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逢瀬は、プラットホームで。  作者: 椎名美雪
第三章
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似合ってる

「うん……色々あるね」


 一旦頷いて、彼を入口近くの、私がさっきまで見ていたピアスの所に連れて行きたいのに、動いてくれない。


「どれか、選んだら?」


 事もなげに言う井沢さんの腕を、もう一度引っ張る。“何を言っているの!?”と、表情で訴えたけれど……。


 店内には、他にもお客さんがいたけれど、賑やかとは離れたお店だし、あまり大きな声は出せない。


 声を潜めて、私は首を横に振る。


「リングは――……」

「え? ダメなのか?」

「ダメっていうか……普通は――……」


“普通は、大切な人に贈る物でしょう?”――そう言いそうになって、口を噤んだ。

 状況が二転三転して、もう私の頭はグチャグチャ。バレッタをプレゼントしてもらうはずが、どう転んだら指輪になるの?


 私には、もう何がなんだか判らない。正解が何なのか、何処にあるのかが見えない。



 彼氏から指輪を贈られるって、若かった私の憧れだった。

 でも私は彼女じゃないし、井沢さんの真意は図れない。私が考えるような、深い意味は無いかもしれない。


 それを素直に喜べと言うの?


 でも、本人が良いって言っているんだし、良いのかな――。


 これはきっと、“最初で最後”の誕生日プレゼントになる。そんな予感がした。


「ホントに、いいの?」

「うん、好きなの選んでいいよ」

「でも、最初のより、高くなっちゃうよ?」

「そんなの、気にしなくていいから」

「……いくらまでとか、ないの?」

「いいよ。いくらのでも」


 なんでそんなに、余裕の笑顔なの?

 私だけが恥ずかしくて、彼を見られない。


 目についた、シンプルな金色のリングを出してもらって、着けてみる。とりあえず、サイズは大丈夫。恥をかかなくて良かった。


「うん。似合う、似合う」


 あの優しい笑顔で言われると、耳まで一気に熱が上がる。きっとまた、井沢さんは、私の反応を楽しんで見ている。


 それでも私は、ただひたすらに「井沢さんが大好き」と、胸の奥で呟いていた。

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