いつもの場所で
先日の写真が出来上がった。
写真を見れば、あんなことがあった、こんな話をした――と、楽しかった事が次々に思い出される。
自分の部屋で眺めたあと、その全ての写真を封筒に入れた。
本当は、私だけの写真は抜こうと思ったけど、“全部欲しい”というから、もう深くは考えずにしまった。
……まあ、自分だけしか映っていないのを貰っても、何処に行ったかなんて判らない写真になるもんね。
*
「井沢さん」
彼の席の周りに人がいなくなったタイミングで、私から話しかけた。
溜まってしまった事務の仕事をしていたようで、ペンを止めて顔を上げる。
「うん、なに?」
「あの。この間の写真が出来たんですけど……」
仕事中に、プライベートな用で声を掛けたことなどなかったから、少し躊躇ってしまう。
「ああ! 出来たんだ」
なにやら、ニコニコと嬉しそう。
そういえば――ソフトボール大会 の時にも、彼が写った分だけの写真を渡したっけ。もしや、写真が好き?
「それで、ロッカーにあるんですけど、今渡しましょうか? それとも、出かける時にでも……」
私がそう言うのには、理由がある。
会社の机、引き出しは、各個人に与えられているけれど、誰が開けるか判らない。
席にいない時に、急用で何かを探されることもあるから、見られたくないものは、極力ロッカーに置いておく必要があった。
私なりに考えてのことだったのに、井沢さんはニコニコしたまま、
「じゃあ、帰りに渡して」
「あ、はい。帰りですね」
“定時前に用意しておけばいいかな”そう思った私は、頷いた。
――が、井沢さんの言葉は、そういう意味ではなくて、
「帰り、マックで待ってて」
サラリと言って返してきた。
(本当に、もう……この人は――……)
さすがに、井沢さんの言動にもそろそろ慣れてきた。というか、諦めを覚えた私だったから、溜息混じりに「ハイハイ」と、返すことが出来るまでに成長した私。
どうせ、駅前だし。通り道だし――ね。
「はーい。それじゃ、早く来てくださいね」
気持ちを押し殺して、“上辺だけの笑顔”を作れるようになった自分がいた。




