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逢瀬は、プラットホームで。  作者: 椎名美雪
第三章
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恋愛の経験値

 電車を乗り換えて、二人が向かったのは、昔からある地元に根づいた感じの小さな遊園地。


 私も名前は知っていたけど、行くのは初めて。

 今日、私が貰った時間は半日しかない。

 これくらいの近さではないと、往復の移動だけで終わってしまうから、良い立地条件の場所。


 目的地の駅に着くと、少し離れた小高い丘の上にある遊園地に向けて歩き出したけれど、照りつける太陽が暑くて、二人とも「暑い!」を連発しながら、なんとか正門までたどり着いた。


 そして、息をつく間もなく、私には試練がやってくる。

 チケットを買わないと、入れない。


「ちょっと待ってて」


 私を残し、井沢さんは普通に窓口へ行ってしまう。

 どうしたものかと、考えるけれど――言われたまま、待ってみる。


 程なくして戻ってきた彼の手には、チケットが二枚あって、「はい」と当たり前のように渡してくれる。

 経験値がゼロの私には、かなりの高さのハードル。

 お金はどのタイミングで渡せば良いんだろう、とか誘ったのは私だし、ついてきてもらっているんだから、井沢さんの分も、とか……。


“とりあえず、聞くのが一番かな?”


 そんなことを、チケットを差し出された一瞬に、考えを巡らせる。

 悲しいくらいに、少女漫画のベタなシーンを演じる私って。


「あの、チケットのお金を……」

「んなのいらないから、ホラ」


 そう言われる事を、察していた様子の井沢さんは、早く受け取れと言わんばかりに渡してくる。


「うん。ありがとう」


 ――そういえば、さっきの電車の切符も、渡されたままに受け取ってしまっていて、うやむやになっていた。

 嬉しいというよりは、申し訳ない気持ちの方が強かったけど、それよりも今は、彼の後をついていくのが先。



 ゲートをくぐれば、小さいと思っていた敷地は広くて、必要以上に高い建物がないせいか、開けていて見渡せる。


 目の前には、大きな花壇。

 色とりどりの、小さくて鮮やかな花が植えてあった。

 こんなにたくさんの花を、一度に見ることなんてあまりない。


 井沢さんは、綺麗な花を眺めている。それも、私の前で。


「さて。何から乗ろうか?」


 心なしか楽しそうな井沢さんが、笑っていた。

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