似合ってる
「うん……色々あるね」
一旦頷いて、彼を入口近くの、私がさっきまで見ていたピアスの所に連れて行きたいのに、動いてくれない。
「どれか、選んだら?」
事もなげに言う井沢さんの腕を、もう一度引っ張る。“何を言っているの!?”と、表情で訴えたけれど……。
店内には、他にもお客さんがいたけれど、賑やかとは離れたお店だし、あまり大きな声は出せない。
声を潜めて、私は首を横に振る。
「リングは――……」
「え? ダメなのか?」
「ダメっていうか……普通は――……」
“普通は、大切な人に贈る物でしょう?”――そう言いそうになって、口を噤んだ。
状況が二転三転して、もう私の頭はグチャグチャ。バレッタをプレゼントしてもらうはずが、どう転んだら指輪になるの?
私には、もう何がなんだか判らない。正解が何なのか、何処にあるのかが見えない。
彼氏から指輪を贈られるって、若かった私の憧れだった。
でも私は彼女じゃないし、井沢さんの真意は図れない。私が考えるような、深い意味は無いかもしれない。
それを素直に喜べと言うの?
でも、本人が良いって言っているんだし、良いのかな――。
これはきっと、“最初で最後”の誕生日プレゼントになる。そんな予感がした。
「ホントに、いいの?」
「うん、好きなの選んでいいよ」
「でも、最初のより、高くなっちゃうよ?」
「そんなの、気にしなくていいから」
「……いくらまでとか、ないの?」
「いいよ。いくらのでも」
なんでそんなに、余裕の笑顔なの?
私だけが恥ずかしくて、彼を見られない。
目についた、シンプルな金色のリングを出してもらって、着けてみる。とりあえず、サイズは大丈夫。恥をかかなくて良かった。
「うん。似合う、似合う」
あの優しい笑顔で言われると、耳まで一気に熱が上がる。きっとまた、井沢さんは、私の反応を楽しんで見ている。
それでも私は、ただひたすらに「井沢さんが大好き」と、胸の奥で呟いていた。




