実家
謁見の間を出た僕たちの下へ父上が寄ってくる。
「……本当にエルなのか?」
と、聞いてくる。マリアさんたちも怪訝な顔をしてくる。
「エル、この人は?」
と聞いてくるくらいだ。
「この人は……僕の父親だよ」
僕がそう言うとマリアさんたちはとてもびっくりする。そしてみんな自分の身だしなみを確認する。……どうしたんだ?
「本当にエルなんだな?」
「……久しぶりです、父上」
僕がそう言うと父上は、泣き出してしまった。それほど心配をかけてしまっていたんだね。
「よかった。本当によかった。お前がいなくなってから私もメアリーも探したんだが、全く見つからなくて。メアリーも寝込んでしまって、もう諦めかけてんだ。アル君やビル君も探してくれていたのだが……。今までどこに行っていたのだ?」
と、僕に聞いてくる。確かに気になるよね。
「そのことも全部お話します。母上にもお話したいと思いますので」
「そうだな。メアリーにも早く合わせないと。それでは家に帰ろう。アル君もビル君も来るといい。エルもいいだろ?」
「はい。大丈夫です」
僕がそう言うと父上は頷く。そしてマリアさんたちの方をみる。
「それで彼女たちは?」
「彼女たちは僕の大切な人たちです」
僕がはっきり言うと3人とももじもじする。父上も呆気にとられる。
「そ、そうか。では行こうか。私の馬車に乗ればいいだろう」
「いえ俺たちは自分の馬がありますのでそれで行きます。良いよなビル?」
「ああ、それで構わない。なので他の皆さんで乗ってください」
アルとビルがそう言い馬小屋へ行く。僕たちに気を使ってくれたんだね。ありがとう。
「そういえばワンディールさんはどうします?」
とワンディールさんに聞く。ここまで来てくれたけどこれからどうするんだろうか?
「あぁん? 俺は一旦帰るわ。ここからはお前たちの戦いだからな。俺が入るわけにはいかねえ。一応中立の立場だしな」
「わかりました。ここまでありがとうございました」
と僕は頭を下げる。ワンディールさんは手を振りながら去っていった。そして父上の馬車に乗り数分。2年ぶりの実家に帰ってきた。本当に久しぶりだ。2年前から変わってないな。僕が走り回った庭も、アルたちと剣の練習をしていた広場も。何も変わっていない。そして屋敷に着くと
「おかえりなさいませ旦那様。おや、お客様のようですね」
とセバスが出迎えてくれる。この屋敷に勤める筆頭執事だ。僕に勉強を教えてくれていた先生でもある。
「ああ、とても大切な客人だ。丁重にもてなしてくれ」
と父上が馬車を降りる。僕はそれについて降りる。今は騒がれない様にフードを被っているので顔がわからない。
「そちらの方がお客様で?」
セバスが怪訝な顔で聞いてくる。そして僕は
「久しぶりだね、セバス」
とフードを脱ぐ。するとセバスは驚きの顔で僕を見てくる。そして泣き出してしまう。
「よくぞお戻りになられました、エル様!」
そう言いながら礼をするセバス。後ろについている侍女たちも驚いている。ここにいる人たちはみんな僕のことを知っている人たちだね。そして侍女たちも礼をしてくれる。
「さあ、入ろうか」
と父上が屋敷に入っていくので僕たちも付いていく。うん。中も変わっていないね。そして歩くこと数分。
「ここにメアリーがいる。メアリー、入るぞ」
と父上が中に入っていく。
「あらあなた。今日は早かったのですね」
とベッドの上で体を起こしている母上の姿があった。……やっぱり2年前よりやつれているね。艶やかな金髪だった髪の毛も今は元気が無く、顔にも疲れが出ている。
「起きていて大丈夫なのか、メアリー?」
「ええ、今日は何か調子が良いのよ。何か良いことでもあるのかしらね?」
うふふ、と笑う母上。
「ああ、まさにその通りだ! 今日はとても良い日になるぞ!」
と父上は僕たちの方をみる。僕たちは入り口で立っていたのでそのまま中へ入ると
「あら、お客様が来られていたのね。ごめんなさいね、気付かな……え?」
母上が僕の顔を見た瞬間驚いた顔をする。その顔を見る度に申し訳ない気持ちになってしまう。
「お久しぶりです、母上。ただいま帰りました」
僕がそう言い頭を下げると、母上はベッドから降り少しずつ寄ってくる。ずっと寝込んでいたせいか、少し足取りがおぼつかない。そして僕のそばまで来ると僕の顔に触れる。
「ほ、本当にエルなの? 私の大切な息子なの?」
「2年もの間ご心配おかけしいたしまして申し訳ありませんでした。僕のせいで父上にも母上にも要らぬ心配をかけてしまい……」
僕が話している途中に母上は抱き付いてくる。
「ぐすっ、良いのよ! あなたが無事で戻って来てくれただけで私は……」
そして母上は泣いてしまう。横から父上が僕と母上を抱き締めてくれる。ようやく帰ってこれたと実感ができた。
僕たちは話し合うために応接室に集まった。母上の部屋で話そうかとなったが、母上も今日は元気なので大丈夫と言うので、広い応接室に集まることになった。
そこで僕がこの2年間何をして来たかをみんなに話した。あの抜け出した後に森で、ワンディールさんに出会った事。魔国ベルヘイムに行った事。そこでヘルガーさん、マリアさん、ミルさんに出会った事。迷宮に向かう途中でドラゴンと出会い敗北した事。そして2年間の修行をした事。クラリスさんに出会った事や、そのあと魔族になり迷宮に潜った事、守護者を倒して神具を手に入れた事。そして魔王になった事まで、全てを話した。
全部話すのに数時間はかかったけど、父上も母上も、アルもビルも真剣な表情で聞いてくれた。
「……そうか、ハヤテ・シュバルツの相手であった魔王に出会ったのか。ならこの家の事も聞いたのか?」
「はい、ヘルガーさんが話してくれました。シュバルツ家は魔族の血を引いている事を」
その事にアルとビルが驚く。母上は知っていたようだが。
「そして、他種族関係無く住める国を作るか。それはかなり険しい道になるぞ。それでもやるのか?」
と父上は尋ねてくる。母上も心配そうに見てくる。
「はい。その覚悟はとうの昔に出来ています。その為にこの2年間修行をしたのですから」
僕が言うと、父上は頷いてくれた。
「わかった。エルの意見を尊重しよう。……もうこんな時間か。そろそろ食事にしよう。みんなもお腹を空かせただろう」
と立ち上がろうとする父上。しかしそこに母上が
「少し待ってあなた」
と待ったをかける。そして僕の方を見て
「エル、少しこの子たちと話をさせてくれないかしら?」
言ってくる。マリアさんたちはその言葉にビクッとする。僕もなんだかドキドキしてきた。
「良いけど。みんなも良い?」
僕がみんなに聞くと、物凄い速さで首を縦にふるみんな。そ、そんなに緊張しなくても良いんだよ。
そして男性陣だけ、出て行く僕たち。アルとビルからは肩を叩かれ、父上は苦笑いをされる。……よくよく考えればこれって親に紹介しているんだよね。僕はマリアさんたちの事を大切な人たちって説明をしているし。やばい、胃が痛くなってきた……。
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