carrot orangeNo.3敵を裂く決意
――聞き覚えのある声が耳に響いて来た時、
俺は無意識に口を開いていた。
「はるちゃんじゃないか!!――今までいったい何処に」
――居たの。と続けようとした言葉は、
下からの黒い化け物達の出現によって細い吐息と化した。
頭の中に少し前の記憶が蘇る。
肉を裂かれる感覚、
骨が割れる痛み、
筋繊維が千切れる音。
そしてなりより……武器を砕かれ負わされた絶望。
「っ!ふぅ……」
込みあがってくる吐き気を押さえ込んで、
俺は眼前に居る化け物を睨む。
化け物は動かない。
そんな俺の顔を見たはるちゃんは何も言わずに包のような箱を俺に向かって投げた。
彼女曰く、中立組織は戦闘の介入はしないが、
どちらか一方の手助けはするんだそうだ。
投げられた箱を掴み開ける。
――箱の中にあったのは短刀。
装飾もなく濃い銀色が特徴的なその短刀は、
化け物達に有効な武器の一つだとはるちゃんは言った。
――――
意を決して【スキル】を発動する。
俺の腕が橙色の光を灯して熱を帯びて、
暖かな光が指を包み、形を成した。
現れたのはしっかりと手に馴染んだグローブ。
そのグローブで銀色の短刀を握る。
短刀の柄は黒とみかんのような橙の色が付いていて、
恐ろしく熱を帯びているのがグローブを通して手に伝わってくる。
この短刀は素手で触るとやけどではすまない事が容易に想像できてしまう。
――。
【頭の中にビリビリとノイズが蔓延する。】
――――辿り着くまでは死ねないんだ。あの坂で彼女を――。
【眼に濃い橙の色が灯る】
俺は視界に映っている4匹の化け物に向かって走り出した。
――短刀を持つ手に決意を込めて。
No.3end




