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逢瀬は、プラットホームで。  作者: 椎名美雪
第三章
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夏の記憶

 入場する時に渡される、園内の地図が載ったパンフレット。

 それほど広くはない遊園地では、あまり意味がないような気がする。遊園地というと、絶叫物とか、何かの乗り物に乗るイメージ?

 この日は、そういう感じではなくて、園内を散策するというかのんびりしたもの。


 もちろん、いくつかのアトラクションには乗った。

 これが友達と一緒だったら、ワイワイ言って、片っ端から乗りまくって、迷惑なくらいに騒いでいただろうけど。


 特別に何もしなくても、一緒にいるだけで満たされることがあるって、それまで知らなかった。


 園内を回っている途中、井沢さんは時折振り返り、私がいることを確認してくれる。


“結構、優しいところもあるのかな”

“こうしていれば、普通の人なのに”


 彼の背中を、横顔を見上げながら、そんなことを思った。



「ちょっと、休もうか」


 アトラクションなどから離れた、公園のようなスペース。

 大きな木の下に長いベンチがあって、そこが日陰になっている。

 あれからずっと、井沢さんは私に財布を出させてくれない。たいした額じゃないけど、せめて飲み物くらいはと、買ってきて渡した。


 昼食は少し前にとっていたから、二度目の休憩。


 この遊園地は、カップルもいるけれど、小さな子供の手を引いた家族連れが目立つ。


 キャラクターのショーがステージで行われていて、多くの人はそっちの方にいたせいか、ベンチの周囲は意外なほど静かであまり人もいなかった。


「ちょっとだけ、涼しいね」


 近くに噴水もあって、蝉が鳴いているのに、どことなく涼しさを感じる。

 私は、何も考えずにボーっとするのが好きだから、こんな風にマッタリとした時間が落ち着く。


 そして、隣には大好きな人がいて……。


 幸せを感じながら、井沢さんを見ていた。

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