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逢瀬は、プラットホームで。  作者: 椎名美雪
第二章
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暗がりの目撃者

 突き当たりの自動ドアが開いた。

 静かな場所だけに、開閉の音が大きく響く。


 入ってきた人の背中が、一瞬だけ明るくなる。

 階段踊り場の窓から差し込む、屈折した光が、自動ドアだけを照らした。


 あれは、男性?

 でも、スーツではなく、男性社員用の制服(作業着)だったような。


 私と井沢さんが、今からコッソリ戻ることはます無理で、沈黙のまま通り過ぎるのを待った。


 向こうは、廊下に誰かがいるなんて思っていない。

 相手がこちらに気付き、人影を認識した瞬間――ギョッ! としたのが判った。


 物音ひとつしなかった廊下に、人がいるんだから、驚かない方がおかしい。

 隣り合わせて、表情を確認できるくらいの明るさはある。


 歩いてきた相手と顔を合わせると、何とも言えない微妙な空気が流れた。

 やましい事は何もないのに、変な気まずさが残る。


 営業の人ではなく、私は知らない顔。

 井沢さんは知っていたらしく、ペコリと頭を下げた。


 向こうも軽く会釈をするが、“見たぞ!”というような、興味深そうな視線が向けられた。


 その視線は、井沢さんと私を、交互に捉えている。

 少しだけ、嫌な感じと嫌な予感……。


 男性が通り過ぎてしまうと、井沢さんは少し溜息をついた。

 切ってしまった話の内容に対してだったのか、今の人に、変に誤解されたと思ったのか。


「ともかく」


 私を見下ろして、静かに口を開く。


「ちゃんと出てこい」


 それだけ言うと、井沢さんは背中を向けた。

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