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逢瀬は、プラットホームで。  作者: 椎名美雪
第四章
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嘘をついているのは

 もしかしたら、会社を辞めることになるかもしれない。それは、友達にさえ話さなかった。


 まだ決まっていないし、混乱させるのも嫌だったから。いつものように仕事をして、友達と笑って、ごく普通の生活をしていたい。


 そして、別件で誰にも言わず、ずっと悩み困っていたことがある。

 私自身は離れたつもりでも、向こうはそのつもりがない。教団で、私を支配する立場にある、成田さんの存在。


 彼女には、当然“取り巻き”がいる。

 井沢さんほどではないにしても、多少の権力みたいなものはあった。


 毎日ではないけど、自宅への電話は多かったし、日曜日には自宅に押しかけて来ることもあった。

 平日夜の電話は、私がまだ帰宅する前に掛かってきたりすると、当然母が出ることになる。


 帰宅した私に、


「また、成田さんて人から電話があったわよ」

「そうなんだ」

「よく掛けてくるけど、あの人、なんなの?」

「うん、会社の知り合い」


 そんなことが日課になりつつあって、母は不信感を募らせた。常識で考えても、怪しいことは解る。友達でも、なんでもない人から、何故これほどまでに電話が掛かるのか。まして、親なら心配して当然だと思う。



 ある日曜日。

 自宅にいた私は、仕方なく、訪ねてきた成田さんと取り巻きの人たちに会った。

 玄関先では、親に聞かれてしまう。慌てて敷地から道路へと連れ出して、話をすることにした。


「本当にもう、困るんです。お願いですから、来ないでください。電話も掛けてこないでください」


 あまり気が強くない、むしろ弱い方の私だったから、そう言っただけでも頑張った方だった。

 しかし、彼女たちがそれで諦めるはずがないと解っていた。


「私達は、何度でも来ますよ」


 その据わった眼差しに、私はゾクリとした。


(この人たちの上に、井沢さんがいるんだ――)


 いつも見せてくれる彼の表情と、少しもリンクしない。

 思い出してみれば、前に私を勧誘してきた時の彼は、こういう目をしていた。


 でも、でも……こんな表情、もうずっと見ていない。

 鼓動が嫌な音をたて始める。

 そして、成田さんは、最後に私にこう言った。


「井沢さん、困っていましたよ。椎名さんが来ないって。だからこうして、私達が迎えに来ているんじゃないですか」


 ……どういうこと?


“もう無理には誘わない”って言っていたのに。

 私の気持ち、解ってくれているはずなのに。


 嘘をついているのは、誰?

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