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逢瀬は、プラットホームで。  作者: 椎名美雪
第三章
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想定内の待ち伏せ

 階段を慌てて降りる姿を、木内さんに見られた。

 彼女は、悲鳴のような声を上げた。


「えー!? ヤダ!! いっちゃんと椎名ちゃんて、やっぱりそーゆーことなのぉ!?」


 甲高く大きな木内さんの声が、階段に響く。耳を塞ぎたくなるくらいに嫌な声。


「うるせえな」


 木内さんの声を遮るように、井沢さんの苛立った声が被さる。


「ひどーい! そんな言い方しなくても、いいでしょお~!」


 木内さんを無視するように行ってしまったようで、自動ドアが閉まる直前まで、彼女の文句を言うような声が聞こえてきた。



(どうしよう。きっと、なにか言われる……)


 用事が終わっても、なかなか席に戻ることができない。

 就業中は人気がない、ロッカーにいたり、周囲をウロウロしたりしたけど、そうばかりもしていられない。


 足取りも、気分も重い。

 木内さんが現れる前の、井沢さんの事なんて吹っ飛ぶくらいの憂鬱さ。

 何度ついても、溜息は消えることがない。


(別に、怖がることは何もないんだけどね)


 井沢さんと私の間に、何かがあるわけでもないし。知られて困ることは、何もない。


 トボトボと歩いて、席に戻る。


「戻りました」


 周囲に声を掛けて戻った私を、木内さんは、ジーッと見ている。爬虫類みたいな、舐めまわすような視線。


 一日中、耐えていたけど、想定内ともいえる事が起きる。

 就業後、着替えてロッカーから出たところで、二人が待ち構えていた。

 木内さんと志野先輩に囲まれてしまったのだ。


 彼女は間髪入れずに、


「ねーぇ、椎名ちゃん」


 虫の居所が悪そうな口調で、呼び止められた。



 しかも、その雰囲気が、昔で言うところのスケバンに楯突いて、呼び出しをくらったかような……。


 私と一緒にいた、淳ちゃんや木村ちゃんも心配そうな眼差し。


「椎名ちゃんてさぁ、いっちゃんと何かあるの~?」


 探るような、トゲのある言い方。

 彼女は、井沢さんが好きだから、気になって聞いているのではない。


「何かって、なんですか? 何もないですよ」


 無難に返しても、彼女の疑うような視線からは逃れられず、思い切って、少し言い返してみた。


「気になるなら、井沢さんに聞けばいいじゃないですか。なにもないのに、あるなんて言えません」

「なにそれー。いっちゃんが何も言わないから、聞いてるんでしょ?」

「なにもないから、言わないんだと思いますけど」


 だからね、アナタに何の関係があるの?


 言いたかったけど、さすがにそれはムリだった。

 その後、木内さんは志野先輩にブツブツ文句を言い、私を振り返りながら歩いて行ってしまった。


 休日に二人で出かけたことは、友達しか知らない。その友達は口が堅いから、他言をする心配はないし。もし、漏れるとしたら井沢さんからしか考えられないけど、それはあり得ないこと。


 面倒なことに巻き込まれながら、井沢さんと待ち合わせていた、マックに向かった。

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