第15話
第35章
ザッシュはご主人様を寝台に横たえ、涙をすすりながら衣服を脱がせ始めた。こんな姿を見ているのが辛かった。助けられなかったことが辛かった。自分を守るためにここまで傷ついたことが、全部自分のせいだということが辛かった。その痛みと苦さが胸の奥から溢れ出し、今にも爆発してしまいそうだった。夜のうちに癒えると知っていても、そんなことは関係なかった。この人は自分のためにこれほどのことをしてくれた……ただの雑種のために。何も値しない自分のために。不公平だ……あまりにも不公平だ。
脱がせ終えた。骨が折れ、打ち身の痕が全身に広がる様子には、これまでも慣れることができなかったが、今見ている光景は、言葉を失うほど衝撃的だった。これほどひどい状態になったことは一度もなかった。傷はかつてなく凄惨だった。
自分も服を脱いで……横になろうとしたところで、立ち止まった。手の中を見た。神殿の床で見つけた、涙の形をした青いもの。見た瞬間にわかった。時の結晶だった。メラがあの日見せてくれたものに似ていた。これはまだ割れていない。メラの言葉が正しければ、まだ魔法が残っている。
意識を失っているご主人様と、手の中の結晶を見比べて迷った。『彼の手とあなたの手で一緒に持って、少し待ってみて。そうすれば、知りたいことへの答えがすべてわかるから。』
知る権利が自分にあるのか。もし彼に話して、教えてほしいとお願いしたら……いや、それは無理だ。できることではなかった。ご主人様はいつも何でも言っていいと許してくれていた。でも、それは……違う。口にすることさえ考えられなかった。彼にとって辛い記憶を、もう一度蘇らせるようなことはしたくなかった。これ以上苦しませたくなかった。
しかしいま手に時の結晶を握っている以上、使わずにはいられなかった。理解しなければならなかった。これほど優しく、これほど強い人が、どうして死の化身になってしまったのか……もう一瞬たりとも、知らないままではいられなかった。
決心した。寝台に入り、その大きな手を取り、自分の手と重ねて、二人で結晶を包み込んだ、二人で時の結晶を一緒に持った。
第36章
『空は明るく青く、朝の陽光が清々しく降り注いでいた。青々とした草の上に色とりどりの花が散らばり、平らな地形の中にいくつかの丘が点在していた。数歩先の木に、枝の間をよじ登ろうとしている男の子がいた。豪華な衣装を身につけた女性が驚いて駆けてきて、何か叫んだ。男の子は笑いながら一瞬振り返り、葉の中へと消えた。』
『男の子は大きくなり、広い中庭で遊んでいた。小さな土の積み木を積み上げて何かを作っている。隣で一人の男性が微笑みながら見守っていた。男の子の作ったものを指差して何か言うと、男の子が答えた。男性は声を上げて笑った。』
『まだ幼いが、その男の子は背が伸びていた。防護具のついた衣装を着て、剣のように棒を持って動きを練習していた。向かいには同じ衣装を着た年配の男性がいた。一歩踏み出して、男の子の腕の位置を直しながら指示を出した。』
『少年は木の陰に隠れて、こっそり覗いていた。石畳の遊歩道脇の花に囲まれたベンチで、一人の若い女性が日傘の下で本を読んでいた。彼女はそこに誰かが隠れていることに気づいていなかった。突然少年は飛び上がった。背後から同じ年頃の二人の少年が現れたのだ。少年が何をそんなに熱心に見ているか確かめると、二人は笑いながら何か言った。少年の顔が真っ赤になった。』
『若者は立ったまま動けず、涙を流していた。豪華な寝室に、悲しそうな顔で寄り添い抱き合う人々が集まっていた。ベッドには目を閉じた男が横たわっていた。その傍らで、暗い服を着た老人が首を左右に振りながら周囲を見渡していた。』
『広大な広間は人で溢れていた。中央では多くの組が踊り、その周りで他の人々が眺め、語り合っていた。本の女性は今や美しい若い女性になっていて、別の貴婦人と話しながら座っていた。貴婦人が何かに気づいたようだった。若者の二人の友人が、嫌がる若者を力ずくで押して近づかせようとしていた。若者は恐怖で硬直していた。貴婦人は微笑みながら席を立って離れた。友人は呆気に取られて見ていたが、やがて若者が途方に暮れた顔で女性のそばに立っていることに気づいた。』
『二人はほぼ大人になっていた。手を繋いで微笑みながら、拍手を送り花を投げてくる群衆に挨拶していた。』
『男は豪奢な布をまとった人々の一人と握手を交わした。二人の前には、今しがた署名した書類があった。贈り物の交換が始まると、その場の全員が微笑んだ。』
『女性は疲労の色を浮かべ、汗ばんでいた。男は彼女の手を握り、口づけした。赤ん坊が手渡されると彼女は腕に抱き取り、男は深く感動した様子でその額に口づけした。二人は愛おしそうに見つめ合った。』
『男は玉座の間に立っていた。前方の王が式典を見守る全員に向けて話していた。その中に妻もいて、幼い子どもに父親を指差して何か語りかけていた。全員が拍手した。男は君主に頭を垂れ、集まった人々に微笑んだ。息子の方を見て、片目をつぶってみせた。』
『神殿の礼拝堂の中で、偉大な魔法使いたちの像に囲まれ、様々な器具と結晶が置かれた中で、老人が門を開く紋様の配置を示す挿絵と、その下に記された呪文の書かれたページを指差しながら話していた。』
『船は今にも出港しようとしていた。王の一行が待つ中、群衆が旅立つ者たちに歓声を送り、家族が別れを告げていた。男はしゃがんで息子に口づけした。頬をつねってからいたずらっぽく片目をつぶり、立ち上がって妻を抱き寄せた。二人は口づけを交わし、微笑み合い、彼は船へ向かった。』
『甲板に水夫たちが集まり、男が木板に紋様を描きながら微笑んで説明するのを、息を呑んで見ていた。男が門を起動すると、その微笑みも水夫たちの笑顔もすべて消えた。向こう側に見えたのは、燃え盛る家々と逃げ惑う人々だった。
一瞬の硬直ののち、船上の全員が向こう側へ飛び込んだ。渡った瞬間、男は何が起きているのか理解しようとして辺りを見回し、水夫たちは散らばっていった。一人が必死な様子で女性を引き止め何かを聞いた。女性が後ろを指差し、水夫は走り出した。男は呼び止めようとしたが、水夫は一瞬振り返るとそのまま見向きもせずに走り去った。男はすべてが燃え落ちるのを見ながら、何も理解できなかった。
そのとき、ある音が彼を振り返らせた。炎の中から巨大な魔獣が現れ、その爪の一本に先ほど走り去った水夫の体が掴まれていた。他の者たちが去った方角にも、別の怪物たちがあらゆるものを破壊しながら進む姿が見えた。人々はあらゆる方向に逃げ惑っていた。しかし男は少しの間頭を垂れてじっとした。やがて目を上げ、決意した顔で門へ戻った。』
『家は燃えていた。広い広間の壁に門が開いた。男が飛び出し、あらゆる方向に向かって名前を叫んだ。走り出し、ふと窓の外を見て立ち止まった。外は炎に包まれていた。大きな魔獣が使用人の一人を足で踏みつぶし、もう一人を爪で掴んで口へ運ぶのを見て、男は愕然とした。すぐに我に返って叫びながら走り出した。
妻と息子が部屋の隅に縮こまって火から身を守っていた。立ち上がらせ、出口の一つへと導いた。扉を開けると、外の惨劇と炎が目に飛び込んで一歩後退した。怪物の一体がこちらに気づき、向かってきた。腕を伸ばして誰かを掴もうとしたが、男は素早く躱し、手首を掴んで扉の枠を支点にしながら肘を後ろへ折り曲げた。魔獣が痛みに吠え、仲間の注意を引いた。
家族は逃げながら様々な部屋を駆け抜け、門のある広間に辿り着いた。男は扉を閉め、辺りを見回した。他に出口はなかった。
完全に追い詰められた男は、船の甲板へと通じるはずの壁に近づいた。向こう側から手を引いて、無我夢中で彼らを通そうとした。しかし妻は子どもを抱いたまま、何もない空気に手を置くだけだった。ついてこられなかった。
そのとき背後の扉が弾け飛ぶのが見えた。片腕の折れた魔獣が、崩れた開口部から入ろうとしていた。男は門を通り戻り、妻と息子を隅に押しやって、戦えるものを探した。木の椅子に近づいてそれを持ち上げ、重い机の角に叩きつけた。砕けた脚の一本が先の尖った杭のようになった。ちょうどそのとき大きな窓が割れ、別の怪物が侵入してくるのが見えた。男は前に飛び出し、魔獣が頭を突き込んだ瞬間に即席の武器をその片目に突き刺した。魔獣は後ろへ倒れた。
男は振り返った。片腕の折れた魔獣が完全に入り込み、隅で妻が恐怖に震えながら息子を抱きしめているのを見ていた。男は何も考えず走り出し、机の上を跳び越えてそこから飛び上がり、捕食者と二人の間に必死に割り込もうとした。しかし着地する前に、魔獣のまだ使える爪が男を薙ぎ払い、その勢いで門を越えて船の甲板に叩き落とされた。
激しい痛みの中でどうにか体を動かし始めた。立ち上がれなかった。門の方へ向いた……そして妻が背を向けて叫びながら息子を抱きしめているのが見えた。魔獣が牙をむき出しにしながら二人に向かい、その卑しい口から一筋の涎が垂れていた。
男は這いながら二人へ向かった。間に合わなかった。魔獣が妻を宙に持ち上げ、息子を引き離そうとした。彼女が抵抗すると、魔獣は片足で彼女を踏みつけ、胴体を引いて真っ二つに引き裂いた。男は苦悶の絶叫を上げた。魔獣が死んだ母の腕から息子を奪い取り、一口でその小さな頭を噛み飛ばすのを、ただ甲板の上を這いながら見ていることしかできなかった。残ったのは自分だけだった、家族は死んでいた。』
『老人は遠くを心配そうに眺めていた。いくつかの家が燃え上がり、その上空を飛び交う点々が見えた。岩場から数歩のところに、男が突然何もないところから現れたので驚いた。しかしその驚きは、男だとわかった瞬間に消えた。男が顔を上げて老人を見た。その目の中にあるものを見て、老人は悲しそうに頷いた。
男は祭壇の上に仰向けに横たわり、胸を露わにしていた。石に刻まれた紋様が輝いて場を照らし、赤みがかった岩も同じように光を放っていた。老人が奇妙な印の刻まれた柄を持つ短剣を手に近づいた。黙って呪文を唱えながら、小さく規則的に揺れていた。男の目は虚空を見つめていた。
しばらくして老人が短剣の先端を、心臓の位置に当たる男の胸に近づけ、深く切り込み始めた。男は全身に力を込め、目を閉じ、そして叫んだ。』
第37章
ザッシュは涙を拭いながら、時の結晶の破片を寝台の下にそっと置いた。二人の体はすでに光り始め、光の糸が二人を結んでいた。打ちのめされた彼の顔を見て、また涙が溢れた。これほどの痛みと理不尽、間に合わなかった後悔、過去を変えられない無力感……胸の奥が引き裂かれるようだった。
でも、自分に誓った。変える。今の自分は確かに強くなっている。これからも強くなり続ける。そして、自分が本当に望んでいるものも、もうわかっていた。自分の道を選んだのだ。
もう一度彼の顔を見た。しばらくして、静かに白い手を彼の頬に当て、そっと唇に口づけをした。そしてそっと抱きしめた。
その腕の中にいる彼女には気づけなかった。ご主人様が、静かに目を開けていたことに。
第38章
死影はその器の前に、硬貨の詰まった袋を置いた。
「解雇だ」
ザッシュは顔を上げ、意味が理解できなかった。彼はただ腰を下ろし、いつもと同じように装備の手入れを始めた。
長い沈黙が続いた。少女は瞬きをしながら、何も反応できなかった。解雇……? わたし、解雇されたの……? 追い出される……?
あり得ない。違う、どうして。なぜ——
彼が小瓶の留め金を確かめているのを見た。まるで何も起きていないかのように。聞き違いだろうか。彼が間違えたのか。いや……追い出せるはずがない。おかしい、なぜ……違う、そんなはずがない。
「……出て行けってことですか」やっとそれだけ言えた。その声は自分のものではないように感じた。突然自分が幽霊になって、遠くからこの光景を眺めているような気がした。
「武器を持っていけ、今はお前のものだ。ここにある他のものも、欲しければ何でも持っていっていい」
ザッシュはあまりの衝撃に、声もほとんど出なかった。
「でも……でも……復讐は?あなたはどうやって——」
「もうお前の問題ではない」
その冷たい言葉は胸を突き刺し、内側を粉々に砕いた。しかし次の瞬間、ザッシュは何も感じなくなった。長い……果てしなく長い沈黙のあと、彼女は立ち上がり、虚ろな目で装備の置いてある場所へ歩いていき、ゆっくりと荷造りを始めた。
ご主人様の命令を実行するために、体のあらゆる筋肉を一本一本動かすことに、意識のすべてを傾けた。頭はほとんど働いていなかった。ひどく傷ついていて、苦しむことさえできなかった。
すべてをまとめ終えると、袋を背負って洞窟の出口を見た。目は大きく開いていたが、何も映していなかった。死影は背を向けて装備の手入れに没頭し、こちらに注意を向けなかった。必死に、ザッシュはどうにか片足を動かし、もう片足を動かした。別れも告げずに出ていった。
何をしているのかもわからないまま歩いていた。一歩、また一歩。考えられなかった。一瞬一瞬、意識が壊れていくのを感じた。一歩、また一歩。しばらく歩いたとき、袋を持つ力がなくなって落とした。そのことに気づかないまま、しばらくそのまま歩き続けた。やがて体が崩れ始めた。次の一歩を踏み出す足が見つからず、膝から崩れ落ちた。
ずっと昔、道端で、死んだ母のそばにいた自分が見えた。あの頃とほとんど同じだ。ただ今は、泣く相手もいなかった。あのとき誰かが迎えに来てくれたように、また誰かが来てくれるだろうか。ご主人様が来て、行くなと言ってくれるだろうか。全部またあの試練だったと、家に戻れと言ってくれるだろうか。受け入れてくれると、大切にしてくれると、絶対に一人にしないと……
雑種はゆっくりと腹を抱えて、痛みで前に折れ曲がった。顔がぐしゃぐしゃに歪み、最初は声もなく嗚咽し、やがて悲痛な叫びを上げながら泣き崩れた。森の中に、一人で。




