プレゼント選び
ジュエリーショップの前で、私は立ちすくんでしまった。
さっきは、咄嗟に「高いからダメ」という風に、拒否していたけれど、本当は、そんなことじゃない。
やっぱり女性にとっては、異性から、好きな人から贈られる「ジュエリー」は、特別だと思う。それが安物でも、小さな物でも。
そして、それを貰う事は大きな意味が伴うと思っていたから、困惑するのは当然。井沢さんには、大したことではないのかもしれない。もしかしたら、ジュエリーは“特別”という概念が無いのかもしれない。
……もしかしたら、女性に贈った事ないとか?
だから、私は心から戸惑ってしまった。
「ほら、こんなの。似合うんじゃないか?」
井沢さんは笑っているけど、私の複雑な胸の内は――きっと、解っていない。
「こういうの、嫌いか?」
「まさか。嫌いなわけないよ」
その時もピアスを着けていたし、ジュエリーが嫌いなはずがない。
戸惑っている私に、本当に気付かなかったの?
いつのもように、彼は私を引っ張っていく。
個人的にも、こういうショップは好きだし、自分で買うこともある。でも、何が欲しいかも判らずに入るのは苦手だった。
“店員さんの仕事”とは解っているけれど、少し見たいだけなのに、声を掛けられてしまうと、チョット……。
変に目をつけられたら帰り難くなってしまうのに、半ば強引に踏み入れたけど、どうしたものか。
ほら、店員さんが来ちゃった。
珍しいのか、井沢さんは楽しそうにケースの中を鑑賞中。
もう、人の気も知らないで。
多分、店員さんに余計なことを言われ――……
「クリスマスのプレゼントですか?」
ほら、やっぱり聞かれたじゃない!!
そこで私は、機転を利かし素早く返した。
「いえ。誕生日なんです……。私の……」
「そうなんですか! おめでとうございます」
「ありがとうございます」
ニコニコと愛想よくしている店員は、私と井沢さんを交互に見る。
(違いますよ。その人は、彼氏じゃないんです)
そんな風に、心で否定する自分が悲しい。他の場所では、恋人のように見られたら嬉しいはずなのに、今は息苦しくて堪らない。
ここに異性と来る人は、きっと愛し合っている同士なはず。どうにも苦しくて、私は顔が上げられなかった。
もう、私達二人がどんな関係かとか、井沢さんにとって、私はなんなのかとか、そういうことを気にしないように、自分をコントロール出来ていたのに。
お互いに負担にならないように、フランクな関係になろうと思っていた。
それなのに。
私の密かな葛藤を知るはずのない店員は、それからもあれこれと勧めてくる。
「ピアスをお探しですか?」
「こちらに、ネックレスとリングもございます。よろしければ、お出ししますよ」
愛想笑いでその場をしのいだ私は、とりあえず、ピアスを選ぶことにした。
ピアスだけがズラリと並んだ、ケースに目を凝らす。
(うん。そんなに高くはないし、ピアスくらいなら良いかな)
さっき見ていた、バレッタとあまり変わらない値段だからと、自分自身に妥協をして、言い聞かせる。
さて、井沢さんは――というと、今度は奥の店員に捕まっていた。
顔を上げた私と目が合うと、彼はいつもの調子で呼びつける。
店の中ほどにあるケースを見ていた。
何を見つけたんだろう?
「どうしたの?」
私が近づくと、店員は場を外した。
変に気を利かせてくれなくても、いいんだけど。ケースに肘をついて、見ている彼の隣にやってきた。
「いや、結構色んなのがあるなーと思って」
そう言う井沢さんが見ていた物……。
ケースを覗き込んだ私は、思わず彼の腕を強く引っ張った。




