ひとつの意志
以前、井沢さんに、小さな抵抗を見せた私。
彼もそれだけに拘るような人ではなく、仕事は普通にこなしていた。
会話は、一時期よりも少なくなったようにも思えるけど、どうにか毎日を過ごした。
私を宗教に誘った張本人の井沢さんは、私を引きこんだ後、私がどう活動しているのかについて、あまり触れてこなかった。
「日曜日は行くの?」くらいの言葉はあった。
でも、彼は彼で忙しく動いているし、そもそも男女で活動が違うから、気にかけても仕方がないのかもしれない。
私は、彼があまり触れてこない安心からか、活動から足が遠のいていた。
それはもちろん、勧誘活動なども含めて。
この “勧誘活動” 。
実は私は、一度も行ったことがない。
成田さんから、ノルマを課せられたけれど、私にはどうでも良かった。
まず、私にはこの宗教の良さが全く理解出来ないし、それを薦めることも出来ない。
勧誘されて嫌だったから、そんな思いを誰かにさせるのはイヤ。
なんだかもう、全てが嫌になっていた。
井沢さんのことは、変わらずに好き。
だけど、振られた揚句、利用されてって……最悪。
どう考えても馬鹿だし、滑稽だし、不毛だし。
自分がすごく情けなかった。
前に会った、井沢さんの同期だという女性。
私は、あんな風にはなれない。
あの人が、どうしてそんなにのめり込めたのかは知らないけど、私にはどんな理由であれ、夢中になんかなれなかった。
活動期間が短いからじゃなくて、私には何の魅力も感じない。
それだけのこと。
こんな私が、「宗教活動に参加した」といえるのかどうか。
集会にしか出たことがないから、彼らにしたら、参加していないも同然かな。
名前だけの、不真面目な信者だった。
そんな私の行動が、成田さんから井沢さんに伝えられた。
私に一番近いのは井沢さんだから、当然のこと。
“椎名さんが全然来ません。もっと参加するように、言ってください!”
自分が幹部だという手前もあるのか、どうなのか。
彼自身が誘って入れた子が、不真面目な信心をしているって、解せないことだろう。それを他の人から指摘されるって、多少なりプライドが傷ついただろうな。
以前の小さな抵抗と合わせても、彼の信用や期待を裏切ったことには違いなかった。




