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逢瀬は、プラットホームで。  作者: 椎名美雪
第四章
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脱会

 食欲もなく、睡眠も充分にとれない。落ち込んだ様子の私を、友達は心配してくれる。すごく申し訳ない。


 話を聞いて、一緒に泣いてくれる友達。

 そんな友達の姿に、“早く元気にならないと”決意のようなものが芽生えた。


 残業続きだった、例の仕事は無事に終わり、定時に戻れる日が戻ってきた。

 残業から解放されたとあって、井沢さんは直ぐに帰るはず。その前に、話をしなくては…。


「井沢さん。ちょっと――相談というか、話があるんだけど」


 定時の少し前に、周囲を見計らって声を掛けた。

 私がそんな風に、話を持ちかけるのは珍しいだけに、彼は“何事か”という目をした。


「うん、解った。今日? 急ぎ?」


 そう聞き返した彼に、時間的な余裕が無いのは明らかで……


「うん。今日がいい。時間は取らせないから、会社でいいよ」

「じゃあ、仕事上がったら、会議室に行っていて。すぐに行くから」


 表情を変えない私に、彼はひとつ頷いた。

 会議室とは、二階フロアの奥。暗がりの廊下沿いに、小さめな会議室がふたつある。彼はそこを指していた。



 人目を気にしながら、会議室に滑り込む。

 悠長に椅子に座っていられず、窓から社有車の駐車場を見下ろした。正門に向かって歩いていく人の背中を見送りながら、何から……何をどう言おうか、迷いに迷っていた。


 上手い話しの切り出し方が判らなくて、用意していた言葉を、頭の中で予行練習などをしてみる。

 少しして、ドアがノックされた。


「おまたせ」


 彼が微笑むと、ふと心が軽くなる。それは、ほんの一瞬だけど。


「どうした? 最近、元気ないし、どうしたのかと思っていたけど」

「うん。ゴメンね、忙しいのに呼び出して」

「それはいいから、何かあったのか?」


 私を真似るように、窓辺に寄り掛かった。

 顔を覗きこまれると、喉まで出かかった言葉が止まる。


「あの……。最近、なにか変ったこととか、あった?」


 まずは、気がかりだったことを聞いてみた。

 母の勢いだと、井沢さんに何かをしかねない。何処かで彼のことを調査するとか、こっそりと会社に電話をしてきていたとか。


「え? いや、別に。特には何もないけど」

「そう。ならいいんだけど」


 何もないと聞いて、少し安心。それきり、また言葉が詰まってしまう。

 私の様子がおかしいことに、彼も気付いている。


「どうしたんだよ」


 言うなら、今がチャンス。今しかない。自分で、終わらせないといけない。


「私、教団をやめたいの。行かないとかじゃなくて、やめたいの。脱会したいの!」

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