第10話
第22章
空き地だったが、ザッシュがこれまで取り組んできた障害物からは少し離れた場所だった。ご主人様は枝を手に持ちながら話し始めた。
「お前の体は小さく、魔族としてもまだ若い。今の状態では力任せの戦いになれば、強い人間の相手でも不利になる。自分より大きく古い魔族には大きく劣る。お前の最大の武器は速さ、自分自身と周囲の要素への支配力、そして状況を分析して判断する力だ。敵を読み、その弱点に合わせて戦い方を変える。その柔軟性が勝利をもたらす」
彼が戦うのを千回は見てきた。巨大な怪物を叩き潰し、不死身に見える存在を滅ぼすのを。あの捕食者の目で、すべてを薙ぎ払うのを。それを知っていても、今この瞬間のご主人様はこれまで見た中で別格だった。その存在感は圧倒的というより、絶対的だった。
「学ぶ武器は三つだ。弓、剣、そして己の体。しかし技術だけを極めても意味がない。より優れた技術には敗れる。精神と魂のレベルで、完全に極めよ。そのためにはまず、それらをより高い境地で捉えることから始める」
枝で地面に奇妙な図を描きながら、淡々と話し続けた。
「弓の道は三つの段階で進む。それぞれを一本の線で結んだ象徴として思い描け。始まりはお前自身が弓と完全に一体となった姿だ。弦は張られ、矢は飛び立つ瞬間を待っている。中間はお前が選んだ軌道が空気を音もなく貫くもの。そして終わりはお前の目標だ。それはお前の心の中でその場所に当てると決めた瞬間から、すでに射貫かれている。
剣の道は五つの輪として、五つの要素で表す。大地は安定を象徴する。水はどんな障害も貫いて目標に到達する。水のように。風はお前が動くときの姿そのものだ。火は敵を焼き尽くす一撃。空は、これらすべてを結ぶものだ。
己の体の道は、二つに分かれた一つの円として生きよ。ずっとその中にあった人間の半分と、まだ知り始めたばかりの魔族の半分。筋肉の一本一本、血管を流れる最後の一滴まで完全に支配する。二つの性質を極め、境目を消す。それこそが、お前を無敵にする」
ザッシュはその言葉に引き込まれるように聞いていた。ご主人様がこんなふうに話すのを聞いたことがなかった。無限の力を持つこの人が、必要ないように見えるのに毎日訓練を続ける本当の理由が、このとき初めてわかりかけた。
「この先に戻り道はない。お前は二度と元の自分には戻れない。最初の部分はわたしが共に歩む。以降はお前一人だ。質問は?」
「ご主人様、でも……全部習得するのにどのくらいかかりますか?いつになったら完全に準備が整いますか?」
冷たい眼差しはまったく変わらないまま、一言でそれを打ち砕いた。
「決してない」
第23章
あの日にご主人様が言ったことの中で、時間が経つにつれてザッシュが最も正しかったと思い知ったのは、元の自分には二度と戻れないという言葉だった。
彼女は完全に新しい道に身を捧げていた。目が覚めてから、狩りでぼろぼろになって戻ったご主人様を寝台に休ませるまで、戦士として成長すること以外には何もなかった。料理も、洗濯も、それまでザッシュがやっていた家のことはすべてご主人様が引き受けた。ザッシュがひどく疲弊していて自分で体を洗う動きも満足にできないとき、盥に入れてくれて香り石でこすってくれる夜も多かった。入浴のわずかな休息で、なんとか門をくぐって魔族を引きつけるだけの力が出る日もあった。しかし朝、目が覚めると、湯に入った後の記憶がほとんどないこともしばしばだった。
辛く、苦しい瞬間も多かった。それでも、これが自分の選んだ正しい道だと、強く感じていた。ご主人様の指示の一字一句に全力で従い、口答えなど一度もしなかった。最初から毎日自分の限界を超えていること、体と心がそのきつさにも勝利にも慣れていっていることをはっきり感じていた。よくできても褒美はなかった。できること自体が報酬だった。目標への一歩。
ご主人様は極めて厳しい師だった。何度か、このまま壊されてしまうかもしれないと思うことがあった。しかし彼は常に限界がどこにあるかを正確に把握していて、そこまで連れていきながら、決して越えなかった。ザッシュは走り、跳び、重いものを運び、動きを繰り返し、弓、木の剣、自分の体で練習し、内面を磨くための時間も多く過ごした。転び、倒れ、打ちのめされ、爆発しそうになり、体のあちこちに痛みが走った。やがてそれも気にならなくなるほど当たり前になった。それでもご主人様が自分を傷めつけているとも、必要のない苦しみを与えているとも、一度も感じなかった。彼は言った通りだった。ただ、共に歩んでいた。自分が選んだ道に。戻り道のない道だった。
あの長い修行の、成長の、成熟の日々にも、一つだけ変わらないことがあった。実戦はなかった。二人はずっと二人きりで、ザッシュは森を離れなかった。ご主人様が街へ買い出しに行くのは稀で、そのときは彼女一人に課題や訓練を残して出かけた。
留守番が嫌なわけではなく、むしろ好都合だった。洞窟はもう家だった。森のすべてが手に取るように把握できていた。訓練と内面の鍛錬が生活を満たしていた。それで十分だった。ご主人様にとっては力を磨くための必要な時間であっても、ザッシュにとってはこれまで多くの苦しみをもたらした人々と関わらずにいられる格好の理由だった。
できることなら狩りを手伝いたかったが、一度だけ頼んでみると、ご主人様はまた「準備ができていない」と答えた。もっと強くなったし多くを学んだと食い下がると、「ならぬ」と一言で終わった。
すべてはあの夜まで変わらなかった。彼に背いた夜まで。
第24章
水浴びから戻ると、ご主人様は狩りの装備を整えているところだった。すでに短めの剣を背中に負い、今は長剣を腰に固定しようとしていた。あの剣が彼の手の中でいつも軽そうに見えるのが不思議だった。何度か手にしたことがあるが、持ち上げるのがやっとなほど重かった。ザッシュはまだ稽古に木の剣を使っていた。本物の剣はいつ使えるのかと聞いたとき、ご主人様は謎めいた答えを返していた。「お前の剣は特別だ。その時が来れば、お前が知ることになる」。疑問が増えるだけだったが、しつこく聞いても意味がないことはよくわかっていた。
準備が整い、二人で通路に入った。ご主人様が岩の絵の上でいつもの手の動きをすると、紋様が輝いて門が開いた。向こうには毎回違う場所が現れ、どうやって行き先を選んでいるのかザッシュにはわからなかった。ただ、故郷の神聖な大地の外へは行けないことは知っていた。それはただの移動手段ではなく、家への扉だった。
向こうに現れたのはよく知っているあの焦げた荒野だったが、この場所は初めてだった。小さな丘に挟まれた細い谷だった。中央に、周囲とわずかに色の違う土と岩の筋が走っていて、かつてそこを細い川が流れていたかのように見えた。今は何も残っていなかった。
正面に魔獣の群れがいた。何かを囲んで貪っている。何を食べているのかとザッシュは思った。これまであちらで見たのは魔獣と灰だけで、獲物になるものは見当たらなかったはずだ。距離があって正確な大きさはわからなかったが、大きかった。そのうちの一体には目立つ翼があった。
「待て」死影が、門のこちら側に留まるよう合図した。
彼一人で出ていった。今日はザッシュが渡っても役に立てない。門を越えれば魔族に気づかれてしまうだけだ。狩人はゆっくりと静かに、目標に向かってまっすぐ進んでいった。
群れに近づくと双剣を抜き、翼のある魔獣に向かって大きく跳んだ。逃がさないためにまず先手を打ったのだ。短い方をその背中に突き立て、強烈な一撃で翼の一方を根元から断ち切った。
耳をつんざく雄叫びに残りが跳び上がった。全部で五体いたとわかった。今は四体が戦える。三体になった。他が体勢を整える前に死影が後方へ跳んで空中で身を翻し、一閃で別の一体の首を断った。
残りの反応は素早かった。まだ着地もしていないうちに、斬り倒したそばにいた最も大きな一体の猛烈な打撃がまともに当たった。短い距離を吹き飛んで転がり落ち、少しの間動かなくなったが、また立ち上がって敵をじっと見据えた。その目が何を映しているか、この距離でも見えなかった。見えなくてもわかった。
そのとき一変した。立ち上がろうとしていたご主人様の背中に、上から矢が突き刺さった。打たれたように倒れ込んだが、矢は戦闘服を貫けずに弾き飛んだ。
ザッシュは声を上げた。あれは何だ。痛みをこらえながら立ち上がろうとしているご主人様を見た。あの装備がなければ胴体を貫かれていた。次の矢が電光石火で飛んできて頭を掠めそうになり、死影は長剣を空中に手放して前腕のブレスレットの盾で矢を弾いた。かろうじて間に合ったが、衝撃で全身が揺れて地面に留まった。
その間にも魔獣たちが近づいてくる。全速で転がりながら同時に長剣を拾い直し、素早く短い方を背中に収めた。今度は腕が自由になり、頭めがけて飛んできた三本目の矢をどうにか弾いた。最初の攻撃から、謎の敵はそこを狙い始めていた。
最も大きな魔獣がもう届くところにいた。まだ地面にいるうちに胸を押し潰そうと爪が降りてきたが、死影はそれが落ちてくる瞬間に足を貫いて崩させた。魔獣が痛みに吠えながら倒れた。残りの二体はもう目の前だった。狩人は立ち上がろうとするが思うようにならず、胸と片足を狙う矢を二本さらに弾き続けた。敵は直接倒せないとわかって、魔獣に仕留めさせるために地面に縫い留めようとしていた。それは成功しかねなかった。ザッシュの焦りは増すばかりだった。
これまでとは違う展開だった。これまでの夜は、荒野に残った魔獣を狩り清める作業だった。しかしこれは正面からの戦闘に変わっていた。ご主人様が最も強いことに疑いはなく、一対一の直接対決では誰も比べものにならないとわかっていた。しかしこれは伏撃に変わっていた。しかも隠れた弓手が傑出していた。かなり遠くにいるはずなのに一矢も外れず、放つ矢はどれも恐ろしい威力を持っていた。ザッシュは入口の壁にしがみついたまま、どうにもできないまま焦りが限界に達していた。
死影はどうにか立ち上がろうとしていたが難しかった。他の魔獣はもうそこまで来ていて、矢の雨は止まなかった。やがて好機が訪れた。一体が飛びかかってきた。そのとき彼は後ろに転がり、巨体が上に落ちるのをかろうじて躱した。それを利用した。足場として一瞬片足をしっかり地面に踏み込み、跳び上がって立ち上がった魔獣の陰に入り矢から身を隠した。
そのはずだったが、うまくいかなかった。次に起きたことにザッシュは心臓が止まりそうになった。矢が盾にした魔獣の胴体を貫通してその胸部を吹き飛ばし、そのまま飛んでご主人様の胸に直撃した。またも戦闘服に救われたが、衝撃はあまりにも激しく、転がったまましばらく起き上がれなかった。ようやく動き始めたときには、明らかに以前より動きが鈍っていた。残った二体の魔獣が再び向かっていく。
もう我慢できなかった。本当にご主人様が死ぬかもしれない。何が起きているかを考える余裕はなかった。
走って通路の出口まで戻り、自分の装備へと向かった。弓と矢筒を掴んで全速で引き返し、背中に担ぎながら門へ飛び込んだ。
向こうに出た瞬間、体が固まった。
第25章
残る矢は一本だけだった。もはや、これで十分と思われた。
敵は明らかに深手を負っており、最後の一撃は致命的だった。確かに並外れた強さを持つ相手だったが、今は詰んでいた。これほど長い時を経て、ついに機が来た。陛下もご満足されるだろう。
ナドレルは微笑んだ。陛下が待ち望んでいたものだ。あの人間は魔石を持っているに違いない。あれほど突出した能力に対して、他に説明がつかない。これで話が早くなった。その場で仕留め、骸から魔石を奪い、主君のもとへ届ければよい。あの戦士が何者であるかは知らないし、知る必要もなかった。かつての侵攻で果たせなかったことを、今こそ自らの手で成し遂げる。その日が来た。
最後の矢を放つ機を、もう少しだけ待った。これほどの距離があっても高所から状況を完全に掌握しており、魔石の担い手といえども今の状態ではこちらの二体の獣を相手に優位には立てない。獣たちが打ちかかり、敵はかろうじて身を守るが、もはや反撃さえままならなかった。
今だ。瞳の赤い光が強まり、白い肌と長い銀の髪の上でひときわ際立った。弦を引き絞り、頭部に狙いを定め――
何だ、これは。
驚愕で反応が遅れた。あれは何だ。感じる……
突然、誰かが現れた。……魔族か?いや――若い、娘だった。魔族の気配がある。しかし人間のものも。焦り、恐れ、意志、決断。切迫感。心臓が限界まで高鳴っていた。そして……驚き?
娘は全速で駆け出していたが、自分の存在を感じ取ったのだとわかった。一瞬、ぴたりと止まった。これほど離れていても、視線は確かに交わった。
娘だった。
第26章
父だった。
しかし今はご主人様が危ない。ザッシュは再び全力で駆け出した。
全部で七体。遠く高所にいる弓手、戦闘中の五体の魔獣、そして少し前に死んでいた一体。何を食べていたのか、今わかった。
彼女が門をくぐった瞬間、まだ戦っていた二体が驚いて動きを止めた。一体がこちらへ向き直った。そのわずかな隙をつき、地面にいたご主人様が残りの一体に攻撃を仕掛けた。剣で足を横一文字に貫き、魔獣は痛みに絶叫しながら崩れ落ちた。
こちらへ向き直った一体が迫ってくる。弓手のことを一瞬考えた。彼女が現れた瞬間、驚きを感じた。しかし今は違う。待っている。計算している。
今はそれどころではなかった。
奥ではご主人様が足を貫かれた魔獣に飛びかかっていた。こちらへ迫る一体を見ると、足を引きずっていた。先ほどご主人様に足を貫かれたものだ。それはよかった。
走りながら矢を放った。胸に当たった……しかしかすり傷にもならなかった。あの怪物の皮膚は硬すぎる。
一瞬立ち止まり、ザッシュは驚いた。傷もつけられないなら、どうやって戦えばいいのか。
判断を、今すぐ下さなければならない。どうする。再び走り出し、魔獣が足を引きずっている側へ回り込みながら次の矢を取って弓を引き絞った。もう数歩の距離まで近づいたとき、魔獣が獰猛な形相で突進してきた。飢えを感じた。汗の匂いがした。自分を引き裂こうとあの恐ろしい牙が開く瞬間、唾液の飛沫を感じた。失敗は許されない。外せば死ぬ。
その瞬間、頭の中が静寂に満たされた。
初めて、長い時間を経て、ご主人様に背いた。初めて、本当に彼が危ういと感じた。初めて、戦いに加わった。初めて、敵と向き合った。圧倒的に上の相手だった。死にかけたことはこれまでにもあった。しかし今、初めて自分には戦う力があった。敵を殺す力が。
『始まりはお前自身が弓と完全に一体となった姿だ。弦は張られ、矢は飛び立つ瞬間を待っている。』
時が止まったようだった。静かだった。準備は整っていた。
『中間はお前が選んだ軌道が空気を音もなく貫くものだ。』
心の目で、矢が進む完璧な軌道が見えた。外すはずがないと、確信していた。
『そして終わりはお前の目標だ。それはお前の心の中でその場所に当てる と決めた瞬間から、すでに射貫かれている。』
ご主人様が言った通りだった。あの怪物はもう死んでいる。矢は右目から斜め上へと入り、頭の内側を破壊する。ザッシュは確信の中で矢を放ち、突進をかわすべく跳んだ。かすりそうなほどの間合いで躱した。少しでも立ち止まっていれば、あの巨体に潰されていた。しかし必要なかった。放つと決めた瞬間に、相手はもう死んでいたのだから。魔族の本能がそれを確かめ、倒れた後はもう動かなかった。
やったことを受け止める間もなかった。足が地面に触れた瞬間、体が持ち上げられて後方へ運ばれた。驚いて弓を手放した。遠ざかりながら、それが落ちていくのを見た。
ご主人様だった。すべてがあまりにも速く、来るのに気づかなかった。腕を胴に回し、何でもないように抱え上げたまま走っていた。反応してその腕にしがみつき、顔を見た。氷のような目が前を向いている。顔は血まみれだった。
そしてご主人様の肩越しに、遠く高所に、あの上位魔族が――父が――弓を構えてこちらに狙いを定めているのが見えた。
「ご主人様、撃ちます!」叫んだ。
「まだだ」と彼は答えた。
その通りだった。なぜわかるのかはわからなかったが、本能がご主人様の言葉は正しいと告げていた。父は待っていた。心臓がほぼ止まりそうになるほどの集中を感じた。逃がすまいとする内側の怒りを、焦らないという規律が抑え込んでいた。撃つつもりだ、ただ……
そのとき、ご主人様が自分を少し持ち上げ、頭で敵の視線を遮った。今だ。彼が機を見出したのを感じた。父が矢を放ち、それとともに血への渇望を解き放つのを感じた。瞬時にわかった。あの弓手が何を待っていたかが。二人を一本の矢で貫くつもりだった。頭が並んだ瞬間を狙っていた。
そしてご主人様はそれを知っていた。知っていたのだ。ちょうどその体勢に自分を抱え、貫通しない戦闘服で守られた自分の体で彼女の頭を隠しながら、敵が期待を持てるほど十分に近づけたまま保ち――そして遅すぎる瞬間に、持ち上げた。正確に、彼が決めたその瞬間に。
父が矢を放つのを感じた。自らの力への確信を感じた。矢が軌道を描き、二人に迫る――勝利の予感が広がる……そして何もなかった。
門をくぐっていた。
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最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この章はザッシュにとって大きな転換点です。初めて自分の意志で行動し、父との運命的な出会いを果たします。彼女の成長と、これから訪れる激しい展開を、どうぞこれからもお楽しみください。




