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逢瀬は、プラットホームで。  作者: 椎名美雪
第三章
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プレゼント選び

 ジュエリーショップの前で、私は立ちすくんでしまった。

 さっきは、咄嗟に「高いからダメ」という風に、拒否していたけれど、本当は、そんなことじゃない。


 やっぱり女性にとっては、異性から、好きな人から贈られる「ジュエリー」は、特別だと思う。それが安物でも、小さな物でも。

 そして、それを貰う事は大きな意味が伴うと思っていたから、困惑するのは当然。井沢さんには、大したことではないのかもしれない。もしかしたら、ジュエリーは“特別”という概念が無いのかもしれない。


 ……もしかしたら、女性に贈った事ないとか?


 だから、私は心から戸惑ってしまった。


「ほら、こんなの。似合うんじゃないか?」


 井沢さんは笑っているけど、私の複雑な胸の内は――きっと、解っていない。


「こういうの、嫌いか?」

「まさか。嫌いなわけないよ」


 その時もピアスを着けていたし、ジュエリーが嫌いなはずがない。

 戸惑っている私に、本当に気付かなかったの?


 いつのもように、彼は私を引っ張っていく。


 個人的にも、こういうショップは好きだし、自分で買うこともある。でも、何が欲しいかも判らずに入るのは苦手だった。


“店員さんの仕事”とは解っているけれど、少し見たいだけなのに、声を掛けられてしまうと、チョット……。


 変に目をつけられたら帰り難くなってしまうのに、半ば強引に踏み入れたけど、どうしたものか。


 ほら、店員さんが来ちゃった。



 珍しいのか、井沢さんは楽しそうにケースの中を鑑賞中。

 もう、人の気も知らないで。


 多分、店員さんに余計なことを言われ――……


「クリスマスのプレゼントですか?」


 ほら、やっぱり聞かれたじゃない!!

 そこで私は、機転を利かし素早く返した。


「いえ。誕生日なんです……。私の……」

「そうなんですか! おめでとうございます」

「ありがとうございます」


 ニコニコと愛想よくしている店員は、私と井沢さんを交互に見る。


(違いますよ。その人は、彼氏じゃないんです)


 そんな風に、心で否定する自分が悲しい。他の場所では、恋人のように見られたら嬉しいはずなのに、今は息苦しくて堪らない。


 ここに異性と来る人は、きっと愛し合っている同士なはず。どうにも苦しくて、私は顔が上げられなかった。


 もう、私達二人がどんな関係かとか、井沢さんにとって、私はなんなのかとか、そういうことを気にしないように、自分をコントロール出来ていたのに。


 お互いに負担にならないように、フランクな関係になろうと思っていた。

 それなのに。


 私の密かな葛藤を知るはずのない店員は、それからもあれこれと勧めてくる。


「ピアスをお探しですか?」

「こちらに、ネックレスとリングもございます。よろしければ、お出ししますよ」


 愛想笑いでその場をしのいだ私は、とりあえず、ピアスを選ぶことにした。

 ピアスだけがズラリと並んだ、ケースに目を凝らす。


(うん。そんなに高くはないし、ピアスくらいなら良いかな)


 さっき見ていた、バレッタとあまり変わらない値段だからと、自分自身に妥協をして、言い聞かせる。


 さて、井沢さんは――というと、今度は奥の店員に捕まっていた。


 顔を上げた私と目が合うと、彼はいつもの調子で呼びつける。

 店の中ほどにあるケースを見ていた。

 何を見つけたんだろう?


「どうしたの?」


 私が近づくと、店員は場を外した。

 変に気を利かせてくれなくても、いいんだけど。ケースに肘をついて、見ている彼の隣にやってきた。


「いや、結構色んなのがあるなーと思って」


 そう言う井沢さんが見ていた物……。

 ケースを覗き込んだ私は、思わず彼の腕を強く引っ張った。

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