恋愛の経験値
電車を乗り換えて、二人が向かったのは、昔からある地元に根づいた感じの小さな遊園地。
私も名前は知っていたけど、行くのは初めて。
今日、私が貰った時間は半日しかない。
これくらいの近さではないと、往復の移動だけで終わってしまうから、良い立地条件の場所。
目的地の駅に着くと、少し離れた小高い丘の上にある遊園地に向けて歩き出したけれど、照りつける太陽が暑くて、二人とも「暑い!」を連発しながら、なんとか正門までたどり着いた。
そして、息をつく間もなく、私には試練がやってくる。
チケットを買わないと、入れない。
「ちょっと待ってて」
私を残し、井沢さんは普通に窓口へ行ってしまう。
どうしたものかと、考えるけれど――言われたまま、待ってみる。
程なくして戻ってきた彼の手には、チケットが二枚あって、「はい」と当たり前のように渡してくれる。
経験値がゼロの私には、かなりの高さのハードル。
お金はどのタイミングで渡せば良いんだろう、とか誘ったのは私だし、ついてきてもらっているんだから、井沢さんの分も、とか……。
“とりあえず、聞くのが一番かな?”
そんなことを、チケットを差し出された一瞬に、考えを巡らせる。
悲しいくらいに、少女漫画のベタなシーンを演じる私って。
「あの、チケットのお金を……」
「んなのいらないから、ホラ」
そう言われる事を、察していた様子の井沢さんは、早く受け取れと言わんばかりに渡してくる。
「うん。ありがとう」
――そういえば、さっきの電車の切符も、渡されたままに受け取ってしまっていて、うやむやになっていた。
嬉しいというよりは、申し訳ない気持ちの方が強かったけど、それよりも今は、彼の後をついていくのが先。
ゲートをくぐれば、小さいと思っていた敷地は広くて、必要以上に高い建物がないせいか、開けていて見渡せる。
目の前には、大きな花壇。
色とりどりの、小さくて鮮やかな花が植えてあった。
こんなにたくさんの花を、一度に見ることなんてあまりない。
井沢さんは、綺麗な花を眺めている。それも、私の前で。
「さて。何から乗ろうか?」
心なしか楽しそうな井沢さんが、笑っていた。




