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逢瀬は、プラットホームで。  作者: 椎名美雪
第二章
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明かされた素顔

 ※ここに井沢さんと帰る場面を何度か書いていますが、回数はそんなに多くないです。いつも一緒に帰っていたのではないので、念のため。



 井沢さんと電車で帰る時、彼はいつも同じ駅で降りて、乗り換えていた。

 私は、それをずっと見送っていた。



 けど、 とうとう――――

 私も、その駅で降りる日が来てしまった。


 車内で行き先を聞いても、彼は濁していたし、“ついて来い”という感じだったから、仕方なく彼の後を追った。


 社内で彼に勧誘されたことがある人に、話を聞いたりとか、余計な情報を全く耳に入れていなかった私。

 ターミナル駅で降り、改札まで出てしまったことで、この駅の周辺に “何か” があるのだと思った。


 でも、ここは、以前偶然に拾った、期限切れの定期券に印字された駅ではない。

 一体、何があるのか。



 改札を抜けて、少し歩いたところにある喫茶店に入る。

 喫茶店と呼べる店は、ここしか見当たらない、寂しい駅前だった。


 席に案内されると、すぐにコーヒーを頼む彼につられるように、同じものを頼んだ。

 コーヒーなんて、自分で進んで頼んだことは、一度もなかったけど。


 お店に入ったのは、18時頃だった。

 私たちのように、会社帰りの人たちなのか、スーツ姿の人が多い。


 賑やかな店内の中で、井沢さんは静かに口を開く。


「俺のこと、誰かから聞いてる?」


 瞬間、鼓動が跳ね上がった。

 少しは聞いているけど、ここは否定した方が良さそうな気がして、首を横に振る。


「そう」


 短く頷いて、すぐに運ばれてきたコーヒーに口をつける。

 彼は、少しの間を置いて、思い切るように話し始めた。


「実は、俺ね――――……」


 そこから先、私の頭の中は、ほぼ真っ白。

 霧がかかってしまったかのように、何も考えられない。


 井沢さんが、何かを熱く語っている姿だけは認識できる。


(人が変わるって、こういうことなのかな)


 そんな風に、ボンヤリと彼を眺めていた。

 熱心に語っている姿は、きっと私に教えを説いているのだろう。

 情熱を持っているのは伝わってくる。


 専門用語やら小難しい言葉を並べられて、何ひとつ解らない。

 その真剣さは、恐怖さえ感じた。


 私が口を挟めるような、余裕や隙は何一つなく、時間だけが過ぎた。



 ただ、目の前で別人のように語る彼と、冷めていくコーヒーを交互に見ていた。

 井沢さんが語る、彼の信仰する宗教論というものが、私の心には何ひとつ胸を打ってこない。


 店内の時計にチラリと目を向けると、もう21時を過ぎていた。


(お母さん心配してるだろうな。電話も入れてないし)


 そんな思いが浮かんだとき、井沢さんは畳みかけた。



「これから、教会に行ってみない?」

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