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逢瀬は、プラットホームで。  作者: 椎名美雪
第三章
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私を見つけて

 駅までの道を、ゆっくりと歩いた。

 彼の様子だと、三十分以上はかかると思ったから、時計を気にしつつ、駅前の雑貨屋を覗いたりして時間を過ごす。


 井沢さんを待つといっても、電車に乗ったら十分も一緒にいられる時間はない。

 たったそれだけの時間のために、私は彼を待っている。“待っていて” と、井沢さんに言われたら、何時間でも待ってしまいそう。


 ホント、恋するのにも、パワーが必要だね。


 ――さてと。

 もうそろそろ、来てもおかしくない時間だけど、会えるかな?

 見つけてくれるかな?

 面倒になって、帰っちゃうかな?


 寒空の下、柱に凭れて井沢さんを待っている。


(寒いよー!)


 冬の冷たい風が吹き抜けていく。冬生まれでも、寒いものは寒い!!


「ここにいたのか!」


 ようやく、“隠れんぼ”の鬼さんが登場。


「寒くて死ぬかと思った」


 鼻をグスグスしながら、やっと現れた井沢さんに歩み寄る。彼は、呆れたように私を見下ろした。

 私が待っていたのは、プラットホームの後ろ。


「なんでこんなところにいるんだよ。ソコで待っていればいいだろう」


 彼が指すのは、マックの二階席。窓際に座っている人が、コートを脱いで寛いでいる。遠目に見ても暖かそうだ。


「そうだけど、ここが良かったんだもん」

「ったく。探しただろ?」


 “面倒かけやがって”な口調で、静かに叱られる。

 でも……探してくれたの? そう思ったら、ちょっと嬉しくなる。


「なに笑ってんだよ」

「うん、ちょっとね」

「ヘンなやつ」


 言いながら、目じりを下げている。

 大好きな彼の笑顔を、近くで見れるだけで、幸せ。待っていた時間とか、あと少しでバイバイだとか、そんな寂しい気持ちも消えてしまう。


 もしも、彼が宗教をやっていなかったら、会社でも隠していたら、今以上にモテていたんだろうな。


 こんな私が、気安く声をかけられるような、一緒に帰れるような相手では、なかったかもしれない。

 そう考えたら、今のこの時間はすごく贅沢なことに思える。


「お前、そこにいろよ」

「…………?」


 言ったそばから動いた私に、強い北風が吹きつける。

 真正面から風を受け止めて、凍り付いた!


「あわわわわ!」


 震えながら、プラットホームに立つ屋根の支柱に、ピタリと張り付く。ここが屋根の端で、その先には駅名看板が、ポツンと立っているだけ。


「だから、動くなって言ったのに」


 支柱を挟んだ向こう側。

 北風に背中を向けて、井沢さんが立っている。


 あれ? 来た時と、立ち位置が逆じゃない?

 マフラーを巻いていても寒そうな彼が、私の風避けになってくれている。


(わぁ。優しい!)


 前にもこんな感動があったけど、また新たな感動!

 電車が来るまでの、ほんの数分間。


 社内では見せない笑顔で、二人はふざけあっていた。

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