付き合ってるの?
木内さんの“あてつけ”のような行動から、それほど経たない頃、由真ちゃんから驚くようなことを聞かれた。
「ねー。椎名ちゃんと、いっちゃんてさ、付き合ってるの?」
どんな質問なのか――予想すらしていない言葉に、ありがちな表現で“ペンを落としそうになった”。
課の営業たちは出払っていて、事務員がいるだけだから良かったけど。
私は何故そうなるのかと、短く聞き返した。
「え? なんで? どうしてそうなるの!?」
否定とかナントカより、まずそっちが気になる。
「えー? だって、私達が入社した頃からさ、内輪でそうなんじゃないかって話してたんだよね」
由真ちゃんは、冷やかし半分な目で見ている。
「井沢さんカッコイイよねー、ってみんなで言ってたんだけど、彼女いるんじゃんって思ってた」
簡単にいうと、彼女たちにはこう見えていたようだ。
井沢さんが何かと私に構っていて、私からもそんな雰囲気が出ていた。
食堂に行くときも、よく一緒に行っているから。
よく二人でいるところを見ていた。
しかも、仲良さそう。
……なるほどね。
そんな風に聞かれても、「そうだよ♪」なんて言えないんだよ。
だって、違うんだもの。
寂しくてもなんでも、私には否定しかできないから、
「なーに言ってるの! 付き合ってないよ~。気のせいだから」
苦笑いするしかなくて。
周囲には、そんな風に見られていたんだ。
誤解されるくらい仲良さそうに見られているのに、フラレている私って?
去年、井沢さんから貰った、ふたつのガラス細工 。
あれからずっと、お守りのように毎日肌身離さずに持ち歩いていた。
制服に着替えても、胸ポケットに忍ばせていた。
割れないように綿を少しだけつめた、小さな巾着型のポーチに入れて。
つらいことや、寂しいこと、悲しいことがあると、無意識にそのポーチに触れるクセがついている私。
私だけが想っているのだと、改めて実感して息苦しかった。




