私を見つけて
駅までの道を、ゆっくりと歩いた。
彼の様子だと、三十分以上はかかると思ったから、時計を気にしつつ、駅前の雑貨屋を覗いたりして時間を過ごす。
井沢さんを待つといっても、電車に乗ったら十分も一緒にいられる時間はない。
たったそれだけの時間のために、私は彼を待っている。“待っていて” と、井沢さんに言われたら、何時間でも待ってしまいそう。
ホント、恋するのにも、パワーが必要だね。
――さてと。
もうそろそろ、来てもおかしくない時間だけど、会えるかな?
見つけてくれるかな?
面倒になって、帰っちゃうかな?
寒空の下、柱に凭れて井沢さんを待っている。
(寒いよー!)
冬の冷たい風が吹き抜けていく。冬生まれでも、寒いものは寒い!!
「ここにいたのか!」
ようやく、“隠れんぼ”の鬼さんが登場。
「寒くて死ぬかと思った」
鼻をグスグスしながら、やっと現れた井沢さんに歩み寄る。彼は、呆れたように私を見下ろした。
私が待っていたのは、プラットホームの後ろ。
「なんでこんなところにいるんだよ。ソコで待っていればいいだろう」
彼が指すのは、マックの二階席。窓際に座っている人が、コートを脱いで寛いでいる。遠目に見ても暖かそうだ。
「そうだけど、ここが良かったんだもん」
「ったく。探しただろ?」
“面倒かけやがって”な口調で、静かに叱られる。
でも……探してくれたの? そう思ったら、ちょっと嬉しくなる。
「なに笑ってんだよ」
「うん、ちょっとね」
「ヘンなやつ」
言いながら、目じりを下げている。
大好きな彼の笑顔を、近くで見れるだけで、幸せ。待っていた時間とか、あと少しでバイバイだとか、そんな寂しい気持ちも消えてしまう。
もしも、彼が宗教をやっていなかったら、会社でも隠していたら、今以上にモテていたんだろうな。
こんな私が、気安く声をかけられるような、一緒に帰れるような相手では、なかったかもしれない。
そう考えたら、今のこの時間はすごく贅沢なことに思える。
「お前、そこにいろよ」
「…………?」
言ったそばから動いた私に、強い北風が吹きつける。
真正面から風を受け止めて、凍り付いた!
「あわわわわ!」
震えながら、プラットホームに立つ屋根の支柱に、ピタリと張り付く。ここが屋根の端で、その先には駅名看板が、ポツンと立っているだけ。
「だから、動くなって言ったのに」
支柱を挟んだ向こう側。
北風に背中を向けて、井沢さんが立っている。
あれ? 来た時と、立ち位置が逆じゃない?
マフラーを巻いていても寒そうな彼が、私の風避けになってくれている。
(わぁ。優しい!)
前にもこんな感動があったけど、また新たな感動!
電車が来るまでの、ほんの数分間。
社内では見せない笑顔で、二人はふざけあっていた。




