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囁き
「これから、教会に行かない?」
真っ直ぐな目で、私を見た。
井沢さんは、こんな風に、たくさんの会社の人を誘ったのだろう。
もう、その時の私の心には、彼を想ういつもの温かさはなくて、
(みんなは、なんて返事したのかな?)
“自分はどうしたいのか”ではなく、模範解答のような、参考例が欲しかった。
上手い返し方があるだろうと想像しても、頭には浮かばない。
返事を急かすような彼を前に、私はようやく言葉を発した。
「親が心配するから、今日は無理」
でも、彼は引き下がらない。
私の言葉尻を捕まえてきた。
「それじゃ、明日は?」
「…………」
言葉に詰まる私を、彼は黙って見つめる。
少しの沈黙のあと、私を惑わすように、優しい声で囁いた。
「俺と一緒に、行こうよ」
なんて、ズルイ人なんだろう。
そんな風に誘われたら、断りきれなくなる。
同時に、考えたくなかったことを、思い浮かべていた。
井沢さんの噂を聞いた頃から、友達に言われていた、あのこと。
私の中では、どうしても否定したかった。
彼は、私の想いを “利用するつもり” なんだ……。




