第11話
第27章
消えた。
矢は地面に突き刺さり、凄まじい衝撃で土砂と石礫が舞い上がった。
もう少しだったのに。届くはずだったのに。狙いは塵一粒の差でそこにあったというのに。
ナドレルはあまりの驚愕に、しばらく反応できなかった。これほどのことは見たことがなかった。やがて数瞬の後、表情が引き締まった。何が起きたのか、理解した。
敵が、自分に伝言を送ったのだ。
自分の意図を把握していた。自分の思うままに娘を体で庇い、意図して晒した。二人が消えることも、正確にどの瞬間にそれが起きるかも、すべてわかっていた。
そのまま逃げ続けることもできたはずで、そうしていれば、自分は見失うまで待つしかなかったはずだ。しかし敵は意図的に、自分が動くべきと判断させる瞬間を選んだ。すでに遅すぎると知っていながら。
敵が望んでいたのは単なる逃走ではなかった。その心の内に入り込んだということ、自分を誘導したということ、支配したということ、打ち倒したということ――それを伝えたかったのだ。辱めようとしたのだ。
規律によって辛うじて抑えられなければ、憤怒が爆発していただろう。踵を返して歩き始める間も、表情は微塵も変えなかった。ここでの用は終わった。主君に報告しなければならない。
巨大な魔鳥が城の中庭に舞い降り、従者たちが慌てて駆け寄った。ナドレルは軽やかに飛び降りた。
迷うことなく巨大な扉へと向かい、その先の長い廊下を速足で進んだ。すれ違う上位魔族たちが身をかがめて礼を取ったが、彼は誰にも目を向けなかった。
やがて両脇に衛兵の立つ大扉の前に至った。一人が頭を垂れながら扉を開け、ナドレルはそのまま中へ入った。
広間は広大だったが、窓はなかった。照明は、中央の通路を挟んで左右に並ぶ荘厳な柱から吊り下げられた松明だけで、その奥には岩と鋼と敵の骸骨で作られた巨大な玉座があった。ラウグ・カーがそこに座していた。乏しい光の中でわかるのは大きな影と、目があるべき場所で燃える二つの赤い輝きだけだった。
ナドレルは王の御前まで進み、膝をついた。
「陛下、ご報告いたします」
沈黙。ナドレルは続けた。
「私の推測は正しかったようです。イドラルに残った獣どもを侵攻以来ずっと狩り続けている者がおります。自ら確かめてまいりました。島のあちこちに殺戮の痕跡があり、我々が残した数の約四分の一しか残っておりません」
「あの島には生き残りなど残さぬようにと、明確に命じたはずだが」深みのある声が凄みを帯びて響いた。
「御命令は履行されております、陛下。あの地は完膚なきまでに焼き払われ、草の一葉さえ戻っておりません。攻撃が外部から行われていることを突き止めました。人間です。そして魔石を持っていると思われます」
その言葉に、玉座の影がわずかに動いた。俄かに関心を示す気配があった。
「詳しく話せ」
ナドレルは語り始めた。叫び声に引き寄せられた経緯、見下ろすと侵入者が獣どもを攻撃していたこと、その後の交戦、そして娘が突然現れたことまで。消えるまでの経緯をすべて話した……ただし、最後の屈辱だけは省いた。あの男の伝言は、自分だけへのものだった。
「なるほど」ラウグ・カーは独り言のように言った。「魔石は実在するか」
「他に説明がつきません、陛下。あの人間は、その種族にはあり得ない能力を持っております」
「魔石はその担い手の力を大いに増幅する。しかし人間がそれを持ったとしても、そなたとの直接対決を生き延びることはできぬはずだ。あの男には何か別のものがある」
「陛下、彼に同行していた半魔は……私の娘でございます」
王が驚きを示した。
「娘がいたのか」
「その瞬間まで存じませんでした、陛下。しかし確信しております。これほど私に似た容姿の上位魔族はおりません。そして彼女の血管を流れる私の血を感じました。疑いの余地はございません。かつて手をつけた人間の女の一人が、生き延びていたのでしょう」
「その娘が問題だというのか」
「力はほとんどありません、陛下。申し上げるのも恥ずかしいのですが、見た目以外には上位魔族らしいものがほとんどないようです。ただの付き添いに過ぎないかと」
「ふむ、それならば好都合だ。いずれにせよ、そなたの血と人間の血が混ざれば、いつか極めて危険な存在になりかねない。本性に目覚める前に消しておかねばならぬ」
「御意のままに、陛下。ただ、あの二人がどのように突然現れ消えるのかは不明でございます。また島中に残された痕跡から見るに、拠点は一か所に限らないかと。魔石の担い手は、行き先を意のままに選べる能力があるようでございます」
「あの人間は門を使っている。こちら側から渡った者にしか機能せぬ。だから我々には届かない」
ラウグ・カーが立ち上がると、その巨大な姿が無敵の威圧感を放った。王は独り言のように思案しながら言葉を続けた。
「あの島の話を初めて聞いたとき、単なる伝説だと思っておった。侵攻の結果を見て、時間の無駄だったと確信したが……どうやら誤りだったようだ」
「では陛下、イドラルへ戻り、次に現れたときに捕らえますか」
「いや。あの場所は今や海の只中に浮かぶ死んだ岩に過ぎぬ。そこでは人間の方が有利だ。あの男は獣どもを狩ることで我々を苦しめていると思っておる。好きにやらせておけ。その間に我々は奴が休み、蓄えをする場所を突き止める。本拠地を叩く」
王は膝をついたままの臣下の方へ完全に向き直り、声が広間全体に轟いた。
「兵を送れ。全員だ。散開させ、魔石の担い手とそなたの半魔を探し出させよ。どこにいようとも。魔石を持ち帰らずに戻った者がいれば、そなたの手で即刻殺せ」
ナドレルはその言葉を驚きとともに聞いたが、わずかな異議を唱える可能性さえ頭には浮かばなかった。
「仰せのままに、陛下。必ずや見つけ出してみせます」
ナドレルはゆっくりと歩いていた。物思いに沈んでいた。いつもならば、これほど際限なく続く廊下を歩む間にすれ違う上位魔族の礼など少しも気に留めないのだが、今はあたりに誰かいることすら意識になかった。考えるべきことがあった。
配備の準備は進んでいる。配置計画が整い次第、軍は動く。世界は広い。しかし三万の上位魔族が絶え間なく探し続ければ、逃れられるものはない。見つけ出せることに疑いはなかった。
しかしあの人間は……
入手している情報によれば、魔石はその担い手に並外れた能力を与えるという。それでも魔石が必要とするエネルギーは、あのか弱い種族には到底賄えぬはずだった。陛下が魔石を手にすれば世界最強の存在となる。しかし人間ではその力を引き出しきれず、精鋭の戦士であれば誰でも仕留められるはずだ。
はずだ。
あの最後の一点がなければ、これ以上考えることもなかっただろう。確かに偶然ではないと断言できる。そうであれば、いずれ厄介なことになりかねない。あの戦闘技術と動きを見た。不可能なほど完璧だった。しかし所詮は単なる獣どもを相手にしていたにすぎず、そのような獣など自軍の兵士には何ほどのものでもない。逃げ延びられたのは、娘が突然現れたことで生じた一瞬の混乱を利用できたという、運だけの話だ。
しかしあの最後の件だけは……人間がああいうことをできるとなれば、それは別の次元の話だった。体の能力ではなく、どのような戦士かということだ。陛下に報告すべきだったか。些細な点に見えるし、重要性のない偶然の一致かもしれない。そんな些細なことで王の手を煩わせるわけにはいかない……しかもそれは同時に、自らにとって耐えがたき屈辱を意味するものでもあった。逃がしただけでも十分に不名誉だ。
いずれにせよ、今さら話す機は過ぎた。敵の伝言は自分だけへのものだった。自分の中だけに留める。どうあれ、いずれ部下の誰かが二人を見つけ出し、始末するだろう。
しかし、あの不快な予感が頭から離れなかった。完璧な戦士の風格を持つ人間と、いつか目覚めれば壊滅的な脅威となり得る自分の娘・半魔。ナドレルは深い憂慮を抱いていた。
第28章
ザッシュは不安だった。
ご主人様はいつものように黙って装備を確認していた。彼女はまだ手をつけていない朝食の器を前にして座っていた。昨夜のことについて彼は何一つ触れなかった。それでも、これほど何も語らない人だと知っていても、ザッシュはもう十分に彼のことをわかっていた。自分のしたことには必ず結果が伴うと、確信していた。
彼に逆らったのは初めてだった。考える間もなかった。ただご主人様が危ないと思って、本当に死ぬかもしれないと信じた……でも、事実は変わらない。以前から戦いに出るのはまだ早いと言われていた。あの夜は後ろに残れと命じられた。それに正反対のことをした。今何を考えているかはわからないが、あのことを忘れるような人でないことだけは、はっきりとわかっていた。
もう一つ気になっていることがあった。ザッシュはついに口を開いた。
「ご主人様、昨日の弓手のことですが……」
どう言えばいいかわからなかった。こんな状況だというのに、もう黙っていられなかった。
「……わたしの父です」
ご主人様は何も言わず作業を続けた。しばらくして、反応のなさに少し戸惑いながら、ザッシュは続けた。
「見た瞬間にわかりました。彼の中に自分の血を感じました。わたし……言わなければならないと思って」
「わたしが探しているのはあの男ではない」
驚いたが、ほんの一瞬だった。父が敵だとわかったと告げたときの彼の反応が怖かったのに、返ってきた言葉を聞いて、彼には自分の復讐以外のことは何も関係ないのだとわかった。わかっていたはずだ。
それでも戦いで見たあの姿の印象が、まだ消えなかった。あの矢の凄まじい力が、怖かった。
「とても強そうです」思い切って言った。「また出会ったら……」
「お前が超える。食え。準備しろ。街へ行け」
行き方を教えてもらい、銀貨の入った小さな袋と、何が書いてあるかわからない書類を受け取っていた。お母さんが子どものころに文字を教えてくれたが、これは見たこともない言葉で書かれていた。何かの指示だろうか。調合の方法か。ご主人様は詳しくは話してくれなかった。
ザッシュはずいぶん久しぶりの街への道を歩きながら、今朝の不安を引きずりつつも、これから向き合うことについて考えていた。前回一人で街を歩いたとき、ひどい目に遭ってご主人様の頼みを果たせなかった。今度は失敗できない。まして今は、もう一度彼の命令に背くことなど絶対にできなかった。街へ行くことへの気後れよりも、この仕事を失敗するという可能性の方が、とうてい考えられないことだった。
街の外れに差し掛かったとき、以前に奴隷商人の隊商が現れてきたあの場所をちょうど通った。今もしあの人たちが現れたら。ザッシュは歯を食いしばった。頭の中の邪魔なものをすべて追い払い、やるべきことだけを考えなければならない。街に入り、ご主人様の用を済ませ、家に帰る。他の人々が何を思おうと、何を言おうと、それは関係ない。迷っている暇はない。
大通りに入ると、すぐに顔がこちらへ向いた。自分でも意外なことに気づいた。怖くなかった。
いつもと同じ拒絶の目だった。あの際立って白い肌と銀色の髪と真っ黒な大きな目を持つ小さな半魔を見て、まず驚き、次いで不快そうな顔をする。決して目立たないことはないし、受け入れられることもない。しかしザッシュは顔を上げたまま、ご主人様から言いつかったことだけに集中して歩き続けた。そうしていると、目標以外のこと、すれ違いざまに自分を判断するあの人たちのことが、どうでもよくなっていくのがわかった。
家がある。懸命に働き、全力を尽くし、身を守る術を覚え、強くなり、初めて戦いの興奮も知った。あの街全体を滅ぼすことのできる怪物を、自分の手で仕留めた。見た目だけで軽蔑の目を向けてくる人たちとすれ違っていても、自分は誰もたどり着けないような勝利を重ねていた。何を思おうと自由だ。ここにいる誰一人、気にする価値さえなかった。
一度も目を伏せずに街の大部分を歩き抜けた。自分でも状況が変わったと感じていた。雑種がいることを快く思わないのは明らかだったが、侮辱の言葉も、以前のように攻撃的な言葉も、一つも飛んでこなかった。ふと、昔の自分が罪悪感を抱き、すべてを当然のように受け入れていたせいで、簡単に傷つけられる対象になっていたのかもしれないと思った。本当にそうだったかはわからない。でも、今の自分は変わっていた。二度とそうはさせない。
ご主人様の案内は正確で、迷わず店にたどり着いた。着いてみると、錬金術の店だとわかった。
「いらっしゃい……あ……お嬢さん」カウンターの奥の老人が、雑種を見て明らかに驚いた顔をしたが、すぐに落ち着きを取り戻し、動じた様子もなく真剣な表情で続けた。「ご用件は?」
「依頼を持ってきました」ザッシュは簡潔に言い、ご主人様から受け取った書類を渡した。
錬金術師は丁寧に読んでから、顔を上げて雑種を見た。
「これはかなり値の張る品でございますよ、お嬢さん」
彼女は何も言わず銀貨の入った小さな袋を取り出し、開けて中身を見せた。老人の目が大きく見開かれた。それだけ確認すると、袋を閉じてまたしまった。
「これは問題ございませんね」と彼は初めて微笑んだ。「調合に少し時間が必要です。昼過ぎにまたお越しいただければ、ご用意できております」
ザッシュは頷いて扉へ向かった。錬金術師の声が呼び止めた。
「お嬢さん」と彼は言った。「老人の助言を聞いていただけるなら、お行きになる場所には気をつけて、お金は誰にも見せないように。お気をつけて……せめて私への支払いが済むまでは」
雑種は一瞬振り返り、あの老人を見た。彼は見送りの笑みを残して奥へ消えた。
ほぼ昼になったころ、メラとハノトの店に着いた。二人ともそこにいた。メラは工具を包んでいて、ハノトは客と話していた。ハノトが目を丸くして口を開け、メラは感情のままに小さな叫び声を上げ、ザッシュのところまで数歩駆けてきて抱きしめた。
「来てくれたの!嬉しい、嬉しいわ!」
ザッシュは笑顔がこぼれた。街の人たちの顔に読んでいた拒絶との対比が、この喜びをさらに大きくした。ハノトの客が立ち去りながら脇を通り、隠しきれない嫌そうな顔をしているのが見えた。メラの抱擁を返しながら、それを見た。
「昼間に来るべきじゃなかったかもしれません」と少女は言った。「ご迷惑をかけたくなくて。来るとき、こっちへ向かっていた人たちがわたしが入るのを見て足を止めていました」
「気にしないで」とハノトが優しく頭に手を置きながら答えた。「こういう店はこの街に一軒しかないし、値段も悪くない。ほっておきなさい。少し話題になるかもしれないけれど、うちのお客さんは戻ってくるよ」
「一人で来たの?」とメラが聞いた。「なんか……違うわね。前より。いい方向に」
「ご主人様の使いで来ました。夕方まで時間があるので、ここで待たせてもらってもいいですか」
「メラ」とハノトが口を挟んだ。「二人でゆっくりしてきなよ。ここは俺が見てるから」
メラがザッシュに微笑んだ。
「なんて気の利く夫なの」とウィンクした。「さあ来て。お腹が空いているでしょ。来てくれたお祝いに、何か美味しいものを作りましょう」
市場でメラは一番いい食材を選んで、いい品をできるだけ安く買うコツをいくつか教えてくれた。あちこちから向けられる視線は途切れなかったが、この人と一緒にいるとザッシュはいつも、何もかもうまくいっているような気がした。こんなにちょっとしたことが自分の人生をこれほど大きく変えてしまったことが、いつも不思議だった。自分はずっと雑種だった。ただ、周りの人がそれをどう受け入れるかだけの話で……そして自分自身がどう受け入れるかの話でもあった。
家に戻ってメラが煮込みの準備をしている間、ザッシュはその指示に従って帰り道に食べるクッキーの生地を作っていた。
「そうよ。シロップを一滴加えれば完璧ね」
こんなに長い間笑顔でいたのが久しぶりすぎて、顔が痛くなってきた。街の人たちの蔑みを乗り越えてはいたが、シンプルなことをシンプルにやって楽しむこの幸せと穏やかさは、本当に大切だと感じた。人生でこんな瞬間を経験したことはほとんどなかった。ずっと宝物にしようと思った。
作業を終えて料理を少し休ませている間、二人はテーブルに座っていた。
「彼、どう?」とメラが聞いた。「ちょっと待って、答えはわかってる。何も変わっていない」
「変わっていません」とザッシュは微笑んだ。「でもご主人様はいい人です。いろいろなことを教えてくれています」
「訓練のことが少し心配だわ」とメラは眉をひそめた。「気分がいいとは言っていたけれど、無理しすぎていないの?あの人は容赦しないから」
「毎日、今日が最後かもしれないと思っています」と少女は笑った。「大丈夫です、信じているので。厳しくて何を考えているかわからないときも多いけど、とても優しくしてくれることもあって、気遣ってくれるときは驚くくらい」
メラは少し間を置いて、一人で微笑んだ。
「あの人が貴族だったって知ってた?」
「貴族?」ザッシュは目を丸くした。
「そう。国で得られる最高の栄誉を受けた人なのよ。民を代表して外交を担い、世界との交易路を開く大使に任命されたの……ただ、出来事がすべてを変えてしまったけれど」
その最後の言葉を言いながら、メラの顔が曇るのが見えた。
「いつかあなたもその話を知ることになると思うわ」と再び微笑んだ。「すべては時間を追って。さあ、あの厳しい人と鍛錬しているなら、たくさん食べないとね。ハノトに、食事ができたって呼んできてもらえる?」
メラとハノトはいつもと変わらぬ温かさで見送ってくれた。ザッシュは遠ざかりながら最後にもう一度振り返って手を振り、今日の訪問でクッキー以上のものを持ち帰ると思った。
錬金術師の店で、大きくてかなり重い袋を受け取った。中には何か……金属の粉のようなものが入っていた。銀色に光り、光を反射して輝いていた。
「最上の品でございますよ、お嬢さん」と老人は支払いを受け取りながら言った。「ご満足いただけます」
ザッシュはその荷物と、メラと一緒に作ったクッキーの袋を持って帰り道についた。ご主人様に持っていきたかったが、彼は食べない。
貴族。これまで見たことはなく、子どものころに聞いた話でしか知らなかったから、彼がその言葉にどれだけ当てはまるかはわからなかった。でも考えてみると、あの冷たくて厳しい外見の下に、これまで接してきた農民たちとは違うものがあった。今の暮らしや復讐のことは別にして、一緒に生きる日々の中にあるものを、これからは違う目で見るだろうと思った。
帰り着いたのはまだ明るいうちで、ご主人様はいなかった。錬金術師からの荷物を置いて訓練の準備をしようとしたとき、弓がないことに気づいて、どこで失くしたかを思い出した。また不安が全身を走った。弓を新しく作ってもらうことになるかもしれないという話を、ご主人様にとても持ち出せなかった。いつか起きると思っていたことが必ず来る、それはわかっていた。あの人は何でもするかもしれない……追い出すことも含めて。そう考えただけで震えた。もしかしたら用を済ませたら終わりにしようと、すでに決めていたのだろうか。
いや、考え続けていても意味がない。彼に拒まれるかもしれないという考えは心の奥底まで怖かったが、彼の頭の中は実際にはわからないし、これ以上不安になっても何も解決しない。木の剣を持って、森の空き地へ向かった。
ご主人様がそこにいて、双剣を両手に持ってゆっくりとした動きで稽古をしていた。こういう種類の稽古を見るとき、いつもうっとりして引き込まれた。技の一つ一つに優雅さと精密さがあった。空気を切る刃の軌跡を構成するすべての瞬間を分解して分析しながら、それでいてすべてが合わさると、こうでなければあり得なかったかのように自然な一撃になる。目が離せなかった。
「戻りました、ご主人様。ご注文の品をお持ちしました」
戦士がわずかに振り返り、横目で見た。
「木剣」
少女は一瞬瞬きをして、木の剣を差し出した。
彼は木剣の中央を強く握り締めると、拳に力を込めて一瞬でへし折った。ザッシュは自分が砕け散るような衝撃を受けた。
「もう使うな。戻れ」
◆◆◆
読み続けてくださり、ザッシュの物語のここまで辿り着いてくださり、本当にありがとうございます。作者である私にとって、このキャラクターはとても大切な存在です。小説全体を通して、彼女はまるで生きた本物の人間のように感じられました。彼女が苦しむときは本当に胸が痛く、幸せな瞬間や成長の場面では心から嬉しくなりました。
今、私は彼女にとても共感できる場面で物語が止まっています。人生において、自分の行動の責任を取らなければならないと知りながら、難しい決断をすることがあります。ザッシュはルールを破り、ご主人様の命令に明確に背きました。そして死影のような融通の利かない人物を相手に、今は結果を待たなければならないことを彼女自身もわかっています。そして彼女の予感は間違っていません。




