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逢瀬は、プラットホームで。  作者: 椎名美雪
第二章
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見られた「裏の顔」

 井沢さんの本当の「裏の顔」を見た人は、社内には一人もいない。


 私を勧誘の時の、あの怖いくらいに熱心な井沢さんも、「裏」であることには違いない。

 そうではなくて、もっともっと深い部分。

 配下の信者を指導する時などは、かなり怖いもののよう。


 実際に私が知っている井沢さんは、「表」でしかなく……。


 いや。

 知らない方がいいのだけれど、気にはなっていた。


 それを、見てしまった人がいる。


「ねえねえ! 昨日さ、夜、井沢さんに会ったんだよ」


 朝一番で、そんな報告をしてきたのは、誰でもない、まっちゃん。

 井沢さんと、まっちゃんは、隣合う区に住んでいる。


「会ったって、何処で?」

「ウチの近くのファミレスで。しかも、深夜」


“まっちゃんこそ、深夜に何してたのよ”という突っ込みもソコソコに、私はその先を早く聞きたい。


「男の人で集まっててさー、超怖かった!」

「へえ」

「あれ、勧誘してたんじゃない? 声掛けたら、超睨まれた!」


 ああ。

 そりゃあ、声掛けたらダメだよ。

 まっちゃん、敵視されてるんだしさ。


 そんな言葉が、喉から出そうになる。


「別人だよ。すんごい怖かったもん」


 怖いんだろうなぁ……というのは、想像では解っているつもり。

 彼の本当の顔は、どれなんだろう。


 どれが本物で、偽物ということはないだろうけれど、私には、私に見せてくれる表情だけが本物。


 いつか、その“別人のように怖い表情”を、見る時が来るのかな。

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