第十二話「屈辱の特訓」
「はあ、チラシ配りやっと終わったあ」
チラシ配りは朝から夜まで続いた。
これで200G。ブラックにも程がある。
俺は依頼を達成しにギルドに向かった。
ギルドの中には安奈とタラクスがいた。
彼らも丁度依頼が終わったらしく、受付嬢から報酬を受け取っている。
「安奈様。ご無事で何よりです」
「フィル。心配してくれてありがとう」
この二人の会話の後に俺は割って入って報酬はいくらだったか聞いてみた。
「1000Gほどかしら」
さすが討伐依頼。儲かるねえ。
俺も参加したかったなあ。
ってかこれ俺が参加すればすぐ終わったでしょ。
だが、これを言おうならフィルからまた馬鹿にされるから心の内に仕舞っておく。
「さて、これでしばらくは食いつなげるな」
タラクスはそう言うと腕を組み少し唸り始めた。
その姿は今にも突進してきそうな猪そのものだ。
「あのう。タラクスさん。どうしたんです?」
安奈もタラクスの様子が気になったのか、手探りをするかのように尋ねた。
「安奈はまだいいとして海斗!」
へ? 俺?
「何かな」
「お前は冒険者としての基礎がない。このままだと討伐の依頼は任せられない」
あのう。俺泣きそうなんですが。
俺の隣でフィルがプークスクスクスと笑いを押し殺したかのような声を出す。こいつ、殺したろか?
それよりも冒険者としての基礎が出来てないだと!?
「なので明日。僕が特訓してやろう」
「いいのか? 俺は強いぞ」
「その威勢ならすぐ強くなれることだろう」
ということで明日。タラクスが俺の特訓をすることになった。
ふん。特訓じゃなくて俺の本当の実力を思い知ることになろうがな。
精々その時を楽しみに待つがいい。フ、フハハ、フハハハハハ。
――翌日。
…………。
「どうした海斗? お前の実力はその程度なのか?」
嘘だろ? 俺ってこんな弱かったのか?
「本気で僕を殺しに来い。大丈夫だ。僕は熟練の冒険者。簡単には死なない」
言ってくれるねえ。
「おりゃあああああ!!」
俺は剣を構えて突進した。
「ウゴハッ!」
タラクスは俺の突進を回避し、俺の足に足を引っ掛けて俺を仰向けの状態に持っていった。
「ダメだダメだ」
タラクスはそう言うと腕を組みながら仁応立ちになり、俺を目を細めて睨んだ。
「まだ僕相手は早いか。安奈。君が相手をしてやれ」
「え? 私ですか?」
「大丈夫だ。海斗の実力は君の足元にも及ばない」
言ってくれるねえ。
「分かりました。私が相手をします」
安奈か。最初の頃は絞め技でやられていたが今は剣を持ってるし、あの頃は本気じゃなかったのもある。
「いいのかタラクス? 安奈が大怪我しても知らんぞ?」
「大丈夫だ。安奈なら」
よおし。
「うりゃあああああ」
俺は安奈に斬りかかった。
「グホッ!」
一瞬だった。
安奈は俺の剣撃を棒で受け止め。
俺の腹に蹴りを入れて、俺を吹き飛ばした。
「さすが安奈だ」
「あまり私を褒めないでください。恥ずかしいです」
本当ならこの会話を惚気んなと言うところだが何も言えねえ。
「……クソ」
「海斗。自分の実力が分かったか?」
「俺はこんなもんじゃねえ」
いつの間にか俺の心にスイッチが入る。
「まだ分からないようだな」
「うおりゃああああああああああ!」
俺はタラクスに斬りかかった。
しかし、タラクスはそれを軽く受け流す。
「まだまだあああああ! グホッ!」
タラクスの拳が腹を付く。
「クソッ、俺は。俺はこんなところで」
「強くなりたいなら、まずはその慢心をどうにかすることだな」
慢心。認めたくない言葉だ。
俺は強い。本気を出してないだけなのだ。
本気を出せばお前くらい倒せる。
タラクスとの特訓は夜まで続いた。
しかし、俺がタラクスに傷を負わせることは一度もなかった。




