
「もういいよ」と言う僕の言葉に顔をムクッと出すと起き上がるリン。
「ビックリしたー」
「油断しちゃった?」
頷くリンの頭を撫でながらいうと「大丈夫」と言ってきた。
実は僕も結構ビックリしている。
兎の動きではない。
魔物なのでどんな動きをすると決まっている訳ではないが、天井からの攻撃とかちょっとビックリした。
難なく倒せたのは良かったが、危なかったと思う。
「ところで、このえーと、かもみぃーるとせぃーじって何?」
「カモミールにセージね。ハーブといわれるやつね」
「ハーブ?」
「そう。香りの強い食べれるものといった感じかな」
「食べれるの?」
「うん。ただ、それだけで食べるとひどい目に遭うかも」
「どういうこと?」
「どうもこうも、香りが強すぎて臭いだろうし、苦いだけで美味しくないよ」
「美味しくないの?」
「そうだね。ハーブは単体で食べるのでなく何かに添えるくらいが丁度いいんだよ」
「単体?添える?」
「うーんと、調べないの?」
「調べるのは後でも出来るしつまんない」
「つまんない?」
「お喋りしたい」
「お喋りしたいかー。でもさっきから質問ばっかりのような」
「質問って?」
「聞いてきてることばっかのような」
「だって鷹兄の話難しいの」
「そっか。でも楽しい?」
「うん」
「楽しいお喋りしたいなら、今度は油断しないように」
「うん、いくよ。」
リスポーンする兎に弓を構えるリンと刀の柄に手を添える僕。
シュパシュパシュパーーープシューシュパシュパシュパーピュシュ
敵を倒す音だけが響くがすぐに終った。
「鷹兄凄い」
「リンの方こそ。お互いにスキルのおかげだね」
「そうだね」と、こたえられながら僕の体は奇妙な成り立ちになっていることを思い出す。
確か僕は、本屋で買い物をして店を出る前にこけた。
次の瞬間気づいたらここにいた。
この体は死神が見れて、スキルを使え、ダンジョンがわかり攻略できて、いろんな力が膨大に使える、出鱈目極まりないのだ。
リンにいたっては、不老の体になった。
成長しても老けることの無い体とのこと。
正直わからないが、20歳辺りで見た目が変わらなくなると思っていいのかなと思う。
それに比べて僕は、不老不死。
老けないが成長しなく死なない体。
17歳の体、変わることのない体。
この時代、人工物による物はさほど多くない。
まして、僕が義理立てる所もないとなると、やれることは限られる。
自然とダンジョンの攻略の旅になる。
旅姿とか考えてたけど今はダンジョンの攻略が先である。
ただ、今の段階で目安がない。
「リン、ちょっとこれからのことなんだけど、いいかな」
「うっうん。いいよ」
「わからない単語は自分で調べてね」
「うん」
「最大の目的は、日本中のダンジョンを攻略する。アイテムは、ランク特上にして2人共、99個にする。但し武器はその限りではないとする」
「うん。それでいいよ」
そうと決まれば、ここでのんびり戦う必要は無いと思うだろうが、リンは5歳の女の子だ。
僕もせっかちな方ではない。
のんびり行こう。
そう思って、次の部屋に向かう。
入ると同時に、リンの魔法が炸裂する。
リンの目の前に大きな火の球が表れたと思うと、火の球から火の円盤が飛び出し次から次へと飛び出し、兎達を駆逐する。
自分で自分に酔ったのか「おーー」と声が漏れていた。
攻撃は凄まじいが、芸がないように感じる。
そう、僕が思ってると「何か物足りない」とリンが呟いた。
「物足りない?倒したり無い?それとも、何だろうね。ただ、火を飛ばしてるだけになってるからつまらないかな」
「そう、何かつまらない」
そんなことを呟きながら、次の部屋にいく。
今度は僕の番かと思いきや、リンがやる気になっていた。
やる気のある人に、譲るのは世の常である。
リンが、先程と同じように火の球を出すと、もう一個火の球を出した。
そして、縦に重ねた。
上と下の火球の大きさが一緒なので、なんとも言えないが、もう少し上の火球が小さければこれはこれで、雪だるまならぬ、火球だるまに見えなくもない。
「うん。いい感じ。もう少しここを・・・」
何やらいい感じなので、見守るモトイほっとくことにした。
物凄く変な方向にいかない事を祈りつつだけどね。
暫くすると、油断しないから1人で行動したいと言う。
ここの階から出ないことだけを約束する。
僕は、せっかくなので食欲増進と言う薬を99個にするため上の階に行くことにした。
リンには普通の袋を何枚か渡し、ここの階にある安全地帯に置いとくように言う。
安全地帯に置かないと、時間と共にアイテムがダンジョンに戻ってしまうのでこれは必須なのだ。
そう言えば、前回は安全地帯に大岩がいて、大変お世話になったので、今回もいるのかと思ったが、いなかった。
安心して2階に戻る僕。
派手なネズミを倒して胡椒を得て、食欲増進剤を作る。
最初は、胡椒集めに集中してたが、段々と剣術の方が面白くなってきた。
足の運びと刀の運びを何度も確認しながらネズミを斬り倒していく。
どうしても、ネズミは足元にいるから、下から切り上げるのが中心になってのものになってしまったが、体を無駄無く丁寧に運びながら斬っていた。
いく時間かかったのだろう、ふと気付くとそこには、リンがいた。
「あれ?どうした」
「どうしたもこうしたもない。お腹すいた。死にそう」
「ゴメン、ゴメン。安全地帯にいきご飯にしよう」
ウンウンとうなずくリン。
安全地帯に入る前には部屋がある。
そこにいる兎達を倒すわけだが、リンの成果が見たいので、お願いした。
すると、リンが両手を前に出して、念じるように構えると、炎の塊ができ、徐々に形を変え出来たのが兎であった。
目の前の敵をモデルにしたのだろう。
火球が炎の兎になってしまった。
ほっといて正解だった。
もし突っ込んでいたらこういう発想はでなかったかもしれない。
そして、兎型炎の塊から繰り出される炎の刃が、次々と兎達を倒していった。
セージとカモミールを集めてから安全地帯に入るとそこには、山のようにつまれたセージとカモミール。
一気に回収して、加工して必要なものを渡していく。
さて、座布団をひくと、二人はゆっくりと腰を下ろした。
水筒を削り、器を作る。
作り置きした焼き魚とオニギリ弁当、付け合わせに大根卸しと紫蘇を添える。
そして、別の水筒をだし、その中にセージとカモミールをちょっと入れた。
さらに、オニギリの上に今日は胡椒を添える。
僕は、黒胡椒をリンには白胡椒を潰してちょこっと添えた。
箸を渡したらお食事の始まりだ。
竹のコップに、セージとカモミールの入った水を注ぎ飲んでみた。
水に浸しただけだから、そこまで香りがついたわけではないが、リンは敏感に「何か複雑な匂いがする」といっていたので、「そう言うのは香りって言うんだよ」と訂正しといた。
喉が乾いていただけかもだけど、文句を言ったわりに、ごくごく飲んでた。
もしかしたら、文句ではなく気に入ったのかもと思い、聞いてみたら「悪くない」って言ってた。
ピリッとするオニギリを頬張り、魚を食べる。
食事は終わり、食器を洗い収納する。出たゴミはダンジョンにポイした。
ふっかふかの布団を出す。
「寝るの?」
「寝るよ。ご飯の後寝ると気持ちいよ」
そう言いながら布団に入ると、リンが自分の分の布団を僕の方に寄せてから布団に潜った。
「どうしたの、怖い顔して」
ん? そう言えば今何か考え事をしていたような・・・。
「うん。衣食住考えないとね」
どうせ作るなら、いい家がほしい。
そうはいっても知識がない。
いや、知識ならエンちゃんとリンがいる。
作ったもには持ち運べる収納がある。
うん。作ろう、家を、安心して寝れるところを。
そう思い、眠りにつくのだった。




