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偏見
井沢さんに関する「宗教」の噂話を聞いてしまってからは、悩みに悩み抜いた。
それまでの私の人生に、宗教という文字はひとつもなかったから、何を悩んでよいのかさえ解らない。
そんな悩みも含めて、19歳になっていた私は考えていた。
多くの人が抱くはずの、偏見。
噂を聞いた私が、無意識に怖さを感じたのも、ひとつの偏見なんだろうと思う。
どういうものなのかも解らないうちに怖いって、なんだろう。
考えれば考えるほど、井沢さんを見る目が変わりそうで嫌だった。
職場の人たちが、井沢さんを無視をしたりとか、意地悪や嫌味を言うとか、そういうことは全然ない。
仕事は仕事と、割り切って働いているからだろうけど。
私もそう思えたら、どんなに楽だったかな。
私が知っている、会社での顔が「表」なら、「裏」の顔はどんなだろう。
井沢さんは、本社内の人を、男女関係なく勧誘しているらしかった。
営業本部にも、誘われた人が多くいて、その多さと名前を聞いて驚いた。
志野先輩も、川本さんも。
たくさん挙がる名前に呆然としながら、私はそう遠くはないだろう“その時”を予感した。
私の名前を呼ぶ彼に、笑顔で返しながら。




