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逢瀬は、プラットホームで。  作者: 椎名美雪
第二章
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強がり

 行き交う車の騒音が気にならないほど、私の思考回路は停止していた。

 絶対に、今言うことではないと思ったから。


「井沢さんが、好きなの」


 そう言ったきり、私は続く言葉が出てこない。


 小道から県道に抜ける、少し手前での事だった。

 渡ってしまえば、駅は近い。



 一度変わってしまうと長い、信号待ちの間のこと。


 私に顔を向けた井沢さんは、困ったような、躊躇うような表情。

 ゆっくりと口を開いた。


「――ごめん。俺、今そういう余裕がないんだ」


 僅かに抱いていた希望が、消え去った瞬間だった。

 だけど、不思議と悲しさとか、そういう気持ちはない。


(やっぱり、そうだよね)


 あの噂を差し引いても、彼が私に頷いてくれるとは考えにくいし、納得した。

 この告白で、妙にギクシャクしてしまうのは、どうしても避けたかった心理が強かったのかもしれない。


 私は、振られてすぐに、笑顔を作った。


「あははー。そうだよね! うん、ゴメンね!」


“全然、気にしてないわ~!”


 というように、少し大袈裟に振る舞う私がいた。

 自分でさえ驚いた「告白」という事態に、気持ちが対応できなかったんだと思う。


 信号が青になり、歩き始める二人は、やはり何処かぎこちなくなる。

 私は、勤めて元気に、いつもと変わらないように振る舞った。



 心に大きな穴……それよりも、もっと大きな空間が空いてしまったのは事実で、一人になると、耐えられないほどの悲しみが押し寄せてきた。


 どんなに想っても、これ以上は彼に近づけないと、解ってしまったから。


 振られたからといって、想いを即消去できるはずもなく。

 気持ちが強ければ強いほど、寂しさが強くて苦しかった。


 泣くだけ泣いて、思い切り泣いて、ひとつの答えを出した。


 井沢さんに、嫌われていないだけでいい。

 特別な存在になれなくても、好きな気持ちだけは大切にしたい。

 自然に吹っ切れるまで、彼を好きでいようと。


 だから 翌日も、いままでと変わらない私で、


「おはよー!」


 元気な顔で、彼の前に姿を見せた。

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