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逢瀬は、プラットホームで。  作者: 椎名美雪
第三章
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時間よ、止まれ

 誕生日プレゼントに買ってもらった、指輪を着けての初出社。

 傍からすれば、ごく普通のシンプルなファッションリングだけど、私としては結構恥ずかしかった。


 普段から、手持ちのリング付け替えたりして、毎日楽しんでいた。自分で買ったり、親に買ってもらったりして、いくつかは持っているけど、これは外せなくなりそうで。


 出社するや否や、お約束の友達集団が声を掛けてきた。


「なに買ってもらったのー?」


 いつものように冷やかされて、急に井沢さんを思い出した。


 

 店を出た後のこと。


「またアイツらに、何か言われるんだろうな、俺」


 苦笑いを浮かべていたっけ。


 確かに、男性には理解出来ないんだろうな。女性はお喋りだからね。


「うん。黙っていたほうがいい、よね?」

「どうせ、言ってあるんだろ? 今日のこと。俺と会うとか、どうとか」


 言い当てられて、ギクリ。私の行動パターンは、読まれていた。


「あはは。うん、そうなんだけどね……」

「それじゃ、話さないわけにいかないだろ」

「――だよね。ゴメンナサイ」


 私まで苦笑い。

 謝るしかなく、それ以上は返せない。


「でもまあ、アイツらになら、いいか」


 そう言ってくれた井沢さん。私の友達を、悪くは思っていないという事だよね?

 そのことが、とても嬉しかった。


 ――と、こんなやり取りがあり、例のごとく、掻い摘んで報告をする。

 私が一番驚いていることだけど、友達も揃って驚いていた。


「へーー……」


 長い溜息のような、声のような。みんなが私の右手に注目している。


「井沢さんて、不思議だよね。いきなり指輪にいく? 普通」

「一気に飛びすぎ」


 褒めているのか、貶しているのか、散々なことを言われてから、「で、なんで右手なのよ。左手じゃないの?」当然というように言って来られて、困ってしまった。


 右で良いと言っても、納得しない友達と、ワイワイ話した。


 井沢さんも覚悟はしていたようだけど、“聞いたわよ~”みたいな眼差しと口調で、「おはようございまーす!」なんて、友達に声を掛けられると、笑って頷くしかなくて、私も一緒に笑ってしまう。


 ……この頃が、一番楽しかった。



 年が明けてから、井沢さんと私を取り巻く環境が、少しずつ変わり始めた。

 砂時計の砂が落ちるように、静かに、時間は確実に、進んでいく。

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