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逢瀬は、プラットホームで。  作者: 椎名美雪
第三章
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いつもの場所で

 先日の写真が出来上がった。

 写真を見れば、あんなことがあった、こんな話をした――と、楽しかった事が次々に思い出される。


 自分の部屋で眺めたあと、その全ての写真を封筒に入れた。

 本当は、私だけの写真は抜こうと思ったけど、“全部欲しい”というから、もう深くは考えずにしまった。


 ……まあ、自分だけしか映っていないのを貰っても、何処に行ったかなんて判らない写真になるもんね。



「井沢さん」


 彼の席の周りに人がいなくなったタイミングで、私から話しかけた。

 溜まってしまった事務の仕事をしていたようで、ペンを止めて顔を上げる。


「うん、なに?」

「あの。この間の写真が出来たんですけど……」


 仕事中に、プライベートな用で声を掛けたことなどなかったから、少し躊躇ってしまう。


「ああ! 出来たんだ」


 なにやら、ニコニコと嬉しそう。

 そういえば――ソフトボール大会 の時にも、彼が写った分だけの写真を渡したっけ。もしや、写真が好き?


「それで、ロッカーにあるんですけど、今渡しましょうか? それとも、出かける時にでも……」


 私がそう言うのには、理由がある。

 会社の机、引き出しは、各個人に与えられているけれど、誰が開けるか判らない。

 席にいない時に、急用で何かを探されることもあるから、見られたくないものは、極力ロッカーに置いておく必要があった。


 私なりに考えてのことだったのに、井沢さんはニコニコしたまま、


「じゃあ、帰りに渡して」

「あ、はい。帰りですね」


“定時前に用意しておけばいいかな”そう思った私は、頷いた。

 ――が、井沢さんの言葉は、そういう意味ではなくて、


「帰り、マックで待ってて」


 サラリと言って返してきた。


(本当に、もう……この人は――……)


 さすがに、井沢さんの言動にもそろそろ慣れてきた。というか、諦めを覚えた私だったから、溜息混じりに「ハイハイ」と、返すことが出来るまでに成長した私。


 どうせ、駅前だし。通り道だし――ね。


「はーい。それじゃ、早く来てくださいね」


 気持ちを押し殺して、“上辺だけの笑顔”を作れるようになった自分がいた。

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