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逢瀬は、プラットホームで。  作者: 椎名美雪
第二章
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囁き

「これから、教会に行かない?」


 真っ直ぐな目で、私を見た。

 井沢さんは、こんな風に、たくさんの会社の人を誘ったのだろう。


 もう、その時の私の心には、彼を想ういつもの温かさはなくて、


(みんなは、なんて返事したのかな?)


“自分はどうしたいのか”ではなく、模範解答のような、参考例が欲しかった。

 上手い返し方があるだろうと想像しても、頭には浮かばない。


 返事を急かすような彼を前に、私はようやく言葉を発した。


「親が心配するから、今日は無理」


 でも、彼は引き下がらない。

 私の言葉尻を捕まえてきた。


「それじゃ、明日は?」

「…………」


 言葉に詰まる私を、彼は黙って見つめる。

 少しの沈黙のあと、私を惑わすように、優しい声で囁いた。


「俺と一緒に、行こうよ」


 なんて、ズルイ人なんだろう。

 そんな風に誘われたら、断りきれなくなる。


 同時に、考えたくなかったことを、思い浮かべていた。

 井沢さんの噂を聞いた頃から、友達に言われていた、あのこと。


 私の中では、どうしても否定したかった。


 彼は、私の想いを “利用するつもり” なんだ……。

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