可愛い妹は俺とのアレを思い出してニヤニヤしてしまう。そのに
「ま、真奈美ちゃん……」
ハンバーガーショップの店内に入ってきた人物を見て私、赤星未祐は本当に驚いてしまった……。
なぜならば、私のお兄ちゃん憧れの幼馴染み、二宮真奈美ちゃん、その人だったからだ。
駅前のハンバーガーショップは立地条件の良さもあり、座る席が見つからないほどの混雑ぶりで真奈美ちゃんはトレーを持ってキョロキョロと空いている席を探していた様子だった。
「た、拓也お兄ちゃんの噂話をしていたから真奈美ちゃんが現れたの!?」
突然の恋のライバル登場に激しく動揺してしまい、私はあり得ないことまで考え始めてしまった……。
「未祐ちゃん、何で、急にお顔を隠しているの!?」
「ち、千穂ちゃん、聞かないで、これには深い理由があるのぉ……」
急にテーブルに突っ伏して腕で顔を隠す私を、親友の森田千穂ちゃんが怪訝そうな顔で見つめていた、彼女は真奈美ちゃんが店内に現れたことにまだ気がついていないみたいだ……。
「未祐ちゃん!! そんなに照れて顔を隠すほど、恥ずかしい内容なの!? もう激ヤバっ!! 早く拓也お兄ちゃんとの話を聞かせてよ!!」
「ち、千穂ちゃん、声が大きい!! 真奈美ちゃんに聞こえちゃうよぉ……」
私の恋バナを聞こうと、オヤツを待つハムスターみたいなつぶらな瞳で興味津々の千穂ちゃん、普段なら食べちゃいたいぐらい可愛いけど、お願いだから今は静かにしてぇ!!
「……あれっ、未祐ちゃんじゃない!?」
「……ま、真奈美お姉ちゃん」
真奈美ちゃんに気付かれてしまった……。
「未祐ちゃん、名前が聞こえたから……。 久しぶりね!!」
私を見つけて真奈美ちゃんが嬉しそうに微笑んだ。
拓也お兄ちゃんと私、そして真奈美ちゃん、三人で遊んでいたころの面影がかすかに残る横顔。女の子の私が思わず見とれるほど綺麗だな……。
「真奈美ちゃんこそ、久しぶり!!」
つとめて明るい声を出した、真奈美ちゃんは私の想いをまったく知らないんだから、別にコソコソする必要はないんだ。
私が拓也お兄ちゃんのことが大好きだってことを……。
「……えっと、先輩、良かったら座りませんか?」
私と真奈美ちゃんの顔を交互に見比べながら千穂ちゃんが提案してきた。
え、ええっ、真奈美ちゃんと私が相席なの!?
心の準備が出来ていないよぉ、千穂ちゃん……。
「……ありがとう、でもお邪魔じゃないのかしら」
「全然平気ですから!! ねえ未祐ちゃん」
「う、うん、大丈夫……」
千穂ちゃんがテーブル越しにこちらに目配せするのが分かった。
真奈美ちゃんとお兄ちゃんの話も知っているくせに、一体何を考えているの!?
「じゃあ相席をお願いしようかな、あっ、注文が出来たみたい、取ってくるね!!」
オーダー完成を告げるベルが鳴った、注文カウンターへと向かう彼女。
「……ち、千穂ちゃん、いったいどういうつもりなの!?」
「未祐ちゃん、本気で目が怖いよぉ、膣の穴に入らずんば赤ちゃんは得ずって、先孕の決めセリフだよぉ♡」
それを言うなら虎穴に入らずんば虎子を得ずだ、ありがたいことわざも
千穂ちゃんは強烈なエロワードに変換する癖があるんだ。
この言葉も【先取先生! 卒業までに絶対に先生の赤ちゃんを孕みます♡】の主人公である女子高生の瀬戸際着床ちゃんの決めゼリフなんだ。
着床ちゃんが入学した女子校に赴任してきたイケボの男性教師、逝毛保岳孕増とのくんずほぐれつを描いた作品で、女の子に絶大な人気を誇るケータイ小説投稿サイト、野ヘビいちごで好評連載中、甘々胸キュンなキャッチコピーは!!【森田千穂談】
【女子高生の子宮に至急、先生の元気な《《おたまじゃくし》》を支給して♡】
千穂ちゃんには無粋なツッコミだと思うけど卒業まで待たなくとも赤ちゃんが授かっちゃいそうな勢いだ……。
「未祐ちゃん、それに恋のさや当てには情報戦が必須だよ、まず相手のことをよく知らなきゃ!!」
「……そんな調子良いこと言って、どうせ小説のネタになると思ってるんでしょ、千穂ちゃん」
「うふふっ、バレたか……」
「そんなのバレバレに決まってるよぉ!! この前だって読者様から先孕の修羅場シーンはPVが爆上がりってウハウハしてたじゃん……」
「そうなんだ、濡れ場シーンも読者様の受けは良いけど、女の子同士の修羅場も定番なんだ、主人公のライバル女子高生、今童夢との修羅場、イケボ教師の手違いでラブホでダブルブッキング回は、作品レビューの★も♡も読者さんから沢山貰えて凄かったんだよ!! あ、でも悲しいこともあったんだ、その中に《《フォロ爆》》の人がいて、先孕って五十話位あるのに、秒で全話に♡を入れられた上に★を貰ったんだ……」
「えっ!? それって作品を全然読んでいないんじゃないの……」
小説サイトの専門用語は千穂ちゃんから教えてもらっているので、未祐も多少は分かる、フォロ爆とは主に小説の作者が不当な評価を得るために絨毯爆撃的に人の作品を読まずに評価を入れまくる行為だ。
小説投稿サイトは評価数でランキングが決まるのでグレーゾーンな行為をする輩が後を絶たないそうだ。
「……うん、評価して貰うのは嬉しいんだけど、書いている作者はどんなお馬鹿な作品でも全身全霊を傾けて書いているんだよ……」
私は千穂ちゃんが小説に賭ける想いを知っている。
学校と部活、その忙しい合間を縫って先孕を執筆しているんだ。
「私は自分の作品を本当に楽しんでくれる人に読んで貰えたら嬉しいの、毎回、馬鹿馬鹿しい話でも読んでいる瞬間だけは日常の嫌なことを忘れて笑ったり、ほっこりしてもらえたら……」
「……千穂ちゃん!! 協力するよ、先生の赤ちゃんを孕まして、みたいに、まだ妊娠は出来ないけど良かったら私のこともモデルにしていいから!!」
「み、未祐ちゃん!? 声、声が大きいよ!!」
「……へっ、私、いま何を口走っていたの!?」
千穂ちゃんの話に感極まって立ち上がって叫ぶ私に、周りのお客さんが一斉に注目する。
今度は私が千穂ちゃんに怒られる番だった……。
「あ、二人ともお待たせ、未祐ちゃんどうしたの!? 顔が真っ赤だよ」
真奈美ちゃんがハンバーガーを載せたトレーを持って私たちの席に戻ってきた。
「でも二人とも楽しそうね、私も仲間に入れて貰えるかな? こうやって外に出て食事なんて半月ぶりだから……」
半月も外に出掛けていないって!?
一体、何が真奈美ちゃんの身に起こっていたの……。
次回に続く!!




