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逢瀬は、プラットホームで。  作者: 椎名美雪
第三章
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好きよりも伝えたいこと

「もう、無理に誘わない。だから、そんな顔をするな」


 プラットホームの端で、井沢さんが呟いた。


 二人で遊んだ日、帰りに教会へ連れて行かれるかも――と、思うことがあった。他にも、私が警戒するというか、怯むような仕草を見せる時があるみたいで。


「お前、泣きそうな顔をするからさ……」


 苦笑いを浮かべる彼は、何処か寂しそうに見えた。胸が痛い。どうして、そんなに寂しそうに笑うんだろう。


「私……井沢さんの信じている神様が、嫌だとか、井沢さんが怖いとか、そんなこと思ってない。だけどね…………」


 私は何かを伝えたかった。

 それがどうしても、言葉として並べられない。何をどう言葉にしても、結論として“私は、あなたの信じる神を受け入れられない”ということに、変わりはない。


 それでも、井沢さんの強い思いは、見ていれば解るし、話してくれれば聞いてあげたいという、不思議な気持ち。

 自分でも、何がなんだか気持ちも言葉も上手く纏まらない。


「だけどね、井沢さんが強く信じてることだけは、解ってるから」


 その時。

 静かだったホームに、電車が入ってきた。強い風が、私の髪を巻き上げていく。


 ――ああ、ダメ。

 全然、伝えきれない。彼を安心させるような言葉が、あるはずなのに。


 乱れる髪を押さえ、井沢さんに顔を向けると、彼は微笑んでいた。

 何かを言っているけれど、全然聞こえない。唇の動きを読もうとしても、よくわからない。


“ サンキュ ”?

“ アリガトウ ”?

“ ゴメンネ ”?


 電車のスピードが緩やかになるのを待ち、髪を撫でつける。

 もう一度、顔を上げた。


「今、何て言ったの?」


 聞き返した私に、井沢さんは笑う。


「ナイショ」

「気になるでしょ? 教えてよ」

「だから、ナイショ」

「ずるい! ねー、教えてってば」


 ドアが開き、乗り込むまで繰り返される。それはまるで、しつこい子供を相手に、逃げる大人といった場面。


 寂しそうな井沢さんに、少し笑顔が戻った。

 それで“良かった”と、安心しているようじゃ、諦める――なんて無理なのかな。

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