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逢瀬は、プラットホームで。  作者: 椎名美雪
第三章
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自然体で

 忘年会のときのこと。

 あのことは、誰にも話したことがない。


 私が話すことによって、また井沢さんが友達にアレコレと言われる、というかイジられると困ってしまうから。冷やかすとも言うけれど。


 それなりに、お酒も入っていたし、酔うとスキンシップしたがる人もいるから、そのせいかもしれないと思って。……という例えは、私の父親だったりするけど。


 あまり意識をしないようにしているつもりでも、あの忘年会でテンションを上げた友達からは“押せ押せ!” な感じで。


「あっち(教会)には、もう行ってないんでしょ? だったら今更、利用するとかは違う気がするんだけどなぁ」


 そんな感想を言われてしまうと、“それもそうなのかな?”とも、思えてくる。いつも私の恋の話ばかりではなかったけど、これほどまでに哀れ――というか、判りづらい恋も珍しいと、よくネタにされていた。


 これまでは、女友達ばかりだった会話に、男性目線がプラス。信用出来る同期の男子と、淳ちゃんの彼氏も加わった。

 これが不思議なもので、視点を変えると、妙に納得が出来てしまう。


『どう考えても、嫌がられてはいないし、むしろ可愛がられているから、もっと自然体で接していて良いと思うよ』


 自然体かぁ。そんな発想、無かった。


 長い間、彼のことを“諦める”と“諦めない”でフラフラしていたけれど、急に目の前が開けたというか、新鮮な気持ちがした。


(もうちょっと、自分に正直になってもいいのかな)


 ほんの少し、心にゆとりが生まれた私は、その流れで、ある行動に出た。



 定時を過ぎた、営業のフロア。

 井沢さんは、少し前に外出先から戻って、事務仕事を片付けている。目の前の席の佐藤さんは、まだ戻ってきていないし、黒田さんと由真ちゃんは、さっき帰ったばかり。


 実は、ゆっくりと仕事をしながら、井沢さんが一人になるのを待っていた。

 手早く片付けを済ませると、周囲に挨拶をして、彼の横を通る。


「お疲れさん」


 井沢さんが、顔を上げた。うんうん、このタイミングだよね。


「ねえ。まだ帰らないの?」

「うーん、もう少しかかるかな。どうかしたか?」

「今日も、行くんだよね? だったら、一緒に帰ってもいい?」


 前触れもなく言われて、面食らっているのが判る。


「えっ……あ、でも……ドコに――」


 少々面食らった様子。“何処で待っているのか” と、聞きたいらしい。


「うん。いつものところで、待ってるね」


 それだけを言って、私はフロアを出た。


(いつものトコロって、ふたつしかないけど。解るかな?)


 ちょっと心配になるけど、それはそれで……明日謝ればいい?

 嘘みたいに、色々なことが吹っ切れた自分だった。

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