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逢瀬は、プラットホームで。  作者: 椎名美雪
第二章
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自惚れ

“声が聞きたくて”――――彼は確かに、そう言った。


 ううん。

 きっと、何かの間違い。そんなこと、あるわけない。


 そういう意味で、好意的な意味で言ったんじゃない。

 私は単純だから、ちょっとしたことで期待しそうになる。


 期待しちゃダメ。

 また後悔するよ。

 また傷つくよ。


 もう一人の自分が、膨れそうになる期待を抑えつける。


 解ってるよ、解ってる。

 私はダイジョウブだから。


 声を抑えて、「声が聞きたかった」そう言った彼の声を上回るように、明るく返した。


「えー? どうしたの? 疲れてるの? 大丈夫?」


 この返しが良かったのか、どうなのか、少し声のトーンを戻して、いつもの井沢さんになった。


「うん。ちょっと疲れてるかな」


 電話の向こうで苦笑しているような、そんな声が聞こえる。



 ごく普通の、たわい無い話を、数分ほどしただろうか。


「んじゃー、そろそろ行くよ」


 家に帰るのか、仲間と場所を移すのか、それは聞かなかった。


「うん。それじゃあね」

「うん、じゃあ」


 少しだけ笑みを残しつつ、会話を終えた。

 受話器を戻すのも忘れて、私は床に座り込んだまま。


(あれ? 結局、なんの用だったんだろ?)


 通話を終えて、しばらく経った頃に、急に思い出した。



 彼の声が、耳に残る。

 ダメだよ……これ以上、好きになったらダメだ……


 二面性を持った、彼の顔を知っている。

 フラれてから、宗教に誘われた。色恋で利用されたと、私も友達も思っている。

 こんな想いは、早く忘れなければいけないし、忘れないと辛くなるだけ。


 自分の心で、想いが膨れそうに、溢れ出しそうになる度に、私はずっと抑えつけてきた。


 何度も告白をして、身体ごと真正面からぶつかっていく人もいる。

 私は、そこまで強くない。

 もう一度玉砕してみようという気持ちは、持ち合わせていない。


 この頃の私は、自分の心のバランスを保つことに必死だった。

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