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俺は魔王じゃねえ! ~転生董卓の悪名返上記~  作者: 青雲あゆむ


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12.とうとう来たか

光熹2年(190年)4月 司隷 河南尹 洛陽


 ボンジョルノ、董卓だよ~。(イタリア風)


 各地の治安改善に忙しくしていたら、賈詡から不穏な情報がもたらされた。


「外戚と宦官に不穏な動きがあるだと?」

「はい、何皇太后の周囲で、今までにない動きがあります。どうやら外戚の一部が中心になって、反乱を企てている模様です」

「あ~、とうとう来たか」


 昨年の何進暗殺騒動で、皇太后は兄たちだけでなく、信頼する宦官の多くを失っていた。

 しかし時が経てば、代わりはいくらでも出てくるもので、それらが皇太后の周りに集まってきていたのだ。

 どうやらその一部が、不届きなことを企んでいるらしい。


「外戚と宦官だけか? 官吏は絡んでねえのか?」

「はい、現状では清流派の官吏が実権を握っていますから。彼らと協調できる董卓さまに、あえて対立しようとする者はおりませんよ」

「ふ~ん、そうならいいんだけどな」


 ひょっとしてと思って聞いてみたが、官吏たちは関わっていないようだ。

 ならば遠慮なく、大掃除をしてやるとするか。


「よし、なら袁隗たちも巻き込んで、大掃除でもするか」

「ええ、それがよろしいかと」


 そう言って俺たちは、悪そうな顔で笑い合った。




 それから半月ほど後、皇太后の外戚と宦官の一部が捕縛された。

 容疑は俺や袁隗たちの暗殺未遂である。

 俺たちを殺して、実権を奪おうとしたんだ。


 そんな大それたことを企むわりにはお粗末な奴らで、しっかりと証拠も押さえられていた。

 さすがに皇太后が関与した証拠はなかったが、状況から無関係とは言いがたい。

 そこで実行犯どもは処刑となり、皇太后は摂政を辞任して、謹慎することになった。


 そうなると、太傅である袁隗の立場はさらに上がる。

 それはそれで袁家の勢力伸長が懸念されるが、おそらく許容範囲に収まるだろう。

 良くも悪くも、袁隗は常識人の範疇だからだ。


 もちろん太傅になるぐらいだから、それなりの手練手管は使えるだろう。

 しかし史実ではあっさりと董卓に族滅されてることから、意外に脇が甘いとも言える。

 油断は禁物だが、俺たちがしっかり監視してれば、そう悪いようにはならないだろう。


 むしろ、皇太后を排除できたおかげで、改革を進めやすくなった。

 今までは、いちいち皇太后の許可が必要だったからな。

 おまけに官吏が皇太后とじかに話をするのは好ましくないってんで、宦官を通していたんだ。

 おかげで物事を進めるのに、時間が掛かって仕方なかった。

 それらの障害がなくなっただけでも、大きな進歩と言えるだろう。




「プハ~、問題を片付けた後の酒はうめえな」

「ああ、まったくだ」

「そうでやすねえ」

「はい」


 俺の言葉に董旻とうびん牛輔ぎゅうほ張遼ちょうりょうが応じる。

 彼らは今、雑号の将軍位を得て、治安維持の名目で全国を飛び回っていた。

 それが一段落したので、久しぶりに酒をくみ交わしてるとこだ。

 ちなみにこいつら面白いことに、年齢が42,32,22歳と、ちょうど十歳違いなんだよな。


 それはさておき、最初は各地の状況を聞いていたのだが、やがて董旻が物欲しそうに言った。


「俺もけっこう働いたからさ、そろそろ昇進してもいいんじゃないかと思うんだけど」

「あ、それはあっしも思いやすね。これでもけっこう苦労してるんすよ」


 牛輔もそれに同調するが、俺は渋い顔でたしなめた。


「お前らの貢献はちゃんと認めてる。だけどな、俺の親族がホイホイ昇進すると、周囲からやっかまれるだろ?」

「う~ん、やっぱそうかぁ」

「まあ、それもそうなんすよねえ」


 この世界の董卓おれは、身内の扱いは慎重にしていた。

 史実では身内をひいきしまくって、赤子にさえ爵位を授けたと言われる俺がだ。

 しかしこれは当然のことで、利権を独占していれば、周囲の反感を買うに決まっている。


 そうなれば俺の正論も曲解され、様々な障害にぶち当たるのが目に見えていた。

 俺が求めているのは漢王朝の改革であり、その結果として生まれる安らかな老後である。

 そのためには身辺を極力、身ぎれいにしておく必要があったのだ。


 俺自身は驃騎将軍という高位にあるが、これは改革を進めるためであって、身分をふりかざしたことはない。

 本来なら田舎に帰ってのんびりしたいところだが、中央が不安定なままでは、いつ騒動に巻き込まれるか分からないからな。

 やむなく洛陽に留まって、改革を進めているのだ。


 しかし周りにはそんなこと、理解できやしない。

 ちょっとでも隙を見せれば、これ幸いと攻撃してくるだろう。

 そんな俺の思いを察したのか、賈詡がフォローしてくれる。


「まあ、功績があるのに昇進できないのも、問題があります。地道に仕事をこなしていれば、いずれ昇進できますよ」

「ヘヘヘ、まあそうだな。しばらくは地道にやるか」

「そうですね。うちは大将がちゃんと認めてくれてますし」

「私は若いんで、まだまだいいです」

「まあ、その辺は任せとけ……それにしても、俺はいつまで働けばいいのかなぁ?」


 ここで思わず本音を漏らすと、皆が苦笑して返す。


「陛下がしっかりと実権を握るまでじゃねえか?」

「そうっすね。今、大将が抜けたら、また元の状態に逆戻りでしょう」

「ですね。閣下にはがんばってもらわないと」

「私もそう思います。陛下の成長を待ちつつ、後継を育てるしかありませんね」

「やっぱ、そうかぁ。あ~、早く田舎に帰りてぇ」


 いつになったら、涼州へ帰れるのか。

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