夏の記憶
入場する時に渡される、園内の地図が載ったパンフレット。
それほど広くはない遊園地では、あまり意味がないような気がする。遊園地というと、絶叫物とか、何かの乗り物に乗るイメージ?
この日は、そういう感じではなくて、園内を散策するというかのんびりしたもの。
もちろん、いくつかのアトラクションには乗った。
これが友達と一緒だったら、ワイワイ言って、片っ端から乗りまくって、迷惑なくらいに騒いでいただろうけど。
特別に何もしなくても、一緒にいるだけで満たされることがあるって、それまで知らなかった。
園内を回っている途中、井沢さんは時折振り返り、私がいることを確認してくれる。
“結構、優しいところもあるのかな”
“こうしていれば、普通の人なのに”
彼の背中を、横顔を見上げながら、そんなことを思った。
「ちょっと、休もうか」
アトラクションなどから離れた、公園のようなスペース。
大きな木の下に長いベンチがあって、そこが日陰になっている。
あれからずっと、井沢さんは私に財布を出させてくれない。たいした額じゃないけど、せめて飲み物くらいはと、買ってきて渡した。
昼食は少し前にとっていたから、二度目の休憩。
この遊園地は、カップルもいるけれど、小さな子供の手を引いた家族連れが目立つ。
キャラクターのショーがステージで行われていて、多くの人はそっちの方にいたせいか、ベンチの周囲は意外なほど静かであまり人もいなかった。
「ちょっとだけ、涼しいね」
近くに噴水もあって、蝉が鳴いているのに、どことなく涼しさを感じる。
私は、何も考えずにボーっとするのが好きだから、こんな風にマッタリとした時間が落ち着く。
そして、隣には大好きな人がいて……。
幸せを感じながら、井沢さんを見ていた。




